ブラック企業サラリーマンの青年(※35勤明け)は見た!~指定ワードを全部載っけてみたら、こんなんなった~
【指定ワード】
ブラック企業 / 必殺技 / 忍者 / おにぎり / ドラゴン / 文学少女 / 名探偵 /
ボロアパート / 大魔王 / 聖女 / サラリーマン / 幕末 / ブラウン管 / 伝説 /
農民 / おねぇ / 入道雲 / 暇つぶし / 偽物 / 牛乳 / コントロール / 森の /
もう冬だというのに、入道雲がもくもくと空に浮かぶおかしなある日。
ほんの少しばかり寝る為に宛てがわれた『社員寮』という名のボロアパートの一室。
ブラック企業のサラリーマンである俺は、脅威の35勤明け……ようやく訪れた休みを満喫すべく惰眠を貪っていた。
しかし寝返りを打ちふと目を覚ますと、そこには謎の……女?いや、化粧した男。
おねぇである。
「うわぁぁ!?」
俺の行動『叫ぶ』一択。
「あらやだ、好みなもんだから眺めてたら寝ちゃったわぁ~!」
てへぺろ♡みたいな仕草をするも、全く可愛くない。服の上からでもわかる見事な筋肉。
服もおかしい。女忍者のような裾の短い着物からチラリと見える、筋骨隆々の逞しい太腿に思わず目を逸らす。
「やん♡」
いや、それはこちらの台詞だ。
比喩でなく目に毒!
これは夢に違いない。それか幻。
なんせ35勤である。相当疲れているのだ。
俺はいつもの様に冷蔵庫から『森の農民牛乳』を取り出して一気に飲み干す。
も、吹き出す。
なんとそこには同僚が死体で転がっていた。
「……残念、死んでもらうわ」
「ひいっ!」
「冥土の土産にアタシの必殺技を見せてあげるわね♡」
「要らん気遣い!」
おねぇ忍者が短刀を、スラリと俺に向けた……その時である。
「きゃぁぁ!! コントロールがきかないわ~!」
突如、ドラゴンに乗った三つ編みお下げ眼鏡の文学少女っぽい女の子が、ボロアパートの壁を突き破って現れ、おねぇ忍者に直撃したのだ!
「ほぶァッ!!」
俺はすんでのところで、やつの凶刃から逃れることが出来たが……ドラゴンは同僚の死体をもっしゃもっしゃと食ってしまっている。
「駄目よ、そんなの食べたらお腹壊すでしょ?! 餌エサ……」
少女はそう言うと、何故か小脇に抱えているブラウン管小型TVのチャンネルを回しながら『暇つぶしにひつまぶし!』と唱えた。
するとそこから放出される、大量のおにぎり。
「何コレ、信じられないわ……!」
おねぇ忍者はそう呟く。アンタの存在もだよ!
「聖女様、迎えに参りましたわ」
「聖女……アタシが?!」
「ええ、共に大魔王を倒す旅へ!! 時空を超えて、いざ幕末!!」
いやそれ絶対偽物だろ!
聖『女』じゃないしね!?
ふたりは旅立った。
入道雲の輝く空へ──。
残されたのは壊れた壁と、大量のおにぎり。
伝説の名探偵でも、この経緯を推理することは不可能に違いない。
俺はそんなことを思いながら、布団に入った。
目が覚めた時、全てが夢ならいいと思う。
幕末の無理矢理感が凄い。