創られし”者”と”物” ~秘めたる力、解き放たれる力~
「詠美?!詠美じゃない?!ど、どうしてここに・・・?!」
エイミーを"詠美"と呼ぶ女性
ボロボロの白衣を身にまとう彼女は駆け足でこちらに駆け寄る
「な、なんで詠美がここに?!ど、どうして・・・?生きていたの!?」
「あ、貴女は・・・?」
「詠美?覚えてない?私だよ?同じ学部に居た七星、七星静江だよ」
「・・・ななえ?」
「うん!ななえだよ!えみっち!!」
思わぬ再会がここに待っていた
・・・聞けば、学生時代の同期生との事で、互いに同じ学科を専攻していたそうだ
「しばらく見ないうちに、雰囲気がだいぶ変わったね!」
「う、うん・・・色々あった、から」
嬉しそうに話す七星と名乗った女性に対し、エイミーは少し困惑の表情を浮かべている
無理もない、今のエイミーは詠美であって、詠美ではない
言うなれば創り出された存在、である
「でも、よくここまで来れたね?どうして急にここに?」
「うん、色々あってね」
「そっか、よかったらまた後で話聞かせて!久々に色々と聞きたい事もあるし!!」
「うん、じゃあまた後で・・・」
「うん!またね!」
別れた後のエイミーの表情は優れて居なかった
「・・・ザラート、後程伺ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。・・・何かあったか?」
「はい。後程、お話します」
「どうかされましたか?」
「いえ、なんでもありません」
「そうですか?それならいいのですが」
俺とエイミーのやりとりを見て気にしたライアンが声をかけてくる
「所で、皆さん・・・見た所かなりお疲れの様子。ここには簡易ではありますが、設備が整っています。食事も合うか判りませんが準備しましょう」
「何から何まで申し訳ない。助かります」
「いえいえ、では居住区へ一度戻りましょうか」
ライアンの案内の元、居住区へと戻り、俺達は久々の休息を得る事ができた
特に、ファナン達女性陣は久々の休息で気が休まったようだ
俺は引き続きライアンと今後について話し合いを設けた
「この艦・・・シエルだが」
「日本で開発された航宙戦艦だね。機関部の仕様はこちらも確認できるし、修理の器材も揃っている。1週間もあれば修理は可能。補給についても遠慮なく言ってくれ」
「ありがとう。なんとか目途がつきそうだ」
「見た所、艦首に備えられた装備・・・機能していないようなのだが、どうしたのか?」
「艦首?それは初耳ですが」
「ふむ。何か訳あって使えないのか?いや、それならここで合わせて調整していくといい。
あとは、そちらの人型兵器なんだが・・・実に興味深い事なんだが・・・」
そう言ってライアンは資料を展開する
「これを見てほしい」
「これは?」
「貴方も話に聞いたと思うが、無慈悲なる鉄騎兵、これに対抗するべく計画された兵器の設計図だ」
「・・・これは、こちらの機体と特徴が一致している?」
「そうだ。これは偶然の一致なのか?君達は一体?」
「我々が運用している機体、元々は帝国・・・敵対する国家が作った兵器です。詳しい事は我々も」
「ふむ。一朝一夕で作り出せるものではないが。今すぐ、ここでは判らないか。しかし、これを元にすれば君達の機体の強化も可能だろう、な」
「はい。しかし、そうなると」
「君の危惧する事は重々理解している。しかし、君達の立場を考えるとそうも言っていられないのではないかな?」
シエルの損傷具合、そしてここに漂着するに至った事はライアンも理解していた
その申し出は有難い、本心からそう思う
「・・・判りました、ぜひご協力頂ければと思います」
「それがいい。シエルの修理に合わせて君達の機体の改修も行おう。運用に当たって何か希望はあるかい?」
「そうですね・・・それでは・・・」
ライアン達の協力もあり、シエルの修理の目途も付くこととなった
更に、ライアン達の協力の元、グロリアス他、保有する人型の強化が行われる事となった
懸念となっていた補給の目途つき、問題はすべて解決したように思えた
しかし・・・
ライアンはシエル、人型兵器の修理、強化に内心焦っていた
シエルにとって対鉄騎兵、なにより圧倒的な火力を以て対艦、対基地攻撃。
"電磁加速式重力砲"はその艦にとって切り札
核兵器を保有する事を禁じた国が創り出した、限定的・局地的な威力を見ればそれを凌駕する超兵器
それを修理していいものか
そして、彼等が配備していた人型兵器
これらも十分脅威となる存在
彼等が味方である保証、限りなく味方に近い存在であるはず
だが、その確証は持てなかった
しかし
鉄騎兵が存在する以上、彼等に頑張ってもらう他ない
本国との連絡が付かない以上、今ある戦力を利用するしかない
そうライアンは考えるに至ったのである
その夜、エイミーが俺の部屋を訪ねて来た
「エイミーです。ザラート、今、よろしいでしょうか」
「ああ、大丈夫だ」
改めて、俺はエイミーを部屋に招き入れる
「何か思う所があるようだが、どうした?」
「はい。彼等・・・ライアン達の事で少し」
「同じ地球の仲間、ということだが。おかしい事でもあったのか?もしやこちらを油断させる罠ということか?」
「いえ、彼等の話は本当ですし、信用しても問題ないと言い切れます・・・しかし」
エイミーは歯切れが悪そうに言い淀む
「何かある、ということか」
「はい。私達の生い立ちは以前お話したと思います」
「ああ、ファナンとミーヴィ、それぞれの事も含めてだな」
「はい。その件とここ、この施設に関連してなのですが・・・」
エイミーの握った手に力が入る、そして
「・・・恐らく、彼等は"生きていません"・・・私と同じ、機械生命体ではないかと考えます」