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9/9

リアル

 ◆


 ボギーは1機。対してこちらは俺とグラスホッパーの二機編隊だ。普通なら負ける気はしないが、相手は1機でミーシャ率いるSu-27の4機を落とした化け物だ。


 こちらの戦法はブラケット。突っ込みながら二手に分かれ、相手にどちらかを追うことを強制する。

 敵はグラスホッパーに食いついた。

 追われなかった俺はアフターバーナーを点火して高度を上げ、ヒッチバックで急旋回。後方からボギーを追う。視界から色が消えた。急激な下方Gによるグレイアウトだ。リスク無しでこいつには勝てない。構わずボギーを後方から狙う。


 敵はバラクーダとの戦いでミサイルを使い切っている。ステルス機はレーダー反射を少なくするために胴体内に兵器を収める必要がある。積めるミサイルの数は多くない。頼りはバルカン砲だけのはず。


「駄目ですハイエナ。やっぱり振り切れない」


「誰が振り切れと言った?」


「たまには役目を変えませんか? いつも僕が貧乏くじ」


「考えておく」


 俺は操縦桿の発射ボタンを押しこんだ。フォックス2。

 サイドワインダー全弾発射。ロックオンはしていない。

 発射されたミサイルは、敵を捕えること無く空しく消えていく。

 ボギーは回避機動もとらなかった。牽制にもなりはしない。


「遊ばないでください」


「機体を身軽にしただけだ」


 マスターモードを押し込み格闘戦を選択。HUD上のアクティブ兵装=GUNの表示。

 GDSピパーが、けたたましく点滅した。先導照準が効いてない。距離計も動いてない。機関砲にロックがかかっていて撃てない。敵のステルス性能はチートレベルだ。この距離でレーダーが全く効かない。

 ボタンをもう一度押し込み、俺は愛機に自分の意志を伝える。固定武装のM61バルカン――口径20ミリの6砲身キャノン砲がマニュアルモードに移行した。

 照準なぞ始めからあてにしていない。


「いきますよ、ハイエナ」


 グラスホッパーが速度を落とす。ボギーはそれに食らいついた。

 次の瞬間、グラスホッパーの身体は砲弾の雨に切り刻まれる。肉体がはじける前にVRシステムの安全装置が作動、奴は強制ログアウトされる。リアル過ぎる体験としてのオーバーキルは、深刻な精神的障害をもたらす。それを防ぐための自動シーケンスだ。


