第九十八話 スターナについて
「ちょ、ちょっと待ってください!下克上って何ですかそれ!?」
「そのまんまの意味よ。」
「そんな事する理由はなんだ?」
「だって、スターナ様が統治すると疲れるんだも~ん。」
疲れるんだも~んじゃねぇよ。
「あの方は真面目に国を治めておられる。だが、この国の王という物はそれだけ
ではやっていけんのだ。」
「どういう意味であるか?」
「この国は好き放題する輩が多い。それもこれも初代国王が
どんな事でも楽しんでやれば犯罪とはみなさない。などという訳のわからない
法律を作ったせいでもあるが。」
「あら、アタシはその法律あってよかったけど。」
殴り足りなかっただろうか?
「この国を治めるには、ある程度は許容しなければならない事も
どうにかしようとして自分で危険に突っ込んでいくのだ。」
「この前はピクシーがガングルフ王国の使者にイタズラしようとして罠を
仕掛けたら、スターナ様が止めようとして罠にはまって瀕死になってたわね。」
瀕死になるような罠を使者に仕掛けようとしたのか?
「他にラミアがお腹空いたからってハーピーを食べまくってたときは、
国民同士で争わないようにって注意してたんだけど、それならもっと美味しい
ものを用意してよって言われて、一人で料理を作りまくったり。」
「五百はいたラミアの腹を膨らますためだけに、政務も放ったらかして
国庫から金を抽出し、自分で炊き出しをするとか正気を疑ったぞ。
しかもその間は我らが王がやるべき仕事を代理でこなす始末。」
多分、人間としてはまともな部類なんだろうが……
「つまるところ、スターナ様は真面目で国を統治するのに向いてないのだ。
そのおかげで我らがどれだけ苦労しているか!あぁ腹が立つ!余計な事をせずに
椅子に座って内政だけを行っていればいいものを!!」
「尻拭いするのが限界に来ちゃって、さっさと次の王になって欲しいな~って
ことで、反逆しようかって話になってるのよ。」
本当に何なんだこの国?
「強いやつを集める理由は?」
「スターナ様も強いしね~。抵抗されたら困るじゃない。」
「ピクシーの罠にはまって瀕死になるくせにか?」
「まぁ本人自体はひ弱なんだけど、魔法使わせたら厄介なのよね~」
コイツがそう言うって事は、この世界でもレベルが高い方なんだろうな。
「と、言うわけで手伝って?」
「いや、そんなお願いされましても。」
「魔王の情報欲しくない?」
「……何か知っているのか?」
「ん~、どうかな~。知ってるかもしれないし~知らないかもしれな~い。」
殴れば思い出すか?
しかし、
「一応、考えておいてやる。」
「勇者殿!?」
「いいの?」
「魔王の情報がなさ過ぎて困っているのは事実だ。反逆だのなんだの言ってるが、スターナとかいうヤツがもう少し立場ってものを考えて行動するように
説得すればいいだけだろ。」
「そう来なくっちゃ!でもスターナ様の強さは本物だから気をつけないとね。」
「問題ない。」
「ふん!一発殴れば死にそうな小物がほざきおる。」
デカブツがいちいち突っかかってくるのは頭にくる。
「今の内に白黒つけておくか。」
「何をだ?」
「俺とお前のどちらが強いかだ。そうすれば、その減らず口も文句を言えなく
なるだろ。」
「ほう?」
その言葉を聞いて、
「勇者殿!」
「面倒事を増やさないでよ!」
「ヅクア、落ち着くである。」
「アタシの城で暴れないでよ!」
外野が騒がしくなったが、
「我と決闘する気か。狂っているとしか思えんが、受けてやろう。
どうせスターナ様に殺されるなら、今死んでも変わりなかろう。」
デカブツは乗り気だ。
よかった、いいストレス発散ができそうだ。




