Act.0000:人が乗って操縦できるロボットです
――好きなものはなんですか?
「人が乗って操縦できるロボットです」
――好きな場所はどこですか?
「人が乗って操縦できるロボットのコックピットです」
――好きな小説やマンガはなんですか?
「人が乗って操縦できるロボットがでてくる話です」
――好きなタイプは?
「人が乗って操縦できるロボットの戦闘タイプです」
――好きな相手のドキッとする仕草は?
「人が乗って操縦できるロボットの合体変形です」
――将来の夢は?
「人が乗って操縦できるロボットをデザインすることです」
これが【東城 世代】のすべてとなった。
始まりは、10年前。
小学生の頃にした、あの約束。
彼は、叶わぬ夢を見始めたのだ。
自分が生きている間に、巨大ロボットを作ることはできないだろう。
作れたとしても、ロボット戦争が起きてほしいわけじゃない。
でも、戦闘用ロボットを作って乗りたい。
そんな届かぬ矛盾した夢を求める彼は、空想に逃げるしかなかった。
毎日、ロボットのことを考えた。
毎日、ロボットのデザイン画を描きまくった。
いつしかアイドルやクラスメイトの女の子よりも、ロボットに興奮するような変態になっていた。
でも、周りから何と言われようと、このロボットへの愛だけはあきらめなかった。
せめて空想の中だけでも、約束を守りたかった。
だが、そんな変態的な愛の力のおかげなのか、彼は叶えられない夢を叶えることになる。
約束に手が届くようになる。
レムロイドが連れて行ってくれた、別の世界で……。
◆
強い陽射しが、先ほどから呆然としている世代のボサボサの髪をジリジリと温めている。
そんな彼の頬を乾いた風が叩いた。
まるで、茫然自失から引き戻すように。
その埃まみれの風で、彼は少しだけ瞼を閉じてから、ゆっくりとあらためて視界を確認する。
見えたのは、やはりありえない風景。
世代はつい先ほどまで、とあるビルの中にあるアミューズメント施設でゲームをやっていたのだ。
それなのに、そのゲームの密閉型コックピット筐体からでてみたら、そこは荒野だった。
彼は、その風景を地上10メートル付近の高さから眺めている。
凹凸の激しい、乾いた黄土の上に、巨大な岩が転々とあり、草木はほとんどうかがえない。
とても日本とは思えない場所である。
(ありえない……けど……)
と、彼は背後をふりむく。
そこには、マッドブラックの地色にメタリックな金と赤が映える、鋭い猛禽類のようなイメージを浮かべさせる巨大な顔があった。
それはまちがいなく、彼がデザインしたロボットである。
彼はそのロボットの胸部あたりから、体をのりだして見上げていた。
「……ありだな!」
見れば見るほど、世代はニヤニヤと笑みがこぼれてしまうのをとめられない。
そんな場合ではないと言うことはわかっている。
わかっているが、本物のロボットが手に入ったなら、ここがどこでもかまわないとさえ思ってしまう。
(けど、どうしてこうなったんだ?)
世代は高校からの帰りに、アミューズメント施設により、ゲームを始めた。
それから……と、その時のことを回想し始めるのだった。