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Act.0015:昨夜はそんなにお楽しみでしたか!

――コンコンッ!


 真鍮で作られた獅子の顔をしたドアノッカー。

 朝早くから、その小気味よい音が響く。


――コンコンッ!


「はいよ、待ってくれ~」


 料理をしていたいちずは、卵を焼いていたフライパンを薪のコンロから降ろすと、勝手口まで小走りした。

 横の窓でドアの向こうの相手を確認すると、予想通りの相手だったので、閂を解除して厚みのあるドアを押し開ける。


「おはよう、いちず!」


 そこにいたのは、いつもにもましてニコニコとした顔を見せる幼なじみだった。

 丸い輪郭に、丸い目、少し茶色い髪まで、後頭部でアップポニーにされて円を描いている。

 そのおかげか、彼女は実年齢より、かなり幼く見える。

 いちずと同じ17才のはずなのに、首から上だけ見れば、12才と言われても信じてしまうような顔立ちだ。

 しかし、彼女は顔の幼さに反して、プロポーションがすごかった。

 身長はいちずより一回り低いのだが、胸だけはいちずよりも大きいぐらいだ。

 そのうえ、ウエスト周りはいちずより細いときている。


 そしてそれを武器にするように、彼女は新緑色のスポーツブラのような服と、タイトなスパッツでヘソ出しルック姿だった。


「今日は、いつもより早いではないか。どうしたのだ、双葉」


「どうしたのだ……じゃないわよ! 聞いたんだからね!」


 そう言いながら、遠慮なく双葉は家に入ってくる。

 そして、「いつもそうしています」というように、ダイニングの椅子に腰かけた。


「若い男、連れこんだんだって?」


「つ、連れこっ……違う!」


「ごまかさなくていいわよ。教えたとおりの服を着けておいて」


「いっ、いや、こ、これは……」


 慌てて自分の身を隠すように、いちずは両手で胸を隠す。

 言い訳の余地もなく、まさに昨日、世代(セダイ)を悩殺しようとした黒のタンクトップと短パン姿であった。


「パパから聞いたもーん。その人、コソ泥柳生を捕まえたんだって?」


 双葉の父親は、警務隊の大隊長だった。

 きっと、昨日の事件の顛末を双葉も聞いたのだろう。

 いちずは、あきらめたようにため息をつく。


「……まあ、そうなんだが」


「で? そのナイト様はどちら?」


「まだ、寝ている」


「おお! 昨夜はそんなにお楽しみでしたか!」


「ばっ、ばかっ! 違うっ!」


 ニヤニヤと笑いが止らない双葉に、いちずが慌てて怒鳴る。


「難攻不落の姫君いちずも、とうとう大人になっちゃったんだね~」


「だから、違うと言っているだろう! そんな色っぽい話など欠片もないぞ! 彼が寝ているのは、工房のソファだ!」


「……え? 恩ある客人を工房のソファで寝かせたの?」


 心底びっくりしたのか、ニヤニヤ顔が消え失せて、目をパチクリとさせる。


「もちろん、父の使っていたベッドを勧めたさ。しかしだな――」


――バタンッ!


 廊下と繋がるドアが開き、いちずの声を遮った。

 そこには、昨日のしわしわになったワイシャツと黒いズボンのままの世代(セダイ)があくびをしながら立っていた。


「おお。おはよう、世代(セダイ)


「……おはようっす」


 目を擦りながら、まだ眠そうにしていた。


「目が覚めぬか? いったい、何時までやってたんだ?」


「……外が明らんでいたのは覚えているよ」


「根をつめすぎだ……」


 いちずは思わず苦笑する。


「今、朝飯を作っているが、食べるか?」


「食べるけど……」


 そう言いながら、世代(セダイ)が双葉の方を見る。


「彼女は……」


「ああ。すまん。紹介してなかったな。彼女は――」


「……魔生機甲設計書(ビルモア)、2冊分ぐらい?」


「だ、だから、換算するな!」


 叱りながらも、自分の方が評価が高いことに内心で少し嬉しい、いちずであった。


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