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剣の本分

 ローテーブルに座る仙一郎は左右を交互に見ると右に謎の女性、左にアルマが座っていた。どういう訳か女性はアパートの場所を知っており迷うことなくアパートにたどり着くと玄関のドアを勢いよく開け、部屋にいたアルマに怒鳴った。

「アルマ様!これはどういう事なんですか?」

 アルマはしばらくキョトンとしていたが

「あ!ああ!フレイラか!」

 というと興奮するフレイラをなだめ落ち着かせ、三人はテーブルを囲むこととなったのだ。

 フレイラは仙一郎のスウェットに着替えインスタントコーヒーを口にして、だいぶ落ち着いたようだった。

「とりあえず彼女のこと紹介してくれるかな。」

 仙一郎が切り出すとアルマは思い出したように答える。

「フラガラッハじゃよ。まあこの姿のときはフレイラと呼んでおるがの。」

「ちょっと意味が分からないんだけど…」

「だからフラガラッハ、剣が自らの意思を持っておって人の形になることも出来るという訳じゃ。分かりやすく言うと付喪神に近い感じかの。」

「彼女が剣?」

 ここのところ色々と不思議な体験をしてきた仙一郎ではあったがアルマの言う事がにわかには信じがたくフレイラをまじまじと見まわす。フレイラはその視線に眉をひそめると

「私もアルマ様にお聞きしたいことがございます。御命令でこの人間…仙一郎様に帯刀されておりましたが危機的状況にもこの…仙一郎様は私を抜こうとしないもので許可なく人の姿で現出したのですが…どうしてこんな姿に?」

 と言って自分の身体をさししめした。

「其方が人の姿をとるときの姿かたちは、その持ち主の想像力が大きく影響するからの。だから予の剣である其方は予の姿にそっくりだった訳じゃが、今の持ち主、画学生の潜在意識が影響してるのかもしれん。つまり…」

 そこまで言うとアルマはフレイラをまじまじとながめてから急に仙一郎の方に向き直り

「やっぱり胸か!やっぱり豊満な胸がお好みかぁ!この好色家が!」

 と声を荒げ目を吊り上げて身を乗り出す。

「なっ!じゃあこの俗物…仙一郎様の好みの身体に作り変えられてしまったってことですか?」

 フレイラは身構え仙一郎を汚物を見るような目で見る。

「べっ!別にそんなこと考えちゃ…」

 仙一郎は否定するが、たしかに彼女の胸は大きさも形も彼の好みのものだったので、その顔は真っ赤になっていた。

「胸が大きいのが何だっていうんじゃ!まったく!このケダモノ!スケコマシ!ムッツリスケベ!」

「そこまで言うことないだろ!」

 仙一郎がアルマの罵詈雑言に盾突くと突然目の前に切っ先が突きつけられる。

「貴様!アルマ様に刃向かうなら容赦せんぞ!」

 フレイラが剣を突きつけ仙一郎を睨む。彼女の放つ殺気は本当に自分を殺す気でいることをひしひしと感じさせるに十分だったので仙一郎は息を呑んで固まる。するとアルマは静かに手を上げ彼女を制しフレイラはしぶしぶ剣を収めた。


 その後しばらく三人とも無言のままで気まずい時間が流れた。沈黙にたまりかねた仙一郎は台所でコーヒーを入れ直し二人に出す。彼を睨みながらも軽く頭を下げるフレイラ。アルマは無言でカップを受け取るとひと口、ふた口とすすり対面のフレイラをしげしげと見る。

「しっかし…それにしても大きいのぉ…ちょっと触らせてみろ!

「ちょっ!アルマ様!」

 アルマはにじりよるとフレイラの胸を鷲づかみにする。

「おおおっ!何という柔らかさじゃ!」

「お止め下さい!」

 フレイラは押し倒される格好になりアルマはなおも彼女の胸をもてあそび続ける。

「まったく自分だけこんな身体になりおって!うらやま…けしからんことこの上ない!」

「あ…アルマ様ぁ…」

 じたばたと足掻くフレイラの顔は真っ赤で息も荒い。仙一郎は目の前で繰り広げられる組んず解れずの痴態につい見入ってしまい、その視線に気付いたアルマとフレイラは彼がよほど鼻の下を伸ばしていたのか冷たい視線を向ける。

「最低じゃな!」

「おっしゃるとおりです!」

 二人から理不尽に責められ仙一郎は

「自転車は盗まれるは、変な因縁つけられるは散々だよ…」

 とテーブルに突っ伏し思わず愚痴った。その様子にアルマは大きくため息をついてからフレイラに語りかけた。

「まあフレイラ!其方は不満かもしれんが、こやつは予の大事な食料じゃ。なんとか警固役を引き受けてくれんか?」

「まあアルマ様がそこまで仰るのでしたら…でもしっかりと守れるように人の姿のままでいる事をお許し願えませんか?」

「うむ指輪で命じれば従わざるを得ないとはいえやはり画学生にはそんな度胸はなかったみたいだしのぉ…良かろう。」

「有難うございます。それではこれより身命を賭して仙一郎様をお守りすることをお約束致しますアルマ様!」

 こうして仙一郎本人を置いてきぼりにして、とんとん拍子で彼に胸の豊満なボディーガードがつけられることになったのであった。

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