 ボギーは一瞬油断したように見えた。機体を立て直すその瞬間。

 俺は奴の上から襲いかかった。ハイ・スピード・ヨーヨー。普段なら使わない隙の多い大技だ。

 敵は左に旋回……と見せかけて横滑りし攻撃をかわそうとする。

 だが俺にそんなもんは効かない。ボギーは、小刻みに機体を動かすジンキング機動で俺の軸線を外そうとした。


 構わずトリガーを引いた。20ミリの弾幕が敵と交差し右翼の半分が飛び散った。

 ボギーはそれでもバレルロールで俺をかわす。タフな奴だ。生存性も重視した設計らしい。


「ハイエナ! 注意して。敵の援軍がそっちに向かっている」


 ここまでか。

 ボギーは撤退して行く。まるで、俺がウィリアムにコテンパンにやられた時のように、悔しそうにしているように俺には見えた。


 そろそろSEAD隊が攻撃位置につく。俺はスキニーを呼び出した。

「スキニー、まだか? これ以上時間を稼げそうにない」


「安心しろ。そろそろ攻撃位置につく。あいかわらずいい腕だな、ヴァイパー。だが僚機を始めから犠牲にする気マンマンだっただろう? モラルに欠ける」


「目的は手段を正当化する」


「さいですか。アミュレット、準備はいいか? ヴァイパーにばかりいい格好はさせられない」


「ソードフィッシュ04、ウィルコ」


「レーダーを潰したらヴァイパーの援護に向かうぞ」


 アミュレットの口数が少ないのが、俺はふと気になった。


 ◆


 俺は自室で目を覚ました――俺の部屋はネットだけはギガ回線装備の安アパートの一室だ――ミッションが終わってすぐログアウトし、泥のように眠りについたのだ。


 夢の中で俺は火を噴いたエンジンを必死に消化しようとしていた。しかし起きても火災警報が鳴り止まない――違う。こいつはドアフォンの呼び出し音だ。しつこく何回もチャイムが鳴らされている。どうせ新聞か新興宗教の勧誘だろう。こんなところに来るような人間はそれくらいしか思いつかない。

 壁の時計を見るともう夕方の4時を過ぎている。


 どうやら7、8時間は寝ていたらしい。昨日喰ったカップ麺がベッドの脇に転がっている。昨日、口に入れたのはそれだけで猛烈な空腹を感じる。


 コンビニで弁当でも買ってくるか。いや。高めのファミレスで自分へのご褒美といくか? 昨日のミッションは達成出来なかったが、部分的勝利と言う事でいくばくかの金を得ることは出来た。全員で分けても各自20万円以上にはなる。当初の賞金に比べれば大分減ったが、それでも俺にとって少ないと言える金では無い。

 ミッションに呼んだ奴らへの最低限の義理も果たせそうだ。そして俺は大金を得る機会を失ったにもかかわらず、それほど自分ががっかりしていない事に気がついた。俺は昨日の戦いを楽しんだらしい。

 無視していたチャイムの音は、いつしかドアをガンガン叩く音に変わっていた。


「ちょっと、そこ居るんでしょ。居留守とかは無しにして」 女の声だ。俺に自宅に押しかけて来るような女の知り合いはいない……強いて言えば姉貴がいるが、ここに来ることはあり得ない。

 やはり宗教の勧誘だろう。それにしてはやけに態度が馴れ馴れしい。

 インターフォンのカメラでドア前の相手を確認する。逆光で顔が良く分からないがスーツ姿の女だ。


「宗教はお断り。新聞にも興味は無い。その他あんたが売りたがってる商品、ぜ~んぶ俺には不要だ。金は無いから粘っても無駄だぜ」


「自分の弟子に随分冷たい態度ね」


 弟子ってなんだ? 新手の詐欺だろうか? それにしてはあまりにも突飛すぎる言いがかり……

 脳裏に、ある可能性がひらめいた。


「お前まさか……アミュレット……なのか?」


「そうよ。あなたにプラチナ・ミッションのチケットを進呈し、昨日一緒に戦ったアミュレットよ」


 心の中で警報が大きく鳴り響く。俺はゲーム仲間に自分のリアルをバラすようなヘマはしていない。


「どうやって俺の居場所が分かった?」


「用心深いのね。そういうとこ大好きよ、北原きたはら たけるさん」


 こいつは俺の本名を知っている。アパートに表札は出していないのだ。

「……一体どういうつもりだ? 悪いがストーカー女は嫌いなんだ」


「私のことストーカー呼ばわり? ショックだわ。まさか本気で言ってる? って言うか警察呼ぼうとしてる? ……止めてっ! 分かったから、止めてください。所轄を呼ばれると面倒くさいの。反省してるから。反省してるってば! 私は決して怪しい者じゃ無いわ」


 女は慌てて、バックから手帳らしきものを取り出しドアフォンのカメラに押しつけた。チョコレート色の二つ折りのそれは、春山はるやま 明里あかりと読めた。

 俺の知っている限り、その手帳は本物のように見えた。警察手帳だ。


「……春山……警部補。あんた自分が警官だって言うのか?」


 俺は呻いた。たしかに警察なら俺の素性を探ることは可能だろう。ネットで使っているIPアドレスを特定し、プロバイダーに情報開示要請を出せば俺の登録情報は手に入る。しかし何故、警官がそこまでして俺に会いに来る? 


