砂上に広がる蜃気楼 ~Their Determination[5]~
「連合軍・・・っ!て、敵襲だっ!!」
突如グリンガルが大きな爆発を起こす
そして次々とオーキスが、戦車が撃破されていく
「何事だっ?!」
「て、敵の攻撃ですっ!か、かなりの規模の攻勢かとっ?!」
「ならば急ぎ反撃しないか!首都攻略に向かった艦隊はどうなっている!!」
「そ、それが、昨日より信号途絶しており・・・か、壊滅したものかと・・・」
「なんだとっ?!我々・・・いや、我が艦隊が敗北したというのか?!」
戦い、特に情報戦の重要性を理解していなかったアルヘルトはこの状況に混乱していた
先の首都上空での戦闘・・・シエルのジャマー機能により通信を妨害されていた帝国軍は状況を把握できずにいたのだった
そして、この戦いもまた、ザラート達の接近を許す事となったのである
「い、急ぎ迎撃だ!主砲発射準備、急げ!!」
「はっ・・・!た、直ちに・・・!」
「忌々しい連合軍め・・・!全て、全て蹴散らしてやるっ!!」
グルーシス、そして他の艦艇の主砲が火を噴く
本来であれば、連合軍の艦艇を圧倒する火力を有するその攻撃も、地上戦となると勝手が異なった
小型の目標、艦艇よりも遥かにサイズが小さい相手に攻撃が当たる訳もなく、ただただ地上に破孔を作るのみ
「撃て!撃てッ!!敵をち、近づけるなっ!!」
この状況で尚、迎撃を命じるのみのアルヘルト
その喉元に、少しずつ、そして確実に連合の牙は喰らいついていく
徐々に戦艦を守る直掩も数を減らしていき、そして遂に残るは戦艦と数機のオーキス、グリンガルのみとなった
そして・・・
【独立部隊・前線指揮所】
「帝国は投降の呼びかけに応じなかった、か」
「はい。あくまで徹底抗戦の様です」
これ以上の戦いは無意味と、投降を呼びかけたものの、その返答は拒否された
「最後の一兵まで戦い抜く、一見すると華々しいものだが・・・」
「それは長のみの"名誉"だけであって、その部下に出血を強いるだけの無謀な手段としか言えない」
俺の言葉にドルーアが続く
「帝国には"戦場で散ってこそ真の英雄である"といった風潮が強い。アルヘルトも将軍の父を持つ者。その気持ちは間違いなく持っているだろう」
「止むを得ない、か。明朝より再攻撃を仕掛ける。ファナン、引き続き投降の呼びかけは続けてくれ」
「はい」
「ミレディ、君もファナン君を手伝ってやってくれ」
「はっ!」
翌未明、投降の呼びかけ虚しく、帝国軍は徹底抗戦の構えを崩さず攻撃を開始
我々独立部隊は戦艦を取り囲み、総攻撃を開始したのだった
艦艇の至る所で爆発が起こる
主砲塔に直撃弾、数刻遅れ吹き飛ぶ砲塔
副砲群も激しく焔を上げる
そして、機動歩兵とドルーア率いる第二軍が艦内に侵攻、一気に艦橋・・・アルヘルトの身柄を確保すべく突入する
「アルヘルト!速やかに投降せよ!!」
「その声・・・!ドルーアか!!貴様ッ!生きていたのか!!・・・帝国を捨て、連合に寝返るとは、語るに落ちたな!!」
そう言い終わる前に忍ばせていた銃の引鉄を引こうとするが
「遅い」
既にアルヘルトの背後に回り込んでいたミレディがアルヘルトの右腕を銃ごと斬り落とす
「へ・・・う、がっ?!あがぁぁぁぁっっ?!!?!」
突然切り落とされた腕の痛み、そして噴き出す自身の血にアルヘルトは発狂する
「閣下、このような者、ここで処刑するのが最善と思いますが」
