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第九十四話 武闘大会 アリアの場合

「ただいま……殺されるかと思った……」

「お帰りなさい。見逃してもらえてよかったです。」

詐欺師が戻ってきた。


「なぁ、聞きたいんだが。」

「なに?」

「さっきの魔族って、食ったら鶏肉と鹿肉どっちの味がするんだ?」

「アンタってヤツは~!!」

なぜか怒りだした。


「どうした、急に?」

「どうしたじゃないわよ!命からがら戻ってきたんだから、ねぎらいの言葉とか

あるでしょ、ふ・つ・う!」

「勝ててよかったな。で、どっちだ?」

「ぎゃ~す!!」

鳴き声が怪獣なんだが。


「テュグア、こういう時はちゃんと褒めるである。」

「そうよ!」

「しかしな、ベルを使うなと言ったのに使ったし。」

「うっ!」

詐欺師の目が泳ぐ。

口笛を鳴らしてごまかそうとするな。しかも鳴っていない。


じっと見つめると罰が悪そうに下を向いた。

「どうして使った?あれは俺でも吹っ飛ぶ威力だぞ。あの魔族だったら

分解してる可能性があったのを使って褒めろもないはずだが?」

「ご、ごめんなさい。」

「まぁ、勝ったことに変わりはないし。よくやったな。」

「へっへ~ん。でしょ?」

「図に乗るな。」


それからしばらくは別の戦いが始まって十数試合後、

「次……アリア対オルディア!」


脳筋の出番がやって来た。

「私ですね。」

「ファイトである。」

「頑張ってね。」




私の相手は褐色の肌に長い耳――ダークエルフで

「あぶなっ!」

もう少し反応が遅かったら矢に刺さっていた。


私はオルディアさんを中心に円を描くように走った。

その円を走りながら縮めていけば、すぐ本人に届くだろうと思っていたけど、

「……。」


何かをブツブツと喋ってる。何を――弓を捨てた!?懐に手を入れて……

「!? ぐぁっ!」

ギィン!!


尋常じゃない速度で走り、喉に短剣を突き刺そうとしてきたのを剣で防ぐ。

勇者殿を見ていて、速い人の動きに少しは慣れていたから反応できただけだ。

「はぁっ!」

力任せに受け止めた短剣を剣で押し返す。が、感触がない。

剣で押すよりも後ろに下がる方が先だなんてどうしましょう?

「よく反応できたわね。」

「あなたより素早い人を知っていますからね。」

「へぇ、興味あるかも。」


ガァン!キン!

喋りながらも短剣の攻撃を緩めてはくれない。

リュリュさん、さっきの方法をお借りします!


「でぇりゃあ!」

私が力任せに剣を地面に叩きつけると土煙が舞い上がるが、それでも

足が隠れるかどうかくらい。それで十分ですけども。


「何してるのよアンタ!」

オルディアさんは私に向かって突っ込んでくる。普通なら無理だが、

「そこです!」

私は剣を捨て、タックルで捕まえる。


「これで逃げられませんよ。」

「な、なんで!?」

「さっきのつぶやいてたのは風の補助魔法ですね?攻撃してくる時に一瞬だけ

土煙が消える方向に待ち構えてただけですよ。それに急所を的確に狙い過ぎ

です。」

「くっ!」

捕まえられたまま短剣で攻撃しようとしてきたので、腕をねじり上げながら

後ろに回って、首に腕を巻きつける。


「落とされたくなかったら降参してください。」

「……参ったわ。」


ふぅ、サーシャちゃんもリュリュさんも勝ったのに

私だけ負ける訳にはいきませんからね。

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