「警察が俺に何の用だ? 俺は何かの事件の被疑者なのか?」


「誤解しないで。私は警察官としてあなたに会いに来たわけではないわ。でも、こうでもしないと、会ってくれそうにないし。私のことストーカー呼ばわりしてるし」


「春山警部補。質問に答えて欲しい」


「そう言う呼び方、傷つくんですけど。オンラインと同じアミュレットでいいわ。あなたが被疑者なんてとんでもない。今日は弟子として協力をお願いに来ました……ねえ、ヴァイパー。こんな寒空の中で女の子を放っておくのはあなたの主義じゃ無いはず。どこかでお茶でも一緒にどう? おごるわよ」


 女の子って歳じゃねえだろう。俺はため息をついた。

 面倒なことに成りそうな予感がする。だが警官を追い返す訳にもいかず、俺はいやいやドアを開けた。


 ◆


 彼女はニッコリ、俺に微笑んだ。

 疲れた表情はしているものの、アミュレット――春山はるやま明里あかり警部補――はまあ美人と呼べる類いの女だった。もっとも俺の姉貴と比べれば、物語のヒロインと武器屋で店番しているちょっと可愛いNPC程度の差はある。ミディアムボブの髪型に、くりくりとした大きな瞳はそれなりに愛嬌があってそれなりに可愛らしい。警官らしい威圧感は皆無だ。どことなく彼女が操るゲーム世界のアバターと雰囲気が似ている。


「リアルではお初ね、ヴァイパー」


「ここでその名は使わないでくれ。ハイエナも駄目だ。春山警部補」


「あら、スパイみたいで格好良くない?」


「あんたセンスがおかしいぜ」


「そう? これでも仲間内では良いセンスの持ち主で通ってるんだけど。ヤニ臭い同僚のおじさん達には私のファンも多いし」


「あんたそれで嬉しいのか? だいたい本当にあんた警官なのか?」


 私のファンが怒るわよ、と言って彼女は警察手帳を俺に投げてよこした。


「こんなもん、いくらでも偽物を造れる」


「疑い深いわね。本物よ。でも所属部署とか細かい事は言えないの。本名教えただけでも大サービス」


 アパートの外には小型の赤いスポーツタイプの車が止められていた。どうやら彼女の私物らしい。パトカーでは無かったので俺は少し安心した。


「ねえヴァイパー。ちょっとドライブつき合って。少しお話ししたいわ」


「問い詰めても何も出ないぞ」


「考え過ぎよ。私はあなたを逮捕しようとか、尋問しようとかそういうつもりは全く無いから安心して。私はいわゆる普通の警官では無いの。あなたが仮に何か罪を犯していたとしても……スピード違反でも泥棒さんでも詐欺師でも私はそんな事を気にしない。さすがに殺人犯はちょっと困るけど。個人的に言えば痴漢も嫌かな」


「では……あんた何者だ」


「公安よ。公安警察官」


 俺は思わずつばを飲み込んだ。公安――公安警察。普通の警官が治安維持の為に働くのに対し、公安警察は国家体制を守るために働く。監視対象はテロリストやスパイとか……何てこった!

