第十四話 出立前日の夜
脳筋は一度追い払って、俺は宿に帰ってきた。
いろいろ試してから今日の収穫やらをまとめた。
まず、貨幣について
金、銀、銅貨があり、それぞれ100あれば一つ上の通貨になるらしい。
つまり100銅貨で1銀貨、100銀貨で1金貨
日本だと1円、100円、10000円しかないような感じだ。
物の値段についても日用品や食材など見たことあるようなものは
似たような価格だった。
次に文字について
やっぱり読めなかった。
これについてはもう勉強するしかないが、
本でも借りるべきか?
脳筋が
「文字なら私も読み書きできるので、お教えしましょうか?」
と言われたので断った。誤字だらけだろ多分。
最後にスキル
【神託】を覚えたので占い師がやったように自分に手を当てて集中してみた。
すると目の前に習得できるスキル一覧という画面が出てきた。
「通常スキルとユニークスキルが出て消費SPが載っているのか。」
一覧を見て気付いた事。
【祝福】は勇者を作成するためにあるようなスキルだという事だ。
昨日の夜や今日の昼間に街の人を見て回った際、一般人はLv1~3が
多かったが、兵士ですらLv11~13程度だった。
それに対して【祝福】の消費SPは15。
Lvが1上がるごとにSPが1上がるとしたらLv15まで何も習得せず、
ひたすら訓練のみでLv上げしないといけない。
しかも、その状態でやたら強い敵に殺されないと意味がないという。
また、占い師の男の口調から詳しい効果はハッキリと分かって
いないようだった。
おそらくは何らかの偶然で【祝福】を覚えた人間が強い魔物に倒されて
特殊能力を得た結果が勇者という事なのだろう。
しかも消費SPが30と高かったから、多分ドラゴンから得たと思われる
【即死無効】。
ドラゴンがそのユニークスキルを持っていたのであれば、その効力を
打ち消してまで倒せるんだから間違いないんじゃないかな?
仮説を立てながら一覧を見ていくが、使えなさそうなスキルが多かったりする。
【状態異常付与】
攻撃した際に敵に状態異常を与えます。ただし5%の確率で
味方も状態異常になります。
【部位破壊】
敵の装備を壊した際、1%の確率で他の装備を一つだけ消滅させます。
【浮遊】
空中に浮いた状態になります。
……浮遊とか覚えたら降りられるんだろうか?
とりあえず今日は寝よう。
そうして眠りに付いた。
~王の寝室にて~
「誰だ?」
「レリアです。」
窓から女……レリアが入ってくる。
「そんなところから入ってくるのはお前ぐらいしかいないから
分かってはいたがな。で?」
王が話を促す。
「勇者殿はどうだったか気になりまして。」
「強さは尋常ではないな。頭の出来もまぁ言葉遊びができる位には、
というところか」
レリアを見つめて
「そっちは後片付けが終わったところか。」
「えぇ誰かがドラゴンを召喚しろと無茶を言いましたからね。」
「ハッハッハッ!しょうがないだろう、お前の本当の予言は
東の洞窟にドラゴンが現れる時、黒目黒髪の男がそれを打ち倒し勇者になる。
だったからな。」
レリアはため息をつきながら、
「それで召喚させた…と。しかも皆には偽の予言を言うように指示してきて
さらに娘まで向かわせる始末…何がしたいのか。」
「召喚させたのは勇者殿を国で庇護したかったから、娘を向かわせたのは
もし女で釣れるならと思ったから。一応は顔も整っている部類だしな。
偽の予言はドラゴンがいると知らなかったら娘も行かなかったろうからな。」
呆れたように
「もし死んでたらどうされたのです?」
と質問すると、
「お前の占いは外れたのを見た事が無い。お前が打ち倒されると言った以上
そうなんだろ?」
そして、王の目が少しだけ鋭くなり
「お互い、腹を探られたくない者同士ここら辺にしておいた方が
いいんじゃないか?」
「……そうですね、ではこれで。」
窓からレリアが去っていった。
「私はこの国を少しだけ豊かにしたいだけだよ……」
そう言って水を飲み眠りに付いた。




