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 ここは三千世界が1つ。魔装世界ディストピア。魔導と呼ばれる技術により、天変地異をも操る世界である。

 現在は神聖帝国が世界を征服しつつあり、かつては商業連合王国と弱小国によって平定されていた中央大陸を、文字通り焼き払って占領していた。

 覇道を突き進む帝国に対抗しうる国力を有しているのは、南東大陸の魔導国家アィンヘル。東大陸の聖王国のみとなっている。

 そしてあと2旬月(じゅんげつ)もせず、聖王国は攻め滅ぼされると噂が広まっていた。

 そんな世界が強大な力を持つ帝国に飲まれようとしている時、帝国の首都が存在する北方大陸。その大陸内、忘れ去られたかのように存在する国があった。

 古の時代より外敵に臆することなく、その領土を守り続けてきたレインスター公国である。

 これはそんな矮小国家から始まる世界平定の物語である。









  ◆








 とある日の昼下がり。

 午前中から酷使し続けている農具の点検をしつつ、愛妻から渡された弁当に舌鼓を打っていた農夫。お手製の握り飯をひと口食べ、長年愛用している鍬の状態を細かく確認する。


「おまえとはもう13年になるなー」


 感慨深げに呟きつつも最後の握り飯を手に取ろうとする農夫だったが、惜しくもその手は空を切っていた。


「ありゃ? あと1つあったはずなんだがなー」


 確かに最近物忘れも激しくなり、愛妻のみならず愛娘からも注意されているから注意しようなどと考えながら弁当箱の方へ視線を動かす。

 そして彼は知ってしまうのである。

 彼の最後の握り飯は確かに存在した事を。


「それ、おれの握り飯だよね?」


 そう。彼の視線の先には見るからに一般人だが、この辺りでは見かけたことのない若人が、それは心底嬉しそうに握り飯を頬張っているのだから。


「おっちゃん、これすげぇーうめーよぉ」


 愛妻の作った握り飯を泣きながら食べている若人を怒れる人間はいないだろう。彼はその必死に握り飯を食べる姿に毒気を抜かれてしまったのだ。

 悪い気もしなければ、危ない人間だとも思えない若人に対して、彼は水筒からクテ茶を入れて渡す。


「まったく、誰か知らねーけど。大事に食えよ」


 この時、彼はこの若人が救国の英雄になるなど知る由もなかったのだが、それを仕方のないことであろう。

 なぜなら、若人はただの村人だからである。


「あ、ぼくは村人。創世世界から来た村人Fだよ、よろしくっ!」


 創世世界リヒト。それはどの世界にも存在するおとぎ話の世界。神話の世界のことである。

 誰しもが幼き頃に語り聞かされ、その物語の英雄たちに憧れを抱く。英雄譚である。

 詰まる所、憧れを捨てきれずに幻想の世界から抜けられない若人と思ってしまっても無理はないのである。

 彼はそんな若人を優しげな眼差しを向けて諭すように語りかけた。


「そうかそうか。おれも昔は憧れたもんだ。勇者ヘルトや豪商人ライネになー。だがな、そんな憧れを捨てて現実に目を向けなきゃならない時が必ず来るんだよ。おれにとっては妻を娶る時だったなー。だからな、おまえも悔いを残さねーように選択をするんだぞー」

「んー? 勇者様はヘルトじゃなくてフェムト様だし、豪商人は多分ライネ様ではなくてキュリテ様だと思うよ」


 彼は若人の指摘に黙考する。

 はて、そうだっただろうかと。


「いや、おれの聞いてまわった話ではヘルトとライネだったぞ? おまえはどこから来たんだー」

「王都イシルバードだよ?」


 彼は必死に脳内の世界地図からイシルバードなる都市を探す。


「そんな都市あったかのー? 海を越えてきたのか?」

「世界をだね」

「世界を?」

「んーと、越えてきたんじゃなくて飛ばされてきたんだよ?」

「飛ばされてきた?」

「そうだよ?」

「なるほど、わからん。1回おれの家に帰って地図を見よう」


 彼は考えることを放棄し、愛妻に助けてもらうことを決意するのであった。

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