↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

7 ステラ?

「先生! お昼食べましょう!!」

「は、はい」



 昼休みになり、先輩はパンの入った袋をぶら下げて俺を迎えに来た。

 これと言って、昼飯を仲良く一緒にとる約束はしていなかったがーーこれもありだろう。



 と、思ったがーーそうは如月が許さない。



 すぐに俺の腕に飛びついてきた。

 如月が俺に飛びついたことで、一旦は存在感が増す。

 だがクラスメイトの視線は、「誰だアイツ?」「知らないやつが沙苗ちゃんと仲良くすんなよ」「きっも」と、痛いものばかりだ。



 それもそうだろう。

 俺のことを認識できない、クラスメイトの気持ちは痛いほど分かる。



 俺をいつもは見えていないのに、如月が触れたことで存在感が増し見えるようになったのだ。

 そして見えるようになったらなったで、如月が腕に抱きついている。



 ーー嫉妬の嵐だろう。



 そこまでは俺も良く分かっているつもりだ。



 ーーだが、一つだけ分からない……。



 何故、如月がそれほどまでに美少女と呼ばれ彼女にしたいランキング堂々の一位にランクインしたのか、それが全く分からない。



「お前……何してるんだ?」

「私としか、食べたらいけないの」

「先輩、外へ出ますか」

「ラーメン良いですね先生!」

「え、ええ!? あ……ちょっと!?」



 奇跡とは起こるもので、林檎の作ってくれたお弁当を、如月はちゃんと持ってきたようだが俺は忘れてきた。

 わざとではない、たまたま……本当にたまたま、忘れてきたのだ。



 昼飯のない俺は、購買かコンビニで調達をする必要がある。

 だが、どうせコンビニへ行くなら近くのラーメン屋で食べても同じだ。



 パンなら持って帰って明日の朝飯にもできる。

 俺を先生と慕ってくれるのであれば、この状況打破のため多少の金を叩いてほしい。



「良いですよ! ラーメン屋……ちゃんちゃんラーメンすね!」

「そこへ行きましょう、近いですし」

「わ、私もーー」

「たまには友達と食べたらどうだ? 俺は先輩と二人だけの話もあるし……なあ?」



 気遣いのできる男を装うと、如月はまんまと騙され友達の元へと走っていく。

 馬鹿で本当に助かった。

 観察能力ゼロ値であるからこそ、騙せる相手だ。



 如月が友達と食べ始めたところを確認し、俺と先輩はラーメン屋を目指す。

 先輩と校舎を出て、教師に見つからないようラーメン屋へ向かって入り、大将に一挨拶して席についた。



 ♡



「何にするよ」

「おっちゃん、豚骨二つ」

「あいよ。ああ、努の息子……これ」



 俺は親戚の大将からウーロン茶を二つ受け取る。

 親戚サービスでいつも食べに来ると、必ず人数分出てくる。



「もうちょい待ってな」

「あーい。それで先輩、そのパン……一人で食う量ですか?」



 カウンターに置かれた袋の中身を見て、俺はすかさず聞いた。

 先輩は二回ほど頷く。



「良く食べますね……」

「そうですね。食べないとやれないっす!」

「あー……」



 適量で良い人間と、満足いくまで腹一杯食べる人間と居る。

 先輩は満足いくまで食べる人間だ。



 ラーメンを食べてから、パンを更に食べると予想する。



「ーー先輩、如月はどうなんですか?」

「如月沙苗ですか? そりゃ、惚れてますよ! だからこうーー物理的に強くっ! 守れるようにっ!」

「そうですか……頑張ってくださいね」



 頑張ってくださいねーーとしか、俺には言うことがない。



 俺は別に、如月の彼氏ではない。

 距離は近いが、別に如月を保護する意味もない。

 別に先輩の彼女となってもらって構わない。



 あくまで隣の席、あくまでクラスメイトーーあくまで半居候なのだから。



「彼女にしたいですね、本気で。……先生、何してるんですか?」

「ああ、これ? ゲーム」

「へえ。フレンドとか居る感じですか?」

「待ってくださいね……あ、このステラさんですね。久しぶりに揃いましたけど」



 クリケロを開けると、運良くスマホからステラさんもログインしていた。

 俺はステラにチャットで、



 〈お久しぶりです〉



 と、送信する。

 するとすぐに返信が来る。



 〈お久しぶり〜! て、お昼からも会うのに!〉



 ……は? お昼?



 〈ああ! ごめんね! 間違えたあ!〉



 誰と話していたのか、ステラワールド炸裂である。

 間違えたものは仕方ないし、責めるつもりも、深く聞く気もないので、



 〈大丈夫です〉



 そう送信して、会話を続けるのだった。

 先輩に見られながら、羞恥心などはなから持たずに……。



 ♡



 〈ーー間違えたあ!〉



 あ、危なかったあ……。



 私は胸を撫で下ろす。

 和樹は私がステラであることを知らない。

 ならいっそ、バレることなく現状維持で、ステラであることを隠し通しておくべきだろう。



 慌てて送信したけど、気づかれていないか不安になる。

 ステラーー本名は如月沙苗。

 私がクリケロ内で和樹の唯一の友達として、彼のとなりを独占している。



 和樹は私の和樹で、私は和樹の私ーー



 なんて、言ってみたいのだけど……。

 現実的にそれを口にしてしまうと危ない人物。

 和樹に嫌われてしまう。

 だから私は、ステラであることを隠しながら、奇跡的に出会えた和樹と日常生活を幸せ一杯ラブコメディーにするため努力を惜しまない。



 〈そう言えば、全然互いにログインできなかったね!〉

 〈本当ですよ……。変な奴が隣の席に来るし、馬鹿だし、疲れるし、半居候だし。親は歓迎しているんですけど、俺としては夜食べたら帰ってほしいくらい、手のかかる奴が……〉



 ーーグサッ!!



