Act.0026:仕えさせてもらえぬだろうか!
「では、朏さんにゆずるとして、値段をいくらにするのだ、世代?」
「え? だから、いちずさんが決めて良いよ」
「これからもあることだ。自分のデザインぐらい、自分で決めるようにしないか」
「じゃあ、前に競売で1億ぐらいって言っていたから、1億で」
「ま、待て。安易すぎるだろう! 競売なら確かにそのぐらいいくとは思うが、組織での落札の話だ。さすがに個人でその額は……」
「いいや。払わせていただきたい!」
ミカは、きっぱりと言い切った。
最悪、そのぐらいの金額を覚悟していなかったわけではなかった。
「そのぐらいの価値は、認めざるを得ない。ただ、拙子が払えるのは、優勝賞金等をためこんだ5千万円まで。それを手付けとして売らずに残しておいてもらえぬだろうか」
そう言って、ミカは額がテーブルにつくぐらい頭をさげた。
「もちろん、引き渡しは全額払ってからでかまわぬ。今の魔生機甲は売らずに、それで賞金稼ぎを続け、何年かかっても必ず払って引き取らせていただく」
「いや。別に、先にアダラは持っていっていいんじゃないの?」
「……え?」
「だって、寝かしといても、もったいないし。いいよね、いちずさん」
「無論。世代がよいなら、それでよい」
「OK! じゃあ、そういうことで」
「いやいや、待たれよ! 5千万の残金だぞ。それを払わずに逃げたらどうするつもりだ!?」
「……え? だって、あなた逃げないでしょう?」
「……え?」
「逃げたら逃げたで、見る目がなかったって事でいいよ。別に5千万でもよかったんだし。……まあ、でも、たぶんあなたは逃げないタイプだよ」
「…………」
ミカは、激しい感動を覚えた。
旅をしながらの賞金稼ぎなど、信用度は最低レベルと言っていいだろう。
なにしろ、すぐに逃げることができるし、実際問題としてそういう詐欺まがいのことをする者も多かった。
ミカはそのような騙すマネをしたことはなかったが、そこまで心から信用されたことなどなかったのだ。
世代が内心で「それよりそろそろ次のデザインに入りたい」と考え、「とっとと話を切りあげたい」と思っているなど、想像もしないミカは、感激して体が打ちふるえてしまう。
「じゃあ、そういうことで。あとはいちずさん、よろしく」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
去ろうとする世代を立ちあがってミカは止める。
「本人もいないのに失礼なことを聞くが、もしかして双葉も後払いでカットゥを使わせてもらっているのか?」
「カットゥ? ああ。違うよ。あれは、双葉が自分の体を代金として払うことになって、それで手を打ったの」
「な、なんと……」
(つまり奴隷ということか? だから、ご主人様と呼んでいたのか! ……だが、それはたぶん、大義名分。なるほど、そういう御仁なのか!)
その瞬間、ミカの中にある決心ができあがる。
(この方だ! この方こそ、探し求めていた……)
そう考えた途端、もう口が勝手に動いていた。
「世代殿、重ねてお願いしたきことが。残金の分、双葉と同じように、拙子のすべてを差しださせてもらうことで、払えぬだろうか。これから拙子が稼いだ賞金も何もかも、もちろんこの身もすべて世代殿のもの。その代わり、アダラだけは拙子のものとして、働かせて欲しい。つまり、世代殿を主として仕えさせてもらえぬだろうか!」
「――ちょっ! 朏さん!? 世代はただの魔生機甲設計者だぞ!」
いちずが驚くが、ミカはそのまま黙って世代を見つめる。
すると、世代が大きくため息をついて返した。
「……えーっと。ボクはぶっちゃけ、魔生機甲が作れれば、別に誰もいらないんだけど?」
「やはり。……しかしながら拙子は、各地の対戦試合にかなり詳しい。明日からでも、いろいろと案内することもできるがいかがか?」
「よし、採用!」
「こ、こら! 世代! 簡単すぎだ!」
ミカはこうして、世代の二人目の所有物となることになった。




