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諸刃の剣

 フレイラが警固役として仙一郎につき従う

ようになって何日かが過ぎた。彼女が言った通りに大学では無暗に声をかけて来る輩はいなくなって仙一郎も落ち着いて学園生活を送れるようになっていた。フレイラはと言えば川相に所属するサークルの手伝いを頼まれるほど皆と馴染んでいた。

 普段のフレイラは実に品行方正で正義感にあふれていて、大荷物を持って道を渡ろうとしている老人は助け、喧嘩している若者の間には割って入る、道のゴミは拾い、電車の座席は譲ると、呆れるほどなのである。しかし仙一郎を守るという事に関しては別で、常に彼の近くにいる訳ではなかったが姿が見えなくても行動や周りの様子を常に把握しているようで、ちょっとでも変わった事があれば傍らに現れた。その様子はまるで子供を心配する過保護な母親のようで、少しでも危なさそうな場所に近づこうとすれば引き止めるし、近寄る人がなんとなくでも不審に見えれば身構え睨みつけてしまうなど、彼を守るということに関して度を越してしまうところがあった。

 ある日、青信号で横断歩道を渡ろうとした時、車が信号無視して走ってきたことがあった。それに当然気づいていた仙一郎は足を止め暴走車を余裕でやり過ごせるはずであったのだが車は手前でタイヤがパンクし明後日の方向にスピンして止まった。明らかに不自然な動きに事故車を見るとタイヤは鋭利な刃物で切り刻まれたようになっていた。フレイラにその事を問いただすと彼女はこともなげに「危険を排除しただけです。」

 と答える。幸い怪我人は出なかったとは言え仙一郎は彼女に得体の知れない危うさを感じる出来事であった。


 薄暮の薄明りだけが照らす暗い部屋、アルマは仙一郎にまたがって首筋にしがみつく。静かに満ち足りた表情を見せ血を吸うこの時だけは可愛くなくもない、などと仙一郎はちょっとだけ思う。アルマは極上の血で十分喉を潤すと部屋の明かりをつけ忙しなく出かける支度を始めた。

「前から思ってたんだけど何で血を吸うとき灯り消すの?」

 血を吸われまだ少しボーっとする頭で仙一郎はたずねるとアルマはあたふたとしながら「べっ!別にただの雰囲気じゃ!暗い方が吸血鬼っぽいじゃろ!」

 と、曖昧な言い訳をしてそそくさと出かけてしまった。ここ数日、アルマは日が暮れると早々に出かけて明け方近くまで戻ってこないことが多かった。何をしているのか気にはなったが仙一郎は特に何も言わなかった。

 アルマが出かけて間もなく入れ替わりにフレイラが無言で部屋に入って来た。アルマが血を吸っている間。気をきかせ外に出ていた彼女は仙一郎をジロリと睨みつけると明らかに機嫌悪そうに夕飯の支度を始める。その態度には理由があった。何でも言う事を聞くと前々からリザと約束していた件で明日から始まる美術大学の学園祭ーーー三日間校内で行われる秋のイベント、

通称芸祭でリザとデートすることとなったのだ、それを聞いてからというものずっと刺々しい態度が続いているのだ。

 仙一郎がそんな彼女の背中をちらちら見ながらのそりとダイニングテーブルに座ると程なくフレイラが茹でたもやしだけが山のように盛られた皿を彼の前に乱暴に置く。

「あの…これは?」

「晩御飯です。」

 仙一郎の問いにテーブル越しに立ったまま答える。

「なんか怒ってます?」

「当然です!アルマ様の食料でありながら他の吸血鬼とデ…デートするなんて…背信行為もいいところです!」

「アルマは人混みは嫌いだから芸祭行かないって言うしリザの件もイイって言ってくれてたけど…」

「アルマ様が許しても私が許しません!他の吸血鬼と二人きりだなんて…万が一あのカトンボが血を吸うようなことがあったらあのカトンボは殺しますし、仙一郎様が血を吸わせるような不義をはたらくなら仙一郎様を死なない程度に殺します。」

「そ!そんなことないって!」

 慌てて否定するがすでに血を吸われたことのある仙一郎はどきりとする。

「という訳で明日はお供いたしますのでよろしくお願いします。」

「え?どういうこと?」

「あれと二人きりにする訳にはいきませんので着かず離れる護衛させていただきますので!」

「ええっ!」

 仙一郎は唖然としてしばらく固まってしまった。

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