ウィルリアの真実
「ウィルリア、入るぞ。ユーリアと客人も一緒だ。」
「ヴィル、どうぞ入って貰って下さい。」
ヴィルがガチャリと音を立てて中へと入って行った。
続いてエリュクトも中へと入った。
「失礼します、貴方が、ヴィルさんの奥方ですか?私はエリュクト・プロシオンです。お初にお目にかかります。」
そう言ってエリュクトが一礼したのを見て、ウィルリアが目を丸くした。
「え、えぇ。このような格好で申し訳無いのだけれど、調子が良くないものですから…。」
ウィルリアの言葉に真剣な顔でエリュクトが頷く。
「はい、ヴィルさんから伺っています。」
「で、エリュクト、お前はどうするんだ?」
ユーリアを降ろしたヴィルがポンとエリュクトの肩を叩く。
「えっと、失礼かとは思いますが、触診、させて貰ってもいいですか?魔力炉の調子がおかしいようなのは、見てわかるのですが、どのような症状かは魔力炉を確認して見なければ、わからないんですが…。」
触診などと、下卑た男が言えば、ヴィルにぶっとばされるだろうが、言ったのはまだ少年の域を脱すことができないエリュクトである。
「構わないが、どうして断る?触診なんて、医者がみんなするだろうが。」
「えぇーっと、魔力炉がどこにあるか知ってますか?」
ヴィルが疑問そうな顔をしていた。
その反面、ウィルリアは気付いたようだ。
「胸、心臓の辺りですよね?」
ウィルリアのその一言にヴィルも納得したようだ。
「そうです。そして、魔力炉を確認しよわうと思ったら、胸元をまさぐることになります…。それでも構わないかと聞きたかったんです…。」
「ウィルリア、どうする?」
ヴァンがウィルリアへと問うた。
「ヴィル、貴方も流石にこんな子供に嫉妬や不快感など感じないでしょう?それに、魔力炉がおかしいのは私も薄々気付いていました。むしろ、今までに来た医者が魔力炉について何も言わないのが不思議だったのです。ならば、気付いた少年に任せるべきでしょう?」
「そうだな。なら、エリュクト、頼む。」
大きくエリュクトが頷いた。
「わかりました。任せて下さい。後、できればヴィルさんとユーリアさんにここから離れていただきたいのです。魔力炉を地の繋がらない人間が触るという行為は、途轍もない痛みを伴います。その光景はとてもではありませんが、ユーリアさんのような子供に見せられる光景ではありません。」
そう、魔力炉は人間の最も弱い部分と言っても過言ではない。しかも本来、外部からでは干渉することは出来ない。
そこに干渉しようとするならば、外部の膜を魔力でこじ開けて中に干渉するしかない。それは、麻酔なしで腹を切り腹の中を弄るのと同じような意味をもつのだ。
「わかった。なら、頼む。」
ヴィルは渋々ながらも頷いた。