 俺はそんな大物じゃ無い。弁護士でも至急呼ぶべきなんだろうか? 知り合いにそんなのはいないが。

 その時、バタンと隣のドアが開いた。男の顔が隙間から現われ、うさんくさそうにこちらを見る。隣に済んでる学生だ。


 アミュレットはにっこりと挨拶をすると、俺の腕をとり身体を寄せた。


「さあ、たける。早くいこ。お腹空いたわ。さあ早く!」


 自宅で警官とトラブルを起こしたくはない。俺は芝居につきあうことにした。一緒に彼女の車に向かう。

 彼女の車につくと、春山警部補は俺を助手席に座らせ車を発進させる。警官のくせにシートベルトはしていない。


「貧乏で無害な一般市民つかまえて、あんたいったいどうする気だ? 権力の横暴だろ」


「貧乏ってのはともかく無害ってのはどうかしらね? そうそう、あなた公安って聞いた事あった?」


「警察小説に良くでてくる」


「小説ね。じゃあ、あまり印象は良くないわね。体制の維持だけが目的の権力のいぬ。エリート意識むき出しで、やたら秘密主義の悪の組織。そんな感じの理解かしら?」


「そんなとこだ」

 たいていの場合、公安は警察組織内の悪役だ。


「言っておくけど、日本を守るヒーローみたいに扱ってる小説もいくつかはあるのよ。しょせん作り話だけど、そう思ってくれた方が気分はいいわ」


「そこの警部補がネットゲームで遊びまくってる……なんて知ったら読者は失望するだろう」


「ネットで遊ぶのも仕事のうちなのよ。私は公安と言ってもサイバースペースの担当なの……そろそろ本題に入りましょう。昨日戦ったボギー。あなた、どう思った?」


 話が見えない。と言ってこのまま警察署に連行されるって訳でも無さそうだ。俺はしばらく話につきあうことにした。


「強かった。ただあの強さは機体性能がもたらすもので、それを操るAIはお粗末だ。いくらプラチナ級ミッションのAIとはいえ、あの状況判断能力はイマイチだ。まるで人間みたいに調子に乗りすぎてたし、そこを俺につけ込まれた」


 彼女の横顔は微笑んだように見えた。


「さすがね。湾岸戦争の英雄、ハンプトン大佐の愛弟子だっただけのことはある。ねえヴァイパー。あのボギーにダメージを与えたプレイヤーは、あなたがこのゲームで最初よ」


 俺は黙った。操縦をウィリアムから習ったってことを、どうやって調べたのだろう? いったいこの女、俺のことをどこまで知っているのだろうか。


「あなたが戦ったあのボギー、第六世代の制空戦闘機なの」


「見りゃ分かる。仮想機って言う訳だ。しかし運営も安易だな。現実に存在しないからってやりたい放題すぎる」


「違うわ、ヴァイパー。あれは本物よ。仮想機じゃ無い」


「言ってる意味が分からない。実在している機体は第五世代機が最新だ」


「ヴァイパー良く聞いて。あれは現在日本とアメリカが共同開発中の試作戦闘機。コードネーム、ブルーゲイルって言うの」


「悪いが……言ってる事がもっと分からなくなった」


「と言うか、あなた、これ以上聞きたく無いんでしょう? 覚悟して。もう逃げられないわ」


 前方の信号が赤になった。警部補はスピードを落とす。


「あの機体の形状やRCS、機動性、武装、全てを含めてブルーゲイルのスペックそのままなの……つまり、どこからか情報が漏れているわけ。致命的なセキュリティホールがあるか、誰かがデータを横流しているってことなのよ。政府は即座に開発を一端中止して調査したけど、漏洩ルートは判明せず。でもアメリカは日本側の管理体制を疑っているわ。このままでは同盟国としての位置づけは確実にダウングレードされる。共同開発もキャンセルされるかも知れない」


「俺が知っていい話とは思えない」


「もう遅いわ。毒を喰らわば皿までって言うじゃない? ……日本政府は、我々を使って犯人捜しに乗り出した。彼らは防衛省側の調査機関をアテにしてないの。当然よね。あいつらはこの手の問題には慣れていない。はっきり言って大甘のド素人よ。自分達の仲間に裏切者が紛れている可能性を想定出来ていない」


「あんたらは、違うってことか」


「ええそうよ。我々は常に裏切者を想定している。ずっと日本を他国から守っていた組織は我々、公安よ。経験の積み重ねが違うの」


 前方の信号が青に変わった。

 俺は自分の空腹を強く意識する。いつまで彼女の話を聞いていなければいけないのだろうか?

 日本政府に対して恩義を感じてるわけでもない。面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。いったい奴らが俺と……姉貴に何をしてくれたって言うんだ? 


