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特急便

「おばちゃん。ありがとうございました。」


 僕はそう言って頭を下げた。朝ごはんまでご馳走してもらって、弁当まで作ってくれたのを見れば、ありがとうという言葉しか出てこない。


「いいんだよ。あんたも元気でね。あんたが両親と会える事を願っているよ。」


 僕は手を振って町を出た。なんとなく、何もないが人情にあふれるいい町だったと思う。



 町を出た僕は町からだいぶ離れた森の中にいた。勿論、エルドラドを召喚するためである。エルドラドの召喚には膨大な魔力が必要となる。それも、一般人では一生分の魔力を使い切っても足りないほどの魔力をである。なにより、異常なほどの量の魔力を持つ僕ですらキツイのだから、エルドラドを召喚できるような人間などいるのだろうか。


「我、エリュクトの名において命ず。盟約において我に力を与えよ。白龍『エルドラド』」


『随分短かったな。休めたのか?』


 心配してくる龍というのも面白いなと思うが、当たり前のように僕を心配してくれるのがとても嬉しくもある。


「あぁ、割とゆっくり休んだよ。」


『では、参るか?』


 僕がエルドラドの背中に飛び乗ると、勢いよくエルドラドが空へと舞い上がる。

 多分、今日で王都には着くと思う。その時はエルドラドにお礼を言わなければいけないなと思う。


『エリュクト、我は幸せだと思うぞ。お前と出会うことができてよかった。』


 なんて事を言ってくれるんだこの龍は。まるで僕が口説かれてるみたいではないか。


「何言ってるの。助けてもらっているのはいつも僕じゃないか。」


『お主と会えなければ、私は孤独であっただろう。お主がいるからこそ、我は自分を認めることができるのだ。』


 そういえば、僕とエルドラドが出会った時には、エルドラドにはここまでの覇気はなかった気がする。古龍のような落ち着きと若い竜が持つ鱗のテカリ、何とも言えないアンバランスな存在だったのだ。


『世界とは広いものだ。しかし、我一人では、そんなことも気づけなかった。お主が世界を見せてくれたのだ。』


 エルドラド程の存在になれば、この世界を一周するのですら、数日で終わる。戦っても負けることなどないだろう。そもそも、格を考えれば、千年単位の古龍ですらエルドラドに勝てるものは少ない。そう考えれば、こいつもかわいそうな奴だったんだと思う。


「そんなことないよ。エルドラドなら、いつか気づくことができたよ。」


『そんなことはないのだ。実はお主と会った時はもう死のうと考えていたのだ。その最後の腹ごしらえに極上の魔力を食べようとお主のところへ向かったのだ。まぁ、見事に負けてしまったがな。』


 死のうとしていたなんて予想外だった。


「勝ててよかったよ。君に出会えてよかった。」


『ふふ、ありがとう。近くでよいのだったな。ついたぞ。』


 エルドラドが地面へと降りていく。見る人が見れば稲妻のように見えるだろうなと少しばかり考えてしまった。


『エリュクト、また我を呼べ。どこへでも連れて行ってやろう。』


 エルドラドは恥ずかしかったのか、それだけを言うと、勝手に消えていった。


「またね、エルドラド。」



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