第二十九話 みんなで食事
「お待たせいたしました!さぁ召し上がれ!」
出来上がった熊肉の丸焼きを食うと確かに美味かった。
しかし俺は野草やら、肉もウサギとかを取りに行くものと思っていたがな。
隣を見るとリュリュが肉を貪っている。
「よく知らんかったが、妖精とかって肉も食うもんなんだな。」
「えぇそうですよ。肉食を禁じているのはティリアを信仰している方々の
さらに上位に位置する方くらいですね。リュリュさんいかがですか?」
ハフハフ……
「あの、リュリュさん?」
モグモグ……
「リュリュさんってば。」
ガツガツガツ……
「おーい?」
ムシャムシャ……
「リュリュさ「グルルルルル…グァァァァ!!!」ヒァ!?」
「……よく知らんかったが、妖精も吠えるんだな。」
「……私も知りませんでした。」
野生動物と同じだな。
「ふ~食った食った。」
隣で小さいヤツがおっさん化してる。
「お口に合ったようなら良かったです。」
「しかし熊肉はあんなに美味いものなのか。」
「そうなんですよ~。あれ私の大好物なんです。」
臭みやらなんやらが酷くて肉料理は不味いと聞いた事があったが。
それにしても、
「お前は……いや、いい。」
「なんですか?」
「結婚する気がないんだったな。だったら言っても無駄かと思ってな。」
しかめっ面をする脳筋。
「確かに私は騎士ですし、そういう事は興味ありませんが……でもその言い方は
ちょっと何と言うか失礼じゃないですか?」
「何がだ?」
「私だって女なんですから、ちょっとは優しくしてくれてもいいじゃないですか。」
コイツ、たまに女である事を強調してくるな。
騎士らしくなりたいのか女らしくなりたいのかどっちだよ。
まぁ、
「少なくとも森の中から熊の返り血を浴びて、さらに本体を引きずりつつ出てきて
笑顔でいられる女はモテないと思うぞ。」
「おい、いい加減に立ち直れ。」
「……二人が喜ぶと思って、いや喜んではいたけど、でも……」
アレからかれこれ20分はこんな感じだ。
「あ~……悪かった。お前のおかげで美味い飯が食えたんだから感謝している。
出て来た時の衝撃はともかく、料理が上手い嫁が欲しいってヤツはいるから
そういうヤツらにはモテるんじゃないか?顔も悪くはないしな。」
我ながら棒読み加減が酷いな。
「……本当ですか?」
「実際、ガナガにはアピールされてたんだろ?」
「……アレは嫌です。」
哀れガナガ、落ち込んだ女にすら相手にされないらしいな。
「じゃあ、今度何かあったらちゃんと優しくして下さいね?」
「気が向けばな。」
「ね~、痴話ゲンカ終わった~?」
どこの誰が痴話ゲンカをしていたのか教えて欲しいんだが。
「まぁいい、相手をするのも疲れるし用も済んだろ。どっかいけ。」
「え?私も一緒に旅してあげるけど?」
イマ ナニカ キコエタヨウナ キガスルガ キノセイダロウ
「よし、片付けるか。」
「ちょっと無視しないでよ!」
コイツは何の恨みがあって付いてくる気なんだ。
「飯は食わせてやったろ、付きまとうな。」
「またお腹空いて倒れたら困るじゃん!」
知らねぇよ。
「まぁまぁ勇者殿、旅は道連れ世は情けというじゃありませんか。
しばらく一緒に旅しても問題ないかと思いますよ。」
それ日本のことわざだろ?まさか異世界人に言われるとは思わなかった。
「その言葉どこで聞いたんだ?」
「昔から伝わってることわざですよ。」
昔、こっちに来た日本人が広めたってところか。
「仕方ない、何かあったら働けよ。」
「もっちろん!このリュリュ様に任せなさい。アンタなんかより役に立つわよ♪」
じゃあ早速、役に立ってもらおうか。
「重い~……臭い~……助けて~……」
保存用の熊肉を片付けてもらおうと上から乗せただけなんだが
潰れてしまった。役に立たないな。




