第九十七話 レフィカの狙い
レフィカのところに戻ると、
「どこ行ってたのよ。さっさと行きましょ~。」
復活していたが、言い草がムカつく。
「で、お前の城とやらはどこにあって、どうやって行くんだ?」
「帰りは簡単よ。これを使うの。」
懐から取り出したそれは、
「魔石であるか。」
「そ。」
レフィカは魔石を高く掲げて、
「んじゃ行くわよ~。」
地面に叩きつけた。
ヒュン!
「ここは?」
「ここが、アタシの城。いらっしゃ~い。」
一瞬で移動したのか。外が見えたので少し覗いてみると丘の上に城が
建っているのが分かった。その丘の麓に城下町、俺達は城の入り口に転移した
らしい。
「あの魔石には転移魔法が込められていたんですか?」
「そうよ。」
「じゃあ港町に来る時もそれを使えばよかったんじゃないですか?」
「魔石に込められる転移魔法はね、一度行った場所にしか行けないように
なってるのよ。あの街、半年前くらいにできたからね~」
面倒くさい国だな、ここは。
「はいは~い。おしゃべりの続きは会議室ででもやりましょ~。」
レフィカが先頭に立って歩き出し、俺達はそれについていく。
「まさか、こんな早く着くとは思わなかった。」
「確かにね~。」
「でも、歩いて向かうよりさっさと来れて良かったである。」
「それもそうだな。」
しばらく歩き続けていると一つの部屋の前で立ち止まった。
「ここよ。んじゃどうぞ。」
レフィカは部屋に入ると、ドアを開けっ放しにしていたので、俺達も
部屋に入った。そこには、
「ぬ?おいレフィカ、まさかこんなひょろいやつらを見込んで連れてきたのか?」
筋骨隆々の大男が、こちらを見るなりケンカを売ってきた。
「そうよ。強かったんだから。」
「どう見ても小物ではないか。これで我らの目的に見合う働きをするとは
思えんな。」
「おい、デカブツ。」
デカブツが鬼のような形相でこちらを睨む。
「今、軽口を叩いたのはキサマか小僧?」
「俺以外に誰か言ったように聞こえたんなら、耳が腐ってるな。頭の中身も
腐ってそうだしな。」
「キサマァ!」
一触即発どころか今すぐに戦闘が始まりそうだったが、
「はい、そこまで!!ダメよ、せっかくスカウトしてきたのに。ラテニヴァも
え~と……ズギャアちゃんも落ち着いて。」
俺の名前がどんどん酷くなっていく。
「ふん!」
鼻息荒くラテニヴァと呼ばれたデカブツが席に付く。
「四人とも座っていいわよ~。」
そう言われたので残りの席に全員腰掛ける。
「それでは、早速なんだけどアタシが武闘大会を開いた本当の目的を言うとね、
強い人を仲間に引き入れたかったのよ。そのために願いを叶えてあげるって
エサも用意したんだから。」
「実際は叶えるつもりは無かったと?」
「できる範囲でなら叶えてあげたわよ~。ただし、さっきも言ったように
仲間を探しているから、断られたら叶えなかったけど。」
それは詐欺じゃないか?
「お前が会場で暴れたのも選手の実力を知るためか?」
「それもあるわね。少なくともアタシと同じくらいの強さの人じゃないと意味が
なかったし。でも、ノリで攻撃したのも本当よ?」
それは言わなくてもいい情報だろ。
「で、結局のところ何がしたいんだ?そこのデカブツもグルだろ。」
「実はね~……
魔王様に反逆して王の座を明け渡してもらおうと思って。つまり下克上ね。」
この世界では俺に厄介事がダッシュで寄ってくるのは何故なんだ?




