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第八十六話 ケンカ仲裁

俺達が昼飯を食い終わったのを見計らったように、ケンカが始まりそうな

雰囲気に包まれる。

「やろうってのか?死んでも知らねぇぞ?」

「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ!!」


あれは前も見たミノタウロスと、もう一人は何だ?

「オーガね。両方とも力自慢の種族だから何かと張り合ってるのよ。」

「なるほど。」


二人の間に店主が割って入る。

「落ち着いてください!こんなところで暴れられたら商売上がったりですよ!」

「引っ込んでろ!」

「女の出る幕じゃねぇんだよ!」

そう言って店主を突き飛ばす。

「きゃあ!」


運よく俺たちのテーブルに飛んできたので受け止める。

「何よアイツら!ケンカを止めようとした女性に手を上げるなんて!!」

「私がちょっと行って……勇者殿?」


受け止めた店主を離して、二人に近付く。

「おい。」

「んだテメェは!?」

「さらに小さいのが出てきやがって、失せろ!!」

さすがに店をぶち壊すほどの被害を出すのは気が引けるからな。


「耐えろよ?」

「あ?何言って……」

ミノタウロスの身体が6mほど回転しながら浮いた。大型の種族でも入れるように

店がデカめなのか、それが幸いして天井までは届かなかった。

床に落ちると泡を吹いて、そのまま起き上がってはこない。

店が静寂に包まれた。


「今、何しやがった!?」

「見下ろしてきたからな。アッパーを叩き込んだだけだが見えなかったのか?」

「ふざけやがって!!」

オーガが右ストレートを放ってきたので、俺も同様の動作をする。


メキャッ!

「がああぁぁ!!」


拳同士がかち合ってオーガの拳から骨が折れる音がした。

そのまま足払いをかけて、顔面を強めに踏みつける。

「ブゴォッ!」

「食堂は飯を食いにくるところだ。ケンカなら誰もいない場所でやれ。」


足を離すとオーガは走って逃げていった。

ミノタウロスを無理やり起こすと、同じように逃げ去っていく。

「あ、あの……」

「何だ?」

「ありがとうございました!あのまま放っておいたら店がとんでもないことに

なっていました。」

「うるさいから処理しただけだ。」


そう言って席に戻る。

「お帰り。」

「せめて武器を使うであるよ。人間であろ?」

何故かサーシャにたしなめられた。


「とてもお強いんですね。武闘大会に出られるんですか?」

店主も席にやってきて、再度話しかけられた。

「その武闘大会ってのはなんだ?」

「ご存じないんですか?2ヶ月ほど前にレフィカ様からの発案で行われる事に

なった腕試しの大会です。優勝者は願いを一つ叶えてもらえるんだそうです。」

「レフィカ様ってのは誰だ?」

「六魔のお一人ですよ。」


武闘大会というもの自体に興味は無かったが、六魔というヤツの情報が

入ってきた。

「そのレフィカ様はどこにいるんですか?」

「今はこの町に向かってらっしゃるそうです。」

仮にも上の立場の人間がポンポンと出歩いていいものなのかとも思ったが、

この国の人間だし、しょうがないという結論に至った。


「トゥグア、出てみたら?」

「出る必要がどこにある。」

「どうせレフィカ様ってのはここに来るんでしょ?行き違いになるのも

面倒だし、その間は暇でしょ?」

まあ確かにそうだが。


「ね?いいじゃない。店主さん、その武闘大会はいつやるの?」

「明日の昼前に受付が始まって、昼過ぎに開始になります。」

なし崩し的に参加する事に決まった。


「じゃあもう少ししたら武器屋に行きましょう。」

「である。」

「なんでだ?」

「剣だと斬ってしまうじゃないですか。」

だったら素手でいいだろと言ったら、しかめっ面された。

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