第六十八話 イオネ王国へ
「買い物も済ませとかないとな。」
「そうですね。」
「じゃあ、それぞれ必要な物を買って宿に集合とかでいいんじゃない?」
「賛成である。」
そうしてバラバラに買い物をする事にした。
俺は本屋に向かう事にした。
前に川に落ちた時、勉強用の本がダメになってしまったが、
ミルズ村に本屋はなかった。
「ここか。」
なるべく子供用の読み書き練習用になる本を探す。
「文字の書き方や単語はあらかた覚えたから……軽い文章を書けるやつは、と。」
不思議な事に勉強した内容は頭にすぐ入ってきて、忘れる事はなかった。
この世界に来た時、状況にすぐ馴染んだのと同じ現象だろうか?
「絵本か。」
子供用の本を見つけた。
「勇者の冒険……」
「お子さんへのプレゼントかい?」
店主に話しかけられた。俺に子供がいる風に見えるのか?
「いや、文章を書く練習用だ。」
「アンタのかい。文字を書けないとは珍しいね。まぁちょうどいいんじゃないか?昔の勇者様が魔王を倒すまでのお話を子供用にまとめたんだよ。」
「いくらだ?」
「12銀貨。」
俺は金を払って本屋を後にした。
他にも必要な消耗品や食料などを買って宿に戻った。
「ただいま戻りました。」
「ふぃ~、疲れた~。」
「結構、買ったである。」
三人も帰って来たので、イオネに行く準備をして宿を出る。
「また来てくれよ。」
「わかったである。」
店主との挨拶もほどほどに国境を隔てる門まで来た。
「でっかいわね~。」
「エジオの何倍くらいあるんでしょう?」
確かに無駄にデカい。竜ですら通れそうなデカさだ。
「チュクワ、質問があるである。」
「何だ?」
「サハギンたちはクアーズ王国側に現れたであるね?」
「あぁ。」
「アイツらはなんでイオネ王国側に魔物の群れを出したり、去っていった
であるか?」
理由か……
「多分、陽動じゃないか?」
「陽動?」
「こっち側で騒いだら向こうの警備が手薄になるだろ。そのタイミングで
襲わせたら、被害がもっと拡大するかもと思ったんじゃないか?」
「う~ん……それだけであるか……」
「何か気になるのか?」
「……わかんないである。」
サーシャが何かを気にしていたが、自分でもわかっていないみたいだったので、
会話は終わった。
門の前に来て、向こう側へ行く手続きを済ませる。
「はい、ではもうしばらくお待ちください。」
対応した兵士が席を外した。向こう側と連絡を取るのだろう。
「できるなら、クアーズ王国も見て回りたかったけどね~。」
「そうですね。獣人の方々がどんな暮らしをしているか見てみたくも
ありました。」
「ごめんである。」
「事故だったし、しょうがない。次に来る事があれば観光するのも
いいだろう。」
そうこう話してる内に兵士が戻ってきた。
「では、こちらへどうぞ。」
別なところへ案内される。
「あの門を通るんじゃないのか?」
「物資を運ぶ馬車などがあれば別ですが、それ以外は別の場所から通るように
なっています。」
「残念です。通ってみたかったんですが。」
そして、別の扉の前に行き、
「では、お通りください。」
俺達はイオネ王国に入った。




