外伝 ゼズ編3
俺からのクリスマスプレゼントのつもりで書きました。
楽しんでいただけたら幸いです。
俺は、必死に剣を振るっていた。
目の前に立つ、Sランクモンスター、フェンリルに何度剣を叩きつけても、擦り傷一つつかない。
後ろでは、魔法の詠唱をするミーアの姿がある。
俺はミーアを詠唱に集中させるために、必死に剣を振るが、全く傷をつけられない。
「ゼズ!避けて!」
ミーアからの合図で、横に避ける。
すぐに、10本程度の氷柱がフェンリルにぶつかるが、簡単に砕け散る。
そもそも、SランクモンスターにAランカーとBランカーの二人で挑むコト自体が無茶なのだ。
しかし、死にたくなどないので、必死に剣を振るうが、死を少しばかり遠ざけるくらいの意味しか持たない。
俺が必死に斬りかかっていた右足が素早く動き、俺を蹴飛ばす。
俺はそのまま木に叩きつけられる。
のそりのそりと、ミーアに近付いて行くフェンリルの姿に、俺は必死に身体を起こそうとする。
しかし、体には力が入らない。
「ミ…、ミーアァアアア!」
フェンリルが、ミーアを左足で払おうとする。
その時点で、俺は目を瞑ってしまった。
悔しかった。
共に旅をしてきた日々を思い出して、悔しさで一杯になる。
しかし、聞こえるはずのミーアの声は届かず、ゆっくりと目を開ける。
ミーアは、確かに立っていた。
フェンリルの左足を抑える剣聖の姿。
「全く、なってないねぇ。剣は気まぐれなんだ。だから、剣が斬りたい時に斬りたい場所を斬ってあげないと。だから君はコイツを斬れないんだよ。」
呟いたはずなのに、剣聖の声は不思議と聞こえた。
数メートル離れているにも関わらずだ。
「大丈夫かい?全く、君も無茶をするねぇ。君では全く歯が立たないだろうに。」
すぐそばには、綺麗なエルフの女性が立っていた。
そっと、俺の体に触れて囁く。
『我が望む。此の者の体を癒し賜え。』
精霊魔法だろうか?
俺の体が不思議と軽くなる。
「さて、トドメは君が差すんだよ?私は君を万全の状態にした。アイツは君の大切な仲間を守った。君が守れなかったあの子をだ。悔しくないかい?悔しいだろう?なら、立ってあの魔物を斬ってみせな。」
俺の腕を掴んで強制的に立たせたその女性は、俺の背中をバシン!と叩く。
俺はその勢いのまま、数メートルを駆ける。
俺の相棒を片手に一気にフェンリルに近寄った。
何も考えずに振るった剣は、左足を斬り裂いた。
そのまま、フェンリルの真下を通り抜ける。
真後ろに行った時点で急ブレーキをかけ、体の回転を使ってフェンリルの左後ろ足を斬る。
今度は骨を半ばまで斬り裂いていた。
俺はフェンリルの足を蹴り、フェンリルの体の上に立つ。
フェンリルの背中に思い切り剣を突き刺し、お尻から頭の方まで走る。
俺にフェンリルの身体から少し遅れて血が吹き出る。
頭まで行った俺は、思い切り切り上げてその勢いで身体を反転させる。
しかし、走った勢いは消えるはずもなく、フェンリルの目前へと落ちて行く。
俺は、俺に噛みつこうとするフェンリルの頭を真っ二つに斬り裂いた。
ドサリと地面に落ちた俺に、剣聖が言う。
「ほらね?剣の声を聞いたら、斬れたでしょ?」
だから剣聖、意味がわかんねぇよ。
「少年、中々いいじゃないか。剣聖の言うコトは毎度よくわからんが…。まぁいい。眠れ、少年。次起きた時には、世界が変わっているはずだ。」
多分、回復してくれた女性だろう。
女性の優しい言葉に、俺は意識を手放す。
強かった。
硬かった。
そして、楽しかった。
ちなみに俺は、一人でホールケーキを一つとワインを一本飲むという、寂しいクリスマスを過ごしました。
皆さんのクリスマスが幸せなものであるコトを心から祈っています。
来年は彼女を作ってクリスマスデートをするとの誓いを立てて、最後に一言。
メリークリスマス。




