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ウィーケスト・アーミー  作者: 神楽阪 舞
第7章 仮初めの「虚実」と「真実」
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創られし”者”と”物” ~秘めたる力、解き放たれる力~

「詠美?!詠美じゃない?!ど、どうしてここに・・・?!」

エイミーを"詠美"と呼ぶ女性

ボロボロの白衣を身にまとう彼女は駆け足でこちらに駆け寄る

「な、なんで詠美がここに?!ど、どうして・・・?生きていたの!?」

「あ、貴女は・・・?」

「詠美?覚えてない?私だよ?同じ学部に居た七星、七星静江だよ」

「・・・ななえ?」

「うん!ななえだよ!えみっち!!」


思わぬ再会がここに待っていた

・・・聞けば、学生時代の同期生との事で、互いに同じ学科を専攻していたそうだ

「しばらく見ないうちに、雰囲気がだいぶ変わったね!」

「う、うん・・・色々あった、から」

嬉しそうに話す七星と名乗った女性に対し、エイミーは少し困惑の表情を浮かべている

無理もない、今のエイミーは詠美であって、詠美ではない

言うなれば創り出された存在、である


「でも、よくここまで来れたね?どうして急にここに?」

「うん、色々あってね」

「そっか、よかったらまた後で話聞かせて!久々に色々と聞きたい事もあるし!!」

「うん、じゃあまた後で・・・」

「うん!またね!」

別れた後のエイミーの表情は優れて居なかった

「・・・ザラート、後程伺ってもよろしいでしょうか?」

「ああ。・・・何かあったか?」

「はい。後程、お話します」

「どうかされましたか?」

「いえ、なんでもありません」

「そうですか?それならいいのですが」

俺とエイミーのやりとりを見て気にしたライアンが声をかけてくる

「所で、皆さん・・・見た所かなりお疲れの様子。ここには簡易ではありますが、設備が整っています。食事も合うか判りませんが準備しましょう」

「何から何まで申し訳ない。助かります」

「いえいえ、では居住区へ一度戻りましょうか」


ライアンの案内の元、居住区へと戻り、俺達は久々の休息を得る事ができた

特に、ファナン達女性陣は久々の休息で気が休まったようだ


俺は引き続きライアンと今後について話し合いを設けた

「この艦・・・シエルだが」

「日本で開発された航宙戦艦だね。機関部の仕様はこちらも確認できるし、修理の器材も揃っている。1週間もあれば修理は可能。補給についても遠慮なく言ってくれ」

「ありがとう。なんとか目途がつきそうだ」

「見た所、艦首に備えられた装備・・・機能していないようなのだが、どうしたのか?」

「艦首?それは初耳ですが」

「ふむ。何か訳あって使えないのか?いや、それならここで合わせて調整していくといい。

あとは、そちらの人型兵器なんだが・・・実に興味深い事なんだが・・・」

そう言ってライアンは資料を展開する

「これを見てほしい」

「これは?」

「貴方も話に聞いたと思うが、無慈悲なる鉄騎兵、これに対抗するべく計画された兵器の設計図だ」

「・・・これは、こちらの機体と特徴が一致している?」

「そうだ。これは偶然の一致なのか?君達は一体?」

「我々が運用している機体、元々は帝国・・・敵対する国家が作った兵器です。詳しい事は我々も」

「ふむ。一朝一夕で作り出せるものではないが。今すぐ、ここでは判らないか。しかし、これを元にすれば君達の機体の強化も可能だろう、な」

「はい。しかし、そうなると」

「君の危惧する事は重々理解している。しかし、君達の立場を考えるとそうも言っていられないのではないかな?」

シエルの損傷具合、そしてここに漂着するに至った事はライアンも理解していた

その申し出は有難い、本心からそう思う

「・・・判りました、ぜひご協力頂ければと思います」

「それがいい。シエルの修理に合わせて君達の機体の改修も行おう。運用に当たって何か希望はあるかい?」

「そうですね・・・それでは・・・」

ライアン達の協力もあり、シエルの修理の目途も付くこととなった

更に、ライアン達の協力の元、グロリアス他、保有する人型の強化が行われる事となった


懸念となっていた補給の目途つき、問題はすべて解決したように思えた


しかし・・・

ライアンはシエル、人型兵器の修理、強化に内心焦っていた


シエルにとって対鉄騎兵、なにより圧倒的な火力を以て対艦、対基地攻撃。

"電磁加速式重力砲(グラビディ・カノン)"はその艦にとって切り札

核兵器を保有する事を禁じた国が創り出した、限定的・局地的な威力を見ればそれを凌駕する超兵器

それを修理していいものか

そして、彼等が配備していた人型兵器

これらも十分脅威となる存在

彼等が味方である保証、限りなく味方に近い存在であるはず

だが、その確証は持てなかった

しかし

鉄騎兵が存在する以上、彼等に頑張ってもらう他ない

本国との連絡が付かない以上、今ある戦力を利用するしかない

そうライアンは考えるに至ったのである


その夜、エイミーが俺の部屋を訪ねて来た

「エイミーです。ザラート、今、よろしいでしょうか」

「ああ、大丈夫だ」

改めて、俺はエイミーを部屋に招き入れる

「何か思う所があるようだが、どうした?」

「はい。彼等・・・ライアン達の事で少し」

「同じ地球の仲間、ということだが。おかしい事でもあったのか?もしやこちらを油断させる罠ということか?」

「いえ、彼等の話は本当ですし、信用しても問題ないと言い切れます・・・しかし」

エイミーは歯切れが悪そうに言い淀む

「何かある、ということか」

「はい。私達の生い立ちは以前お話したと思います」

「ああ、ファナンとミーヴィ、それぞれの事も含めてだな」

「はい。その件とここ、この施設に関連してなのですが・・・」

エイミーの握った手に力が入る、そして

「・・・恐らく、彼等は"生きていません"・・・私と同じ、機械生命体ではないかと考えます」

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