人攫い
「エリュクト兄さん。少し、気になる事を聞いたのですが…。」
エルとサウザス子爵と共に食事を終えた僕は部屋のベッドに身を投げ出していた。
何をする必要もなかったとはいえ、僕は何もする事が出来なかった。
貴族同士の話に僕はどうする事も出来ないのだ。
「どうかしたの?」
僕は目に腕を押し付け、身をベッドに投げ出した状態のまま、フォーアの言葉に答える。
なんだか、どうしようもなく疲れたのだ。
「最近、人攫いが多いそうなんです。この街に人が来なくなると困るらしいので、領主が隠蔽しながら私兵に捜査をさせているそうですが、人攫いは減っていないらしいんです。」
僕は起き上がって、ベッドに胡座をかいた。
人攫いとは中々問題だ。
それが事実ならば、エリスやフォーア、フィリスに外出を控えさせなければならない。
「ふむ。確かなの?」
「はい。後、噂になっているらしいんですが…。攫われた人達は、奴隷にされてるんじゃないかって。」
奴隷とは、また難儀な問題が出てきた。
先日、強制的に一番の問題を叩き潰したとはいえ、簡単に奴隷がなくなるはずがない。
それに、元々は国が黙認していた問題なのだから。
「わかった。少し、僕が調べておくよ。だから、フォーアも十分に気をつけて。あ、後、行動するときは僕やエルと一緒に行動するようにしてね。」
ただの人攫いならまだいい。
貴族の、例えばここの領主が黙認しているのならば…。
「フォーア、エリス達の部屋に行って、外出を控えるように伝えてきて。僕は少し、調べものをしてくる。」
僕はそれだけ言うと、部屋を後にした。
疲れているとはいえ、早めに動かなければ最悪の状況になりかねないのだ。
「お出かけですか?」
フロントの係員が宿を出ようとしている僕に声をかけてくる。
「ええ。少し用事がありまして。」
「では、お気をつけて。…そういえば、外では人がいなくなる事があるらしいです。」
やはり、宿をやっている以上、こういう情報は掴んでいるようだ。
「ありがとうございます。気をつけますね。」




