少年の過去 下
お久しぶりです。
選挙会場についた僕は舞台袖に行き、選挙管理委員の言うことに従い指定された一番左側の席に座る。幕は今閉じているがここが開けば全生徒1000人と対面することとなる。僕は緊張を覚え、ぶるりと体を震わす。すると横側に座る生徒がいた。
そいつは例の女子生徒と付き合ってる坂本良哉イケメンで成績優秀まぁよくいる優等生キャラって感じの奴だ。その横に例の女子生徒が座り手を握りあったりしている。
生徒会選挙では絶対勝ってみせると対抗心を燃やしていると幕が開き、選挙管理人が
「それでは、今から生徒会選挙を始めて行きたいと思います。生徒の皆さんは今から行われる演説を静かに聞き、周りの人に流されないよう自分の意思で投票してください。……それでは、右から順に演説を行ってください。」
そう、選挙管理人が言うと右から演説を行っていく。僕は一番左なのでどうやら最後のようだ。他の人の演説を聞きつつ僕は頭のなかで最終確認を行う。
すると一際大きな拍手が聞こえ僕は何事かと思い見てみるとどうやら坂本の演説が終わったらしい。やはり…坂本の人気は相当の物だ。そう再認識した。…だけど、トリは僕だ。最後は一番印象が残りやすい。つまりは票が集まりやすい。そう簡単に勝たせはしないと、気を引き締めてマイクのまえへと立つ。礼をしてから
「こんにちは。今回立候補した山神 蓮です。」
と、演説の用紙の内容を話し始めた。しかし、僕はある違和感を抱いた。誰も舞台を見ていないのだ。見間違いだとそう思いもう一度見てみるがやはり誰も見ていない。この時ようやく僕は理解した。そうかこれは出来レースだったのか。立候補した人の人気、周知度。それだけで誰に入れるのか決まっていたのだ。
…よく考えてみればそれは当たり前だ。生徒会と言っても権力は無いようなもの。ならどれだけ言葉を並べようが関係はない。なんの力も無いのだから。
それでも僕は最後まで読み切り礼をする。しかし返ってきたのは先程とは打って変わって疎らな拍手が聞こえてくる。泣きそうになるのを我慢しつつ席へと戻る。選挙管理人が
「それでは、投票時間となります。投票する人の名前に3つまで丸を書いてください。後で回収して廻ります。」
僕は放心気味に座りその様子を眺めていた。
暫くして投票したものの集計が終わったのだろう…選挙管理人が当選者の名前を発表していく。
受かったのは顔が整っている人気者ばかりだ。その中には例の子と坂本もいた。
投票数はその時発表されなかったが、選挙管理人が舞台袖で教えてくれた。…43票だった。坂本の票数は733票。圧倒的な差だった。
僕が努力しても埋められない差、それを実感してしまった。そこからはよく覚えていない。気が付けば家のトイレにいて嘔吐していた。そして吐き気が収まると涙が出てきて沢山泣いて死んだように眠った。
翌日起きると案の定風邪がぶり返し熱にうなされ、その翌日も熱は下がらなかった。
下がり始めたのは月曜の夜からそして、火曜も安静にするために休んだ。水曜になり学校に行ってみた。学校にいってもなにも変わらなかった。そう、なにもだ。誰もお疲れさまと労うこともなければなにも言われることもない。僕が欲しかったものは何一つ手に入らず喪失感だけが残った。
木曜は、学校をサボった。明日こそはと思うが、その日になると決心が揺らぎ僕は不登校になった。(テストだけは出て
それは三年の夏まで続いた。
その間も両親は心配してくれていてそれだけが僕の心の支えだった。高校受験が目前となり僕は三者面談のため呼び出された。先生は
「テストの点はいいですが出席日数が少し…」
と言いづらそうにしながら言ってきた。すると母さんが
「別に高校だけが全てではありませんし、足りないのであれば他の道も良いので無いでしょうか。」
と、僕を庇いそんなことを言う。
僕はこのままでいいのか?そう自分に自問自答した。…すると答えはすぐに出た。今まで面倒を見てくれた。今度は僕が恩返しする番だ。
「先生、高校に行くためには今から毎日学校に出たとしてテストで何点取ればいいですか?」
先生は少し驚いた顔をして僕を見て
「そう…だな平均でも90は欲しいな」
90点…僕は今平均80ほど。次のテストは一週間後…行けるかもしれない。そう思った僕は志望校を進路希望表に書き提出し
「では、明日から来ます。」
そう言い母さんと一緒に学校を跡にした。帰り道の途中、母さんが
「別に無理して行く必要ないんだよ?」
と言った。本当に優しいなと頬を緩ませ僕は
「大丈夫無理はしないから!」
と元気な声でいった。安心したように母さんはそっかと、呟いた。
それからの僕は学校に行き授業に出て休み時間も勉強に当てテストでも平均95点を取り続けた。そして、入試を迎えとうとう今日は合格発表。僕は見事志望校に合格したのである。