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第三十三話 竜舎

俺達は竜の背に乗って城塞都市エジオの竜発着場まで連れて来られた。

脳筋が小声で

「~!楽しかった~!憧れの竜に乗れるなんて!」

とはしゃいでいた。

今回ばかりは賛成だ。

「空なんていつでも飛べるから何も変わんないわよ。」

詐欺師はそう言うが、こいつと違って俺達は飛べないしな。


「こちらへ。」

ワミが付いて来るように促す。

付いた場所は、

「ここは軍略会議室でしてな。声が外に漏れることはないはずです。」


「さて、何からお話したものか、といっても話せる事自体少ないのですが……

あれはちょうど勇者殿がガナガと決闘を行った日ですな。

私がこのエジオに戻ってくると皆が騒いでおるのです。

話を聞くと成長しきっていない幼体の竜が2匹、苦しんでいると。」

「原因は?」

「分かりません。竜は体が強く、毒や魔法も受け付けにくいはずなのですが……」


簡単に分かるようなら苦労はしないか。

「何か食事に混ざっていたとか?」

「残飯や糞も調べてみたのですが、痕跡はありませんでした。」

「魔法は?」

「魔法に詳しいものに調べさせてはいるのですが、今のところ何とも。」


……ステータス画面で分からないか?

「竜を見せてもらう事はできるか?」

「竜を……ですか……」

渋るワミ。

「難しいか?」

「竜と竜騎士は互いを終の友として認識しているので、それ以外の方に

見られるのは……勇者殿なら原因が分かるのですか?」

「おそらくな。だが、分からない可能性もあるから期待し過ぎてもらっても

困るがな。」


「……背に腹は代えられません。今から担当の団員に話を通しますので

少々お待ちを。」

そう言うとワミは去っていった。

「大変そうだね。」

「自分の大切な友達が苦しんでいたら辛いですよね。」


ドアがノックされ、

「失礼します。お飲物をお持ちしました。」

別の団員がやって来た。

「どうぞ。」

「悪いな。」

苦めのコーヒーだった。

「う゛ぇーにがーい……」

そういう飲み物だ。


「あんたは?」

「私は副団長を務めさせて頂いてるリビと申します。」

「リビ、今回のような事は初めてなのか?」

しばらく考えて、

「そうですね。少なくとも私がいる間はありませんし、昔もそんな事が

あったとは聞いてませんね。

でなければワミ団長もあそこまで慌てないかと。」

それもそうだ。


「単なる体調不良と違う点はあるのか?」

「団員に訴えない事ですね。」

「どういう事だ?」

「竜はプライドが高いとはいっても、それでパートナーを

危険に晒すような事をしたらそれこそ生き恥です。なので体調不良の場合、

パートナーにだけは伝えるものなのですよ。」


「で、今回はそれがないと?」

「グッタリとして意識もハッキリしないようでして……」

ドアが再度ノックされ、

「お待たせいたしました。」

ワミが入ってきた。



「ここが竜舎です。」

やたらデカい通路に部屋、それぞれから竜がいる。

「こ、こわいんですけど……食べられないよね?ね!?」詐欺師が喚く。

「知らない者が来て少し敏感になってるようです。騒がなければ問題ありません。」


先に進んでいく。

デカい部屋の前には必ず一人は騎士がいる。

多分パートナーの部屋なんだろう。


「あまり歓迎はされてないみたいだな。」

「通常はウルム王ですら立ち入らせない場所ですから。

我慢していただけると助かります。」


騎士も竜もこちらを見る目はかなり鋭い。

敵視はしてないが縄張りに入られて不愉快ってところか。


「ここです。」

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