 私の心臓を、大きな槍が貫いた。

 和樹は悪気がなく、私をステラと知らずディスっているはず。

 だから耐えなくてはーーいけない!



 〈ステラさんが隣の席に来てくれたら、どれだけ良いことか〉

 〈もしその隣、私だったらどうする?〉



 バレる心配はなさそうなので、聞いてみる。



 〈友達になってもらいたいです! 普通に友達として〉

 〈うんうん! そうだよねえ!〉



 チャットではとても明るく振る舞ってみせる。

 しかし、箸を持つ右手は力が抜けて落としてしまう。

 友達が驚き、箸を拾ってくれるが私は絶望感からお弁当箱に顔をダイブさせようとする。



 しっかりと友達の手が顔を受け止めてくれる。



「どうしたの!?」

「ふ、ふられた……。私……和樹に振られたああああ!!」

「……誰だよ、和樹って」

「友達!!」

「……ゲームの?」

「だったらなんなのさっ!?」

「お前が一体何なのさ……」



 スマホを机に叩きつけ、友達に顔を近づけると素早く引かれた。



「元気だな……沙苗」

「……はあ。片思いだったのかな」

「いや、私恋したことないから知らないし。でもさ、沙苗ーーそもそも向こうはあんたを女として認識してるの?」



 友達ーー金剛院櫻こんごういんさくらの言葉に私は立ち上がる。



 ーーそうだ……。



 そもそも、私は和樹に女として……恋愛対象として見られているのか?

 自分に問いかけるが、分からない。

 しかし、友達として見てはもらえているはずだ。



 〈……そ、その隣の席の子は友達になれたのかな?〉

 〈面倒だから今すぐ転校して欲しいです〉

 〈……そんなに面倒な子なんだ、大変だね〉



「ーーこんちくしょうううう!!」

「……!? びっくりした……」



 今度はスマホを床に投げつける。

 周りが私に視線を集中させ、恥ずかしいので微笑んで誤魔化し、スマホを拾って座り直す。



「そんなに好きなの?」

「ゲーム内の人を好きになるなって? ほっといてよ」

「言ってねーだろ。良いだろ、好きの形は人それぞれだしな。それより沙苗……林檎って誰?」



「……エデン」



「新たに人間創造から始めるのか?」



 こんな馬鹿な会話をしながら、お昼を食べ終えた私は、お腹一杯になりイライラが治まった。

 先輩と帰ってきた和樹は、何やら飲み物を二本持っていて、私の元へ歩いてくる。



 もしかしてーー



 私は期待して待っていると、和樹が声を掛けてくれた。



「如月、どっちが良い?」

「え、くれるの?」

「とりあえず選べ」

「じゃあ……右」



 私は可愛いらしくオレンジジュースを選ぶ。

 本当はエナジードリンクを飲みたかったけど、女らしくない。

 やはり可愛さは、男を落とすためには必要不可欠な材料だ。



「そっか。女子はみんなオレンジジュースとか好きなんだな。参考になった」

「……????」

「御礼にたこ焼きやるよ」



 まさかのオレンジジュースではなく、たこ焼きの入ったパックが、ぶら下げた袋から出てきた。



「オレンジジュースは?」

「これは未央ちゃんにあげるから。帰り誘われたからメールで。ああ、お前はたこ焼き好きそうな顔してたし、エナジードリンクは林檎の好物だ」



 そこは林檎ちゃんにたこ焼きを渡すべきだと思う。

 いつもたこ焼きのように湯気をあげて、丸く膨らんでいるのだから。

 


 そして、何故一人だけ食べ物だったのか不思議でしかない。

 と、言うか未央ちゃんにだけ女らしい可愛い飲み物はズルすぎる。



「え、ええ……飲み物欲しかったなあ」

「買ってこい」

「……和樹、買って?」

「ほらよ。百五十円でコーラでも買って豪快に飲んでろ」



 百五十円を現金で渡されてしまった。

 和樹はエナジードリンクだけ振り回しながら、何やら悪戯を考えながら席へ戻っていく。



 百五十円を握りしめ、私はポケットにお金を突っ込むと静かに椅子へ腰を下ろす。

 見ていた櫻が、ため息を吐く。



「あんなのクラスにいたっけ? それより和樹って……あれ隣じゃん。なにやってんの、アタックしなよ」

「できたらしてる! もう!」

「……和樹、ねえ。へえ、面白そうじゃんーー意識の外に少しでもあの外見を出したら、全く見えないや。空気ーー最強の影の薄さだね」

「……?」



「ーーちょっと、私もちょっかい出して良いかなあれ?」



 その時の櫻の笑みは、楽しそうなのに、何処か狂気に満ち溢れていた。

毎日更新も大変です……。

イラストにて、AFBさん作『フラッグ・フライング』のヒロイン、ミリィを描かせていただきます。

また気になる方は、イラストが仕上がり、AFBさんへ送れしだい見てください!

とても良い作品ですので!


あ、私のこの作品。

気にいっていただけましたら、評価よろしくお願い致します!

是非、沢山の方の評価を私にっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。