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おかえり  作者: スタンドライト
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依頼

 鬼人を監視する体制を作る為にミサキはあっさりとテツヤとコズエに事の詳細を話した。二人は最初驚いたが、それでもテツヤはマコト達の大冒険に対抗心を持ったからなのか、それとも鬼人を捕獲したという事実に一枚かみたかったからなのかは分からないが、思いの外直ぐにそれにのっかった。

逆にコズエの方は元々根がまじめなせいか鬼人を役場、村長、祈祷師対して秘密にしておく事を躊躇った。

もし逃げだしたらどうするの? 誰かが鬼人の被害にあったらどう責任取るの? もしばれたらどうするの? バレたら私達の処罰は一体どうなるの?

しかしミサキには分かっていたのだろう。コズエの心根が本当はそこまで強くないと言う事を。本物の真面目では無いと言う事を。結果的にミサキの放った最後の言葉がコズエにとどめを指していた。

「もうあんたも同罪だから」

コズエの身の潔白等たかが知れた事実だったのだ。

「ある事無い事言ってコズエを貶めるなんて簡単なんだからね」

いつもの事と言えばいつもの事だったのかもしれないが、それが今後どのような結果に結び付くのか分からないマコトにしてみれば本当に大丈夫なのだろうかと言う不安は確かにあった。

結局の所コズエもミサキの考える案の一員として、鬼人の監視員の任を仰せつかる事になった。コズエにとっては不満な事でしか無かったのかもしれないが、それは同時にマコトにしてみればアンラッキーな事でもあった。鬼人を連れて、しかも誰にも報告もせず黙って村に入れた事は少なからず懲罰ものになる事は分かっていた。

例え今から鬼人を村役場につきだそうともそれは免れる事が出来ないだろう。マコト達は警察組織も無ければ、司法システムもない村の中で重罪人として裁かれるに違いない。

それこそ規律と今後の村の統率の為に捌かれてしまう可能性だってあるのかもしれない。使えないからという理由で、擬人病でもない老人達を切り捨てている村に対してそのような考えが生まれるのは当然の事だった。

だからこそマコトは日を追う毎に鬼人をどうしようではなく、見つかったらどうしよう、へと、そして見つからない為にはどうしようと言う考え方へと思考を移行していた。正にそれはコズエの考え方と、感じ方と少し似ていたのかもしれない。

タケユキとテツヤが水と油、火と氷を連想させるようにその根っこがどこか似ているのと一緒で、マコトとコズエもどこか似ている所があった。もっとも、タケユキとテツヤが絶対に相容れないと言う意味で共通項を見いだしているのに対して、マコトとコズエは相入れる部分が多々あると言う意味にあっての似ているだったのだが、それはもう関係なかった。なにしろマコト自身、鬼人をかくまう事によって見いだす事の出来ている、自分にとってのメリットを感じいたからだ。

カツラギに関しての情報はすぐに手に入れる事が出来た。三日後の鳥が鳴く日、夕方の五時に集会が開かれるからその直後を狙って突撃し交渉をしようという算段らしい。

正直な所マコトは期待と落胆、その両方を抱いていた。

一つは既にいなくなってしまった祖父、トミジに対しての落胆だ。村の掟なのだから仕方がないと、そう考えて自分を納得させて来た筈だったのに、それが意図も簡単に切り崩されてしまった事に対しての落胆がマコトの心を重たくさせていた。

マコトにとって村の掟は、風習は絶対だった。それは逆らう事はおろか疑問さえ口に出してはいけない、生活をして行く上で守らなければいけないルールだと思っていた。いや、思わされていた。

幼年期過ごした寺子屋で教え込まれたのは集団生活における規律と自我の抑え込みだった。

私達はいま戦いのさなかだ。誰かがワガママを言えばそれはみんなの迷惑になるだろう。

各年代で教鞭を振るっていた先生達はこぞってそれを教え、十ニから担当となった戦闘教官からは個を捨て、我を投げてしまえとさえ言われた。

だが実際はそうじゃなかった。それをしなくても良い選択肢があった事、選び取る事が出来る事をマコトは初めて知ったのだ。

周りを見渡せばすぐ傍にいたその事実に、マコトは落胆と、そして淡い希望を抱いていた。

カツラギに会えばもしかしたら祖父を施設から戻す事が出来るのではないか。

これは仕方のない事なんだ。

トミジはそう言って施設へと向かって、魂送りの儀の犠牲者となった。彼もまた村の礎の為の生贄となったのだろう。納得してでは無い。我慢してだ。

それがどうしても許せなくて、我慢が出来なくて、そして悩ましかった。

カツラギにあったら何を話そう? 何を聞こう? どうしてもらおう? 

欲を言えばなんとかしてくださいと、額を地面にこすりつけて言いたい気分だった。しかしそれをした所で何もならない事は分かっていた。結局はカツラギだってただの人間なのだから、不可能なことだってある。しかしそれと同時にカツラギはその不可能な事を、不可能だろうと思われている事をやろうとしているのだ。魂送りの儀の廃止。擬人病患者の意場所の確保。そしてその治療。

もう七十七歳になると言うのに、その身体とは反比例したエネルギーにマコトは触れてみたいと思っていたのかもしれない。自分の胸の中にあるちくちくとした様々な想いを一蹴して欲しい、そう思っていたのかもしれない。

正直な所、マコトがカツラギに対して抱いていた想いは期待と落胆だけではなく、それ以上の物だった。願い。それを、マコトはカツラギに対して投射していたのだ。

鳥の日までの三日間はあっという間だった。鬼人の監視にも各々慣れ、餌さえ食べずに生きな長らえられている生命力に日々脅威を覚えながら、その日を迎えた。

ミサキ達にとってそれは鬼人の弱点を、秘密を探る事務的な協力依頼でしか無かった。しかしマコトにしてみたらこれは自分の願いを想いに託した、希望を見いだそうとした接見でもあったのだ。

何でもいいから何かを見いだしたい。

マコトの想いが願いとなり、希望が落胆へと変わるのか、将来の期待へと変わるのかは分からなかったが、とにかく、マコトは鳥の日を迎える事となった。

たかだか二十人ばかりしか集まらなかった集会の会場を出たカツラギを追って、マコト達はその老人にアタックをするのだった。



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