「そう事は構えなくていい。・・・連行だ」
「はっ」
発狂し、暴れるアルヘルトを捕縛しようとしたその瞬間、
『ドグォォッ!!』
「な、なんだ?!」
突如、艦を衝撃が襲う
「か、閣下!上空からのほ、砲撃です!!」
「なんだとっ?!」
突如起きた爆発でアルヘルトが吹き飛ばされる
「しまった!」
「止むを得ない!ミレディ、奴の身柄の確保は断念!!脱出を最優先とする、総員脱出だっ!!」
その攻撃は外周を取り囲むザラート達も確認した
「な、なんだこの攻撃は?!」
突如、グロリアス以下、俺達の周囲に上空から無数のレーザーが降り注ぐ
幸いに直撃弾に至らぬものの、眼前の戦艦・・・グルーシスに多数の命中弾が出る
そしてその直撃を受けた艦は、中ほどから真っ二つに折れ、そして後方部分が大爆発を起こす
艦橋含め、残存した前方からドルーア達が脱出する
俺達は上空を見上げる
「なっ・・・?!あれは・・・!!」
見上げたそこには漆黒の艦・・・しかし、そのデザインは
「ぇ・・・あれって・・・」
ファナンが言葉を失う
「そんな、これって・・・」
「・・・"シエル"じゃ、ない・・・よね」
アエルも、ルルベルも言葉を失う
そう、俺達の前に現れた艦は漆黒の"シエル"そのものだった
『・・・Da,Remda,Da Armry Downa・・・ザザザ・・・連合の兵達に告ぐ。直ちに軍を引け』
突如現れた艦から謎の声が発せられる
「て、帝国の新鋭艦、なのか・・・?!」
『回答は差し控える・・・この「言語」なら理解できるだろう。即刻、軍を引け。弱小なお前達とこれ以上事を構えるつもりはない』
「お前は・・・一体、何者だ?!」
俺の、いや、これ以上何も答える事なく、その漆黒の艦は上空から再度レーザーの一斉射を行う
そして、残ったグルーシスの前部分も大爆発を起こす
『もう一度勧告する。軍を引け。乗り合わせた艦が使えぬのなら、首都まで下がれ。次はお前達に命中させるぞ』
シエルと類似した艦、未知数なその力
今は戦うべきではない、そう思わせるに十分な威圧感を周りに与えていた
「・・・撤退する。各員、首都へ撤退だ」
「・・・その方がいいね。・・・各分隊長へ通達、当戦域より撤退します」
ファナンが各隊へ連絡、俺達は謎の敵艦を視界に入れつつ、戦域より後退したのだった
俺達が退いた後、帝国軍の侵攻は行われず、サンドラは連合へ加入する事となった
これにより、連合軍は今後の活動、特に航宙艦に不可欠な燃料を確保する事が容易となり、以後の反攻作戦の遂行に大きく寄与する事となったのである
#戦闘レポート
#戦闘結果:
独立部隊(連合軍)の戦略的勝利
#戦闘被害:
連合軍 戦艦1大破
帝国軍 戦艦2沈没、巡洋艦24沈没、駆逐艦48沈没 他補助艦艇多数沈没
(※ドルーア以下、第三艦隊の損害を含む)
独立部隊2大隊死傷
帝国軍12大隊死傷
#特記事項:
侵攻軍を指揮していたアルヘルトは座乗する艦と「運命を共」にした
当戦闘終結後、惑星[サンドラ]は連合所属となり、本惑星の資源は今大戦の推移に大きく影響することとなった
なお、最後に現れた敵艦について改めて調査するものとする
----------
【???】
「独立部隊、か」
「・・・厄介な相手か?」
「・・・現状では判断材料が不足している。が、奴が居るのなら、一筋縄では行かないだろう」
それに、と付け加え
「まだ雌雄を決する時ではない。今はまだ、な」




