Act.0047:うほ! いいパーツ!
食事は、つつがなく終わった。
「えーっと。改めてなんだけど……」
どこか毒気が抜かれてしまった和真は、とりあえず開口した。
食器がさげられたテーブルには、全員が席についたままだった。
席をはずしたがっていた世代のことも、なんとか和真は留めていた。
「まず、君らは奴隷って意味がわかってるのか? こう言っちゃなんだけど、悲惨なものなんだぞ。俺は今回の戦いで、ちょうど奴隷解放の手伝いをしてきたけど、それは悲惨な……」
「あのさ、和真。あたしたち、そんなに悲惨そうに見える?」
双葉のツッコミに、和真は言葉を失う。
もちろん、悲惨には見えず、むしろ楽しそうに見えた。
だが、黙っているわけにはいかないと、言いたくないことも言ってしまう。
「いいか。女の奴隷は、男の玩具にされるのがオチなんだ。君たちはまだかもしれないけど、そのうちこの男が君たちを好きなように……」
「それこそ、望むところなのよ!」
「……はあぁ~?」
もう和真は、今日だけで何回口にしたかわからない声をだしてしまう。
「あのね。あたしは、世代と結婚したいの! 既成事実ウェルカムなの! 玉の輿バッチコイなの!」
「……え? 双葉、こいつのこと好きなの?」
「もちろんよ! まだ告白してなかったけど」
「……え?」
思わず和真は、世代をうかがい見る。
するとお茶をすすっていた世代が気がつき首肯した。
「うん。初耳」
興味なさそうに世代が答える。
「……双葉、おまえ、大切な告白、どさくさ紛れでよかったのかよ」
「どーせ、ご主人様には、どんな告白しても大差ないから問題ないわよ」
「そんな適当な……。じゃあ、ミカさんはどうなんだ!?」
同じようにお茶をすすっていたミカが、話をふられて静かに湯飲みをおろした。
「ふむ。奴隷の扱いに関しては存じている。別に問題ない」
「問題ないって……嫌じゃないのか!?」
「ああ。嫌ではない。むしろ拙子を夜伽の相手に選んでくれるなら光栄だな」
「へ、変態的な事をされるかもしれないんですよ……」
「ふむ。まあ、主殿が変態であることは、すでに我らは承知のこと。覚悟はできておる」
「…………」
和真は言葉を失い、思わず頭を抱える。
そんな和真に、双葉がため息をつく。
「あのね~、和真。だいたい、その心配自体が無駄なのよ」
「……どういうことだよ」
「ご主人様はね、あたしたちを奴隷として扱ってくれないのよ。こういうのなんて言ったっけ? 放置プレイだっけ? とにかく、そういう意味では、あたしたちに興味がないのよ」
「……え? こいつ……もしかして男のが好きなの?」
「ちょっと、そういう噂はやめてくださいね」
さすがに世代が苦情を口にする。
「ボクは、ちゃんと男性よりは女性に興味がありますよ。その手の噂が立つのは迷惑です」
「でもさ、ご主人様。そうは言っても、女性への興味なんて、魔生機甲の次なんでしょ!」
双葉が膨れ気味に言うと、世代はゆっくりと首を横にふって微笑を見せた。
「双葉……そんなことないよ」
「えっ!?」
「魔生機甲の次ではなく、お風呂の次ぐらいだよ」
「――うわっ! 興味薄っ! って、魔生機甲、食べ物、風呂……ベスト3にもはいってないわけ!?」
「まあ、女性がというより、人間にあまり興味がないんだけどね」
「言い切ったな、主殿」
「想定外ね」
さすがに周りも引きはじめる。
「ああ。でも、魔生機甲のパーツとしての人間は興味があるよ。どうすれば、より性能を引き出せるのかとか、今までと違った視点だよね」
「……なに言ってんだ、こいつ」
和真は、すっかりついていけなくなる。
「あれ? 待てよ。そういう視点で見ると……和真さん、あなたすばらしいパーツに見えますね」
「……え?」
「筋肉の付き方や、たぶん動きなんかもさっきから観ていると……。うーん。この中で、もっとも興味がわくパーツかも!」
「……え?」
ガバッと世代が立ちあがる。
そして熱い無遠慮な視線を和真に向け、舐めるように視線を動かす。
「うん……うん……うほ! いいパーツ! よし。和真さん。あっちの部屋でちょっとはだ――」
「――世代!」
暴走し始めた世代の頭をいちずがガッシリと鷲掴みする。
その表情は、まるで般若のような怖ろしさが宿っている。
2本の角が頭部にそそり立ち、目が赤く光ってつりあがり、口が裂けて牙が顔をだしている……かのように、そこにいる全員が感じていた。
さすがの世代も、顔をひきつらせて固まる。
「君は、『そういう噂』を立てられたくないのだから、そういうことは口にしないようにするべきではないか? うん?」
「は、はい……そ、そうですね……」
「それに今は、私の魔生機甲を作っているはずだろう? 浮気している暇はないはずだな? うん?」
「は、はい……そ、そうですね……」
「よし。世代、君はもう工房に行ってよし」
「りょ、了解です……」
そう言うと、世代は脱兎のごとく工房のドアに消えていった。
「和真……」
いちずが重く言葉を紡ぐ。
「うちの世代を誘惑するのはやめてくれるか?」
「誰が誘惑してるか!!!!」
とんだ言いがかりだった。




