第九十六話 武闘大会 終了
「おい。」
「う……ここは?」
「お前が武闘大会を開いた会場だ。」
「えっと……あ!」
起きてしばらくぼーっとしていたが、俺の顔を見てはっきり思い出したらしい。
「あなた達強いのねぇ。ね、お願いがあるんだけど。」
「自分のやった事を分かって言ってるのか?」
え?なにが?とでも言いたげに首を傾げやがった。
「大会参加者を全員殺そうとしておいて、よくもそんな態度が取れる
もんだな。」
「だって最初に言ったじゃない。殺しても罪には問わないって。楽しければ
何でもいいのよ。」
……一回、この国を滅ぼした方がいい気がするな。
「それより、ね?聞いてくれるでしょ、お願い。」
「断る。」
「そんな冷たい事言わないで~。」
「とりあえず俺はお前をどうやって躾けようかと考えてるところだ。」
「躾け?そういう趣味があるの?」
コイツ……
「まあまあ、怖い顔せずにアタシの城に来てよ。勇者なんだから人助け
しないと!」
「知ってたのか?」
勇者というフレーズ自体、脳筋以外から聞くのが久々じゃないか?
「ヴァファール国から、それぞれの国に手助けしてあげてって連絡来てる
もの。」
「それなのに襲ってきたのか、お前は。」
「ノリでやっちゃった。」
ゴッ!
「いった~い!頭殴らなくてもいいじゃない!」
ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!
なんか面倒くさくなったので、もうゲンコツでいいか。
「ちょ!やめ!いだ!いだい!」
しばらく殴っていたら、
「うえええぇぇぇぇぇぇ~ん!!酷いよー!痛いよー!」
泣き出した。
「勇者殿、そのくらいにしてあげた方が。」
「詐欺師を狙ったのにか?」
「え?なに?もしかして私のために怒ってくれてたの?優しいのね~
よしよし。」
詐欺師が頭を撫でてきた。
「あっづぁ!ちょっと、あぢゃあ!」
レフィカに炎を出させて火で炙る。
「レフィカ様より酷い扱いですね……」
「焼けるわ~……これ、こんがり焼けるわ~……」
「ヂュヂャ、怒りすぎであるよ。」
いろいろあってストレスが溜まってるんだ。ちょっとくらいいいだろ。
「うっ、ぐすっ。さっさとアタシの城に来なさいよ~。」
「なんで、そんなに俺たちを誘ってるんだ。」
「来てもらわないと目的が果たせないからに決まってるでしょ~、も~。」
お前の目的なんぞ知らん。
「勇者殿、行ってみませんか?」
「そうであるな、次の目的地は六魔の誰かのところであったし。」
「しょうがないか。おい、さっさと泣き止め。」
だが、しばらくレフィカは泣きっぱなしだったので放っておいて
先に町を離れるため、会場裏に置きっぱなしの荷物を取りに行く事にした。
「あ、あんた!」
「ん?誰だ?」
「いや、レフィカ様の攻撃でやられたもんだけどよ。あんたらが、回復させて
くれたって?いやぁ助かったわ。ありがとよ!」
会場裏に行ったら、俺達が助けたという選手に話しかけられて、
「もうこんな目に遭うのはこりごりだぜ。俺は家に帰って家業を継ぐわ。
もし、ガングルフ王国のピッガって町に寄った時は訪ねて来てくれよ。」
そう言って故郷へと帰っていった。
棍棒は買ったばかりでもったいないが、試合用だったし置いていくとして、
荷物はこれくらいか。じゃあレフィカのところに戻ろう。




