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第三十話 水浴び

さて、これからどうするか。

とりあえず、

「お前ら何とかしろ。」

「「?」」


臭う。相当な獣臭さが漂っている。

そして脳筋に至っては見た目もヤバイ。鎧が返り血だらけだ。

「さすがにその見た目と臭いが付いたままだとキツイだろ。」

「私のはアンタのせいじゃない!」

役に立たない妖精がほざいてる。


「私は元より水浴びするつもりでしたので川も見つけてあります。

それに森の中に外れるとはいえ騎士団の巡回ルートですし。

昨日も何だかんだ入れませんでしたからね。」

そうか、そうだったな。

「じゃあお前ら二人で行ってこい。」

「……どっちか片方残ったほうがいいんじゃない?」

リュリュが言う。


「何でだ?」

「だって覗きに来るかもしれないし。」

誰が?何を?

脳筋が赤くなる。

「の、覗かないでくれるとその、ありがたいんですが。」

覗かねぇよ。

「え~?絶対覗きに来るよ~。だってムッツリそうだもん。」



「……」

返事が無い、よし。

使い終わったばかりの食器だったから臭いもキツかっただろうな。

「って何すんのよ!」

復活が早いな。次は4分くらい閉じ込めるか。


「リュリュさん、行きましょう。服もベトベトになってしまいましたし。」

「それも今のアイツのせいなんだけど……」

空耳が聞こえる。



「冷た!」

「そうですね、寒い季節に入ってたら凍死してましたね。アハハ!」

「……笑えないわ。」

私達は着ているものを脱ぎ、川に浸しながら自分たちも水に入る。

「鎧も鎧下もちゃんと洗わないと酷い事になりますからね。」

「私も一張羅だもん。手入れしておかないと。」

「あとで食器類も洗っておきましょうね。」


ジャブジャブと音を立てて洗いながら会話をする。

「ねぇ、何でアンタはアレと旅してるの?」

「勇者殿ですか?いやまぁ成り行きというか何と言うか…

ちょっと戻りたくなかったのでお供させてもらおうかと思って。」

「ふ~ん?ま、私も戻りたくないから分からなくもないけど。

でも、よくもまぁアレと旅を続ける気になるわね。性格悪くない!?普通だったら


こんな可愛い妖精が倒れてるなんて可哀想に。助けてあげよう。


とか思うはずでしょ?私、見捨てられかけたんだけど。アイツはドSよ。」

「それはその、ちょっとキツいところもあるかもしれませんが、根は優しい方ですし……

どうしました?」


リュリュさんが信じられないものを見たという顔をしている。

「アレが優しい……?アンタ変なもんでも食ったの?それとも洗脳されてる?」

その言い草は中々に失礼だと思ったが、

「勇者殿はあまり人に優しくする事になれていないんだと思います。

もしかしたら勇者殿自身があまり優しくされた事がないのかも……」


リュリュさんの顔が今度は渋くなる。

「なに、アンタ惚れてんの?」

「いや、あの、そういう訳では。」

「じゃあ何でそんなに肩を持つのよ。あたしは性格悪いドSにしか見えないんだけど。」

私は少し考え込んで、

「最初に会った時には印象が悪かったのは確かですが、私の身を案じてくれたり

旅の途中で出会った子供に優しくしたり、付き添っていると少しずつ見えてくるものが

あるんです。」

「そ。まぁさっき知り合ったばかりの私よりはアンタのが付き合い長いんだから

そういうところも見えるんでしょ。」


ガサガサ!


「「!」」

音がした方を見た後、顔を見合わせる。

「覗きに来るなって言ったでしょ!何してんのよ!」

「あの、勇者殿、ちょっと、ちょっとだけ時間を!心の準備が「何の準備よ!」」


ガサガサガサ!


「ちょ、ちょっと堂々とし過ぎでしょ!覗きってもっと「グルルルルル……」こう……」


何かデカくて毛深い。


「……剣……持ってる?」

「……アイツの足元です……」



「ゴアアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」

「「キャアアアァァァァァァァァァァァァ!!!!」」


また、熊に遭遇した。

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