外伝 ゼズ編2
森に着いた俺たちは、余りにも広大な森に、山に驚きを隠せなかった。
すぐ手前の街で聞いた話では、ここに入る時は、一流の冒険者でも死を覚悟するという。
「こんなところに剣聖がいるのか。とても、人の住める土地とは思えないな。」
森に入ってから出会った魔獣は、Aランク以上ばかりだった。
ここで生きるのに、どれだけの魔獣を倒さねばならないのだろう。
というか、この森で野宿などしたくない。
「それでも、ガキがこん中から出てきたって話を聞いただろ?とても、事実とは思えねぇけどな。てか、そのガキって、もしかすると、エリュクトじゃねぇの?」
森の中では方向感覚が狂うという。
余りにも木々が生い茂っていて、空もチラリとしか見えない。
エリュクトがここで生きていたというなら、あれ程強いのも納得だ。
もしかすると、剣聖と会ったコトもあるのかもしれない。
「おい、そこの二人。ここから出た方がいいよ。ここには、普通にSランクも出るしね。守ってあげるから、道を引き返そう。」
いきなり後ろから声をかけられる。
おかしい、俺もミーアも気付かなかった。
先程までなかった気配が溢れ出す。
圧倒的なまでに強者とわかる程の気配。
「まさか、貴方は、剣聖様ですか?」
その疑問の答えは、手に持っていた木剣の投擲だった。
フィンフィンと高い音を立てて、俺の真横を通り過ぎる。
「うん。僕は、過去に剣聖と呼ばれていたコトがあるよ。」
するすると、歩いてくる剣聖に俺達は動くコトすら出来なかった。
剣聖は俺達を通り過ぎ、木剣を拾いに行ったようだ。
「君達も運がないね。こんな魔獣と遭遇するなんて。さすがに、SSランクの魔獣なんて、ここでも中々出てこないのにさ。」
俺は恐る恐る、後ろを振り向く。
「ドラゴン…?」
そこには、巨体を横たえたドラゴンがいた。
これ程の大きさのドラゴンを俺は見たコトがなかった。
「そうだねー。ところで、君達は何をしに来たの?こんなところに好き好んで入ってくるバカはそうそういないと思うんだけど?」
これが、俺と剣聖の格の違いなのかとわからされた。
俺が全力で斬りつけても、決して刃を通さないであろう、ドラゴンを木剣の投擲で倒すなどという芸当。
「俺を、弟子にして下さい。」
いつの間にか、俺は頭を下げていた。
強くなりたい。
そう思ったから。
「僕はね、弟子は取らないコトにしたんだ。エリュクトよりも強い弟子なんて出来そうにないしね。僕は強いものと戦いたいんだ。必要なら育てるけど、僕はもう、僕より強いものを見つけてしまったからね。」
エリュクト…。
もしかして、俺が出会ったあの子供か。
「俺は、エリュクトに勝ちたいんです。俺を歯牙にも掛けずに倒して見せたアイツに一泡吹かせてやりたい。」
俺は地面に膝を付き、頭を地面に擦り付ける。
「へぇー、エリュクトを知ってるの?」
エリュクトは、剣聖に勝ったということだろうか?
しかし、そんなコトは関係ない。
俺を強くしてくれるのは、この人しかいないと感じたから。
「はい。強いヤツと戦いたい、その一心で鍛えた俺は同じ道場でも敵なしとなりました。調子こいていた俺の鼻っ柱を叩き折ったアイツに次こそは勝ちたい。負けて、悔しがりもせずに、のうのうと生きるなんて意味のないコトをしたくない。だから!」
剣聖は木剣を俺の眼前に突きつける。
「あのねぇ、強くなるのに必要なモノは三つだよ。大きい大きい夢。守るべき、いや、守りたいモノ。そして、たった一本の剣と健康な体。それだけ。」
俺は、立ち上がり剣を振る。
剣聖は一歩下がるだけで回避した。
更に踏み込んで、上段から下段に一気に振り抜く。
剣聖は一歩踏み込むだけで、剣を回避し、更に俺の首元に木剣を突きつける。
「うん、君はそこそこ強いね。でも、君には心に定めた、守るべきものがない。それを見つけたら、もう一度ここにおいで。その時は、僕が直々に鍛えてあげる。」
その音だけ残し、剣聖は姿を消した。
ドラゴンの姿もまた、なくなっていた。
評価ポイント100&ブックマーク数50記念。
というコトで、外伝を書きました。
ゼズは守るべきものを見つけられるのか。
剣聖の弟子となれるか。
外伝の次回を乞うご期待。




