逃亡
「お頭ァ!ガキどもが逃げやした!」
俺は盗賊だった。
間違っても貴族様の下で働くような軟弱者ではなかった。
しかし、俺は道を踏み外してしまった。
いつからだろう?
弱者を助けなくなったのは。
いつからだろう?
権力者に媚びへつらうようになったのは。
「何人だ?」
この頭の悪そうな部下も、俺が盗賊の時に連れていた仲間の一人だ。殆どの部下は一月もしないうちに俺に愛想を尽かした。
「全員です!」
「は、はぁ?全員?」
俺は思わず、素っ頓狂な声を上げてしまった。
あれだけの警備の中を100人以上のガキを連れて逃げるなんて、不可能のハズだ。
「へい。警備も、全員眠らされていました。」
警備の中にはBランクの冒険者もいたのだ。
なのに、警備を破られるということは、相手は少なくともBランク以上の相手ということになる。
そんな事を考えていた俺は、いきなり感じた殺気に思わず体が動く。
俺に向けられているナイフを腕ごと掴んで引き寄せ、腕を抱きながら、肩に手の平を強く当てる。これで、肩が外れているはずだ。
カランと音を立てて、ナイフが落ちる頃には、俺は殺気を放ったヤツを地面へと倒し、押さえつけていた。
「なんのつもりだ?」
俺についてきた数少ない部下の1人が、俺に反旗を翻してやがった。
「へ、へへ。オイラじゃ、アンタは殺せねぇよなぁ。お頭、言っておくがアンタはもう、用済みらしいぜ。だから、消すように言われてる。オイラが失敗したのがわかったら、次は殺し屋を雇うはずだ。」
言い終わるのとほぼ同時に、ドォンと大きな音がなる。俺は首を絞めて、意識を失わせてから窓から外を見た。
見れば、屋敷は炎に包まれていた。
ふと、視界の隅を走るガキを見つけた。
一人、二人、三人と次々とガキが走っていくのだ。
俺は窓から飛び降りて、地面に足を着く。
二階くらいからなら、勢いを殺さずともそれほど問題はない。
ふと、一人だけ俺を見つめているガキを見つけた。
そのガキは気付いた瞬間には駆け出しており、あっという間に俺の目の前まで来ていた。
「何か、御用ですか?」
いつの間にやら、首に剣を当てられていた。
冷たい目をしたガキは、平然と俺の命を奪おうとしていた。
「んーや。俺も貴族連中に追われる身になったんでな。丁度いいし、逃げようと思ってたところだ。」
冗談交じりにそう呟いた俺を見たガキは、何を思ったのか剣を首からよけた。
俺の言ったことを信用したのだろうか?
「貴方は信用できる。そう思います。だから、ここは見逃す事にします。」
それだけ言って去っていこうとするガキに、俺は聞かなければならない事を聞いていない事に気付いた。
「おい、ガキ。テメェの名前は?」
「エリュクト。エリュクト・プロシオンです。貴方の名前は?」
「ケイズ・ミーリン。いつか、テメェに借りを返しに行く。だから、無茶して死ぬんじゃねぇぞ。」
ニコリとエリュクトは笑みを浮かべるとガキどもに合流する為に走り出した。
なんと、50話まで来ました…。
ホントは、さっさと終わらせようとおもっていたのですが…。
それと、遅くなってごめんなさい。
引っ越しとかをしていたら、時間がなくて…。




