フィリスの母
「お前舐めてんの?さっき、ウチの巫女だって言っただろ?そう簡単に出せるわけないじゃん。」
「巫女って言っても、私が半神だから巫女として立てているだけで、実質私にはなんの仕事もないじゃない。私がいなくなったところで、大きな問題はないはずよ。」
僕が旅に連れて行くと言うと、族長は僕に文句を言ってくるが、フィリスが対応していた。
「里のみんなにはどう説明する?フィリスをいざという時の頼りにしてる者もいる。」
「本来、私のような者はいませんでした。ならば、いなくとも変わりはないのではないですか?それに、私の力に頼っていては、私がいなくなった時にこの里は終わりますよ?」
半神だからと言っても、フィリスは何が出来るわけでもない。
神力は持っているだが、上手く制御が出来ない。
「ったく。口だけは回るようになったな。クソアマが。」
「大人になりましたからね。それに、貴方と話していると自然とこうなります。」
族長にも最初の頃の勢いはなかった。
族長はやれやれとため息をついて、手をしっしっと振る。
「もう、どこへでも連れて行きな。それとね、フィリス、帰ってこなくていいよ。それと、里の奴等には説明しとく。さっさと行きな。母親には挨拶くらいしてくんだよ。」
だるそうに寝転がり、起きようともしない族長。
「ありがとうごさいます。これだけは貴方に言っておきましょう。ありがとうごさいました。」
フィリスは礼をして、家を出て行った。
族長はフィリスの出て行った出口を呆然と見つめて一言。
「お礼を、言ったのかい?」
僕もまた、フィリスの後を追いかけた。
後ろから笑い声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
「フィリス!挨拶しにいくの?」
「勿論、母ですからね。それに、お世話になりましたから。」
足が長いからか、僕よりも歩みが速い。
僕は常に小走りしているようなものだった。
フィリスは、一つの家のドアを開けた。
母の家であろう。
「母さん、いる?」
フィリスが家の中に響き渡る声で母を呼ぶ。
「何かしら、フィリス。」
厨房の方からフィリスの母が出てくる。
昼食でも作っていたのだろう、香ばしいいい匂いがする。
「母さん、私、彼と旅に出るわ。」
完結に、ハッキリと伝える。
「フィリス、体は大丈夫なの?歩くのですら、貴方の体には負担がかかっていたわ。旅なんてしたら、体にどれだけの負担がかかるのか…。」
「大丈夫よ。姉さんが作ってくれた物があるから、ある程度、体への負担を減らせるわ。少しずつ訓練していけば、道具なしでも生活できるようになるはずよ。その為に旅にでるのよ。」
母が心配してくれているのが、伝わっているのだろう、フィリスは嬉しそうに笑う。
「そう…。大丈夫なのね?いつ、帰ってくるのかしら。」
さみしそうに笑っていた。
「生活をできるようになったら、帰ってくるわ。だから、それまでは、元気でいてね。」
「そう。なら、ご飯、食べて行きなさい。丁度、作り過ぎたかなと思っていたところなの。」




