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第十五話 旅立ち

朝になって

「おはようございます!」

脳筋が部屋に入ってきた。

鍵閉めてたよな?


なんでも宿屋の主人に言ったら、壊されるくらいならと

速攻で鍵を渡してくれたらしい。

お前、何言ったんだ?



城に出向くと貴賓室みたいな場所に通された。そこで、

「おはようございます。」

お姫様と会った。


「申し訳ないのですが、お父様は公務が忙しく、私が代理として参りました。」

スキルを覗くチャンスだったが仕方ない。


「では早速、お渡しするものを。まず認定証ですね。これで我が国の庇護を

受けていると証明できます。次に支度金は昨日お渡ししたと伺っておりますが、

足りなくなった場合は言っていただけたら追加でお渡しいたします。」


お姫様の事だからギャーギャー喚くかと思ったが説明は淡々と進んでいった。

「あとは鎧ですが……」

鎧?

「これなんていかがでしょう?」

お姫様が手を叩くと執事が鎧を運んで来た。


「マジか……」

全身真っ白だが光沢が凄いため光輝いて見える。ド派手にも程があるだろう。

「やはり勇者様ならこの位の物を着けるべきかと!」

興奮しながら喋り続ける。


「この鎧は状態異常耐性があり……」

スキルで無効化できる。


「防御力や魔法耐性にも優れ……」

パラメータは上限みたいだから関係ない。


「更に見た目も神々しく……」

眩しいだけだな。


「勇者様に相応しい逸品かと!いかがでしょう!?」

「いらん。」


呆けた顔をされてもな。そんなにショックか?

「な、何故です?何かご不満でも!?」

「眩しい、似合わない、悪目立ちする。」

「そんなことはありません!凄くお似合いです!」

昨日と態度が違いすぎないか?


そういえば"娘は惚れてる"とか言ってたな。

……どうするか。好意はありがたいが、さすがにな。

「鎧なんか着けると動きづらいから服でいい。」

「でしたら今すぐ王族専用の仕立て屋でさい「そんな物より他に頼みが

あるんだが。」……頼み、ですか?」


「まずは魔法はどうやったら使えるか知りたい。」

「魔法でしたら、素質がある人が使いたいと思えば、その人の精神力を

越えずに使える魔法が呪文とともに頭に浮かびますわ。」


精神力とはMPでいいのか?そんな楽でいいのか?

「簡単じゃないか?」

「簡単だから広まりやすかったんですよ。」

そんなに広まってるものとは知らなかったがそんなもんか。


「次に文字を読み書きできる本、絵と文字が書いてあるような

ヤツが欲しいな。」

「読み書き……できないのですか?」

お姫様は少し考えてモジモジして、

「その、読み書きならぶ、文通などいかがでしょう?」

「面倒くさい。」


こっちを見て泣きそうになるな。こうも態度が違うと調子が狂う。

「さすがに時間が掛かり過ぎるだろ。字を覚えたらまぁ、気が向いた

時にでも手紙を出してやる。」

「お待ちしてますわ!では読み書き用の本も後で用意させます!」

非常に疲れる。


「とりあえずはそれだけ聞けば大丈夫か、あとは何とかなるだろ。

で、魔王のところにはどうやって行けばいい?」

「さぁ?居場所が分かりませんので。」


「……それでよくもまぁ魔王が復活しただの分かったな。」

ストレスが溜まってくる。


「レリア殿の予言ですわ。それに合わせて魔物の動きが活発化したようですし、

おそらくは合っているかと。」

行き当たりばったりかよ。

「お父様からは、いろんなところを旅して情報を集めながら

ご自身で判断して欲しいとの事です。」



やるとは言ったが、先行き不安にも程がある。

「まぁいい、じゃあそろそろ行くぞ。」

「またいらしてくださいますよね…?」

「すぐとはいかないだろうがな。またな。」


そう言って外に歩き出した。

さて、これからどこに行こうか。


―― なんせ自由なんだしな。

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