「はっきり言って迷惑だ。いったい俺にどうしろって言うんだ? 俺は単なるゲーマーだぜ」


「そうね。あなたはゲーマーよ。だけど凄腕の。ヴァイパー、私の協力者に成りなさい。私達はあの仮想世界に慣れていないの。だけどあの世界の内部から漏洩ルートを特定する必要がある。自衛隊のパイロットは使いたくない。あいつらの仲間意識は異常で、我々公安を裏切るかも知れない。あなたが適任だわ」


「そっちで勝手にやってくれ公務員。俺は忙しいんだ。そして税金はちゃんと払ってる。自分の仕事は自分でやれ」


 そっちにとっては困った話なのかも知れないが、そんなのは俺と関係ない。少なくとも俺たち兄弟――俺と姉貴は――自分たちの力だけでここまで生きてきたし、役所やら政府やらを助けてやる義理も無い。だいたい俺たちが一番助けを必要としていた時、そいつらはこっちを見向きもしなかった。


「只とは言わないわ」 春山警部補は、俺がアルバイトで稼げる程度の金額を口にした。


 俺はせせら笑う。

「さすが公務員、報酬もしみったれてる」


「あなたに払っているトレーニング費をもう少し増やしてあげてもいい……ヴァイパー。私がさっき言った言葉を良く思い出して。“あなたが例え罪を犯していたとしても私は気にしない”――私はそう言ったわね」


「どういう意味だ?」


「私の同僚にあなたのファンがいてね。もの凄く頭が良い男なんだけど、あなたのことを尊敬してるわ。その男がこう言っているの。5年前にあなたのお姉さんが特殊な病気の治療を受けたとき、あなたはどこからか治療費の300万円を工面した。そうよね?」


「……ゲームで稼いだ金だ」


「一見、確かにそう見える。でも同じ時期にロトヴァリア資本のある銀行――ワールド・ウォー・オンライン社のメインバンクの一つね――がネット経由でハッキング攻撃を受けた。まあ彼らにとってゴミみたいな25,000ドル程度……日本円にして280万円くらいかしら? の金額を盗まれただけで、事件自体はすぐにうやむやになった。銀行は被害届けさえ出してない。そしてあなたは同時期にゲームで300万円を稼いだと言う……おかしくない? あなたは、まだハンプトン大佐に会う前で、凄腕のF-16使い“デフォ使いのハイエナ”はこの世に生まれていない。当時のあなたの腕で、どうやったら300万円なんて大金を稼げたのかしら?」


「……何が言いたい?」


「さあ、私は一体何が言いたいんでしょう?」


「車を止めてくれ。不愉快だ。あんたの態度は人にものを頼む態度じゃ無い」


「それは残念ね」


 春山警部補は文句も言わずにウィンカーをつけると路側帯に車を止めた。ハザードランプを点灯するとこう言う。


「同僚はあなたの手際に感心してたわよ。私もそう。でも“普通の”警察はどう思うかしら。そしてあなたの大切なお姉さんは、あなたのした事をどう思うかしら? 悲しまないといいのだけど」


 脅しだ。俺が協力しなければ彼女らが調べた情報を“普通の”警察に渡すってことだ。

 俺は歯がみした。現実の公安も小説の中の公安と同じくらい汚い。彼らは人の弱みにつけこんで協力者に仕立て上げると聞く。

 俺は一瞬迷う。そして決心すると警部補の顔を睨みつける。開けようとした車のドアをもう一度閉じた。


「可能性の話だ」


「そうね。全ては可能性の話よ。証拠があるかも知れないし、無いかもしれない。全ては可能性……ねえ、ヴァイパー、おなかが空いたわ。お茶じゃ足りなそう。これから食事でも一緒にいかが?」


「勝手にしろ」


「じゃあ、フォ○○スのステーキにしましょう。あなた好きだって言ってたし。我々の素晴らしい未来に対するお祝いってことで。安心して。私のおごりよ」


 俺に行かないと言う選択肢は無さそうだった。

 彼女は、にっこりと微笑むと車を発進させた。

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