オクリモノ
初投稿です。
特に期限を設けず、完結させることを目標に書いていきます。
ひた、ひたひた、ひた・・・・・・・・・。
ソレは傷ついていた。何も見えず、自らの身体から滴り落ちる、液体にも気づかず、ソレはただ本能のままに地面を這っていた。
ひたひた、ひた・・・・・・・・・。
ソレは哭いていた。自らのことではなく、失った■を思うがゆえに。―――ああ、名前も、でてはこない。
そこは、薄ら暗い洞窟のようであった。大きな蝙蝠か、羽根のあるコモドオオトカゲのようにも見えるソレは、明らかに人間のものに見える腕でもって、自らを引き摺っていた。ソレは、無理やり引きちぎられでもしたかのように、下半身と言える部分を喪失していた。
ひた、ひたこつ、こつ、ひたひた・・・・・・・・・。
岩に硬い木を軽くぶつける音が混じって聞こえ始めた。と、同時に洞窟に明らかに場違いな明るいメロディの口笛が響いた。
「ああ、どこかなどこかな?■■たちのいきのこり~?■■って息巻いてたけど、もうのこり、3~にん、だよ~?ただの人間たちに、殺されて、挙句の果てには、怖いよ~って隠れるなんて、かわいそー!!、だね?」
ソレは体を震わせた。まだ死ぬわけにはいかない。復讐を、せめて奴らに一泡吹かせるためにも、今はまだ―――
「あ~~んまり出てこないんで、君の出番だよ。え~と、え~~~、クロエ、クロセ~?アッ、クロケットちゃん!この子の解体ショーを今からやりたいと、思いま~す」
早く出てこないとこの子パンプキンパイにされちゃうよ~?、悪魔のような声が聞こえる。
ソレは、声の方へ這い始めた。――止めなくては。私は見捨てられない。
一秒這うごとに、ソレは自らの身体が溶けるように、力が漏れ出していくのを感じていた。だが、苦痛にあえぐ■■■■の存在がソレに力を与えていた。
ひた、ずちゃ、べしゃ、ひたひた・・・・・・・・・。
ソレが声の元にたどり着くとそこには、大きなピンクのリボンがいくつもついた、セーラー服といえるデザインの衣装を身にまとった、中学生くらいの少女がいた。肌は澄んだ夜の月光のように白く、整った顔は■■のソレであっても息をのむほどのものであった。勿論、ソレが目が見えている状態ならばだが。
「おお~!来たんだね!君はさっき、目を抉った子だね?そっちの方がとってもキュート、だよ!めっちゃカワユス」
「・・・・・・おとなしく、返すつもりは、ないん、だよな・・・?」
ソレは、力を振り絞って、口を開いた。
「もっちろん、だぜっ!解体ショーはやめたげるけど、かわりに生でゴチになりますゼ。それとも、君が食うかな~?せっかくだしさ~」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おろろ~?死~んじゃった、かな」
「・・・・・・・ず、・・・・・・・・・・・・・」
「おん?」
突如、ソレは見えていないはずの目で、しかと少女と抱えられた、天使のような■■■■を睨みつけた。
「・・・命ず、汝は盗人也、我が爵位で以って、盗まれしモノは我が下に」
離すまいと抱きしめられていた■■■■は、瞬時にソレの背後に転移した。
「は?どういうことなワケ?これがアンタの固有魔術なワケ?そんな近くに跳ばしたって・・・」
「すぐに殺せるし!!!」
少女は、憤りもあらわに、ソレに向かってとびかかる。鋭い刃のようになったリボンが、ソレを切り裂かんとする刹那、
「命ず、我が爵位で以って、罪人に■の雷を―――」
瞬間、世界は光輝き、同時に少女の叫びが洞窟内にこだまする。少女が息絶えた後、ソレは思った。――これ、あれだな。私じゃ、もう無理だ。■■■■に復讐は託そう、と。そして、ソレは最後の詠唱を始める。
「命ず、■■である我が肉体をささげ、我らが■の名において、未来へ願いを託さん。我に託されし環よ、・・・・・・・・・導け。■■■■を。遠き未来の世界へ」
少しずつ傷ついた■■■■が輝き、薄れていく。
「我は得しものを未来へ残す、我が愛しき君が為」
そして、天使の姿をした■■■■は淡い青の光の粒となって、洞窟の暗やみに消えていった。
後に、もう既に何も流すものがなくなったソレと黒くなった少女の死体を残して、もうそこには何もなかった。
誰かが、立ち上がった。
次回は、
「主役(2)登場編」