ユーリアとの出会い
「ところで、身分証なんて持ってないよな?」
エリュクトが首を傾げた。
その行動にヴィルは一つため息をついてから、門番の元へと歩を進める。
「やっぱり、か。まぁ、冒険者ギルドに入れば、なんとかなるだろ。とりあえず、身分証無しで入るのは少しばかり金がかかるけど、俺がなんとかするから、後で登録しに行こう。」
「あれ、ヴィルさんじゃないですか。今日は随分とお早いお帰りですね。奥さんが恋しくなりました?」
顔を出した衛兵がニヤニヤと笑っていた。
ヴィルは首のチェーンについているカードをチェーンごと渡す。
「ん?あぁ、ふと妻に会いたくなったんだ。ははは。後、後ろの少年は身分証を持っていないらしい、俺が金を払うから中に入れてくれ。」
ヴィルはが出したカードを手元の球体にかざしてから、衛兵がヴィルにカードを返す。
「んー、はい。まぁ、通行料の倍払えば街の規則で入れるんですから、普通に払っていただければ入れますよ。」
そう言って衛兵は手を伸ばす。
ヴィルは、衛兵の手の上にお金を置いた。
「毎度っす。」
笑いながら手を振っている衛兵に軽く礼をしながら、ヴィルとエリュクトは冒険者ギルドへと向かっていた。
ヴィルは戻ってきた事を報告しなければならないし、エリュクトもギルドに登録しなければいけない。
表通りの大きな建物の前で、二人は歩を止めた。
ここが、いわゆる冒険者ギルドというものらしい。
中に入ると、ズラリと並んだ掲示板があり、奥には、個別に話せる受付がある。
その更に奥には、軽く食事が出来る休憩所のようなものがあった。
ヴィルはまっすぐに一番混んでいる受付の列へと並んだ。
「受付には、何人かいるだが…。この列の奴が一番可愛いんだよ。」
可愛いというだけでこの列に並んだのかと、エリュクトは驚愕したが、男ならばその様なモノだと納得した。
数分経って、受付嬢と相対する事になった。
ニコニコと笑っているその姿に、確かにこれは可愛らしいと思う。
金髪は、腰ほどまで伸びているだろうか?
あまり大きいとは言えない胸…、辺りまで見たところで、再度、受付嬢と目を合わす。
「あれ?ヴィルさん、どうしたんですか?」
受付嬢はエリュクトを無視して、ヴィルへと話しかける。
「ん?あぁ…。コイツを冒険者として登録して欲しいんだよ。」
ヴィルが、エリュクトの頭をぽんぽんと叩く。
受付嬢は後ろにあった球を、エリュクトの前に置いた。
「わかりました。では、情報を登録するので、この球に手を触れてもらえます?それだけで、名前とか登録できるので。」
エリュクトが手を触れるが、特に何も起こらない。
受付嬢は、その球にカードをかざすと、そのまま、そのカードをエリュクトへと渡す。
「これで、登録終了です。このカードは無くさないで下さいね。それで、ヴィルさんは何か御用ですか?」
受付嬢がエリュクトへと向けていた笑顔よりも、可愛らしい笑顔をヴィルへと向ける。
「ちょっと、帰還報告しに来ただけだ。」
それだけで、ヴィルとエリュクトは冒険者ギルドを後にした。
すぐにヴィルの家だと言うところに着いた。
「デカイ、ですね。他の家と比べても、倍以上ありますよね…。」
「ん、あぁ。昔はそこそこ凄かったんだよ、これでも。今では落ちぶれちまったけどな。」
ヴィルは平然とドアを開ける。
「ウィルリア!ユーリア!今帰った!」
10代前半の少女がちょこちょこと走ってくる。
「父様!今日はお早いお帰りなのですね!」
そして、少女は可愛らしく首を傾げた。
「父様?後ろの方はどなたですか?」
はははと笑いながら、ヴィルは少女を抱き上げた。
「ユーリア、ただいま。後ろの人は暫くウチに泊まることになっているんだ。さて、ウィルリアに会いに行こうか。」
ヴィルは、ユーリアを抱き上げたまま、中へと入って行った。
「ヴィルさん!僕はどうすれば?」
「ん?まずは妻に会うのだろう?なら、着いてくるといい。」
エリュクトは、走ってヴィルに並んだ。