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嘘つき

「アンタらは明日出て行くのね。ねぇ、アタシも連れてってくれない?」


フィアがベッドで衣服を脱いだ。

自分の身体を好きにして構わないというコトだろうか。

どいつもこいつも、僕が子供であるコトを忘れていないか?


「嘘つきは連れて行けない。君は嘘つきだ。真実を言えば、いつだって助けてもらえるかもしれないのに、真実を言おうとしない。そうやって、嘘をついて僕らを遠ざけて。」


フィアは、脱ぐのをやめる。


「どういうコト?」


「僕がこういうコトが嫌いなのを知っててやるのは、君が僕らを遠ざけたいからだろう?君は約束を破るつもりかい?君の父との約束、幸せに生きるってのを。」


その言葉にフィアが目を見開く。


「な、何言ってんの?そんなん知らないし。」


「少し、昔話をしようか。始まりは、素直な夫婦がいたところから始まる。」


とある場所に夫婦がいた。

夫婦は王都を出て、とある街で自分達の家を構えることにした。

二人は最初に入ったお店で、商品を壊してしまい、多額の借金を払うコトになった。

商品とはただの水晶で、壊したところで大銅貨1枚分の価値もないものだった。

しかし、商人はそれを金貨80枚の魔法の籠った水晶だと騙したんだ。

それを素直な夫婦は信じてしまった。

それから、二人は死に物狂いで働いて返した。

ある時、後金貨1枚までなったという。

二人は、金貨10枚を手にしていた。

その後、美味しいものを買い、家の壊れた物を新調しようとしていたのだ。

しかし、借金を返しに行くと、そこには痩せ細った少女と一緒にいつもの商人が立っていた。

少女は、衰弱しており、意識が朦朧としていた様子だった。

商人はその少女を金貨10枚で売ると夫婦に言った。

商人は二人が金貨を10枚持っているコトを知っていたのだ。

夫婦はその少女を可哀想だと思い、買うコトにした。

少女を連れて帰り、ご飯を食べさせ、世話をした。

後金貨1枚、二人で返そうと働きながら。

そんな中、女性は無理が祟って亡くなってしまった。

男性は少女を娘として扱い、男性もまた、無理が祟って亡くなってしまった。

男性は最後に少女に言った。


「幸せになって欲しい。君には普通に幸せになって欲しい。そうよ。その少女はアタシよ。」


「少女は知っていた。自分の価値が金貨1枚まで下がっていたコトを。でも、言えなかったんだろ?金貨10枚で買ったコトを知ったのは、買われた後にその商人と会った時だから。違う?二人が死んだのは自分の責任だと思ってる。自分を買ったからだって。」


フィアの頬を涙が落ちる。


「あ、たしの、せき、にん、な、の!あたしが!いなかったら!二人、は、死ななかったかもしれないのに!」


だから、自分は幸せになってはならないのだと思っているのだ。

このバカは。


「だから、君が幸せになってはならない理由にはなってない。」


「な訳ないじゃない!パパとママは、あたしのせいで死んだの!あたしなんてクズを助けるために…」


しかし、その言葉を僕のビンタが遮る。

許すわけにはいかなかった。


「君は何もわかってない。何もわかってない!君の両親が、どんな気持ちで君を助けたかわからないのか!娘がいなかった二人は君を娘とした。その意味がわからないのか!二人は君が金貨10枚どころか、金貨1枚で売ろうとされていたコトを知っていた!それでも、君を買ったんだ!なぜだと思う?」


「知ってる、なんて…。嘘よ!そんなの、普通は買うわけがない!」


僕は下を向いてるフィアの顎を掴み、無理矢理僕を見させる。

フィアの目を見て僕は叫ぶ。


「君には金貨10枚以上の価値があると思ったからだ!金貨10枚なんていう金額は安過ぎると思うくらいに!だから、君のために二人は頑張ったんだ。娘として愛し、自分達の宝物を遺すコトで、君を愛していたことを証明するために!」


嘘つきは嫌いだ。

特に優しい嘘は嫌いだ。

愛してるなら愛してると言うべきだ。

言葉にしなければ、伝わりなどしないのだから。

助けて欲しいと叫んで欲しい。

ツライと叫んで欲しい。

じゃないと、助けられないじゃないか。


「フィア、出掛けよう。君の家へ。」


僕はフィアを横抱きにして窓に足をかける。


フィアの知らぬ真実を、伝えなければならない。

僕は知ってしまったのだから。


僕の足が一歩踏み出すたびに、前へと進む。

地面など蹴っていないのに。


「飛んで、る?」


「外で、涙に濡らした顔を晒したくはないだろう?」


泣き腫らした顔など、人に見せたくないだろう。


すぐに、フィアの家につく。

玄関から中へと入る。

フィアは下ろしてやらない。

書斎へと入り、とある本を奥に押す。

すると、本棚がズレて地下への道が見える。

中へと入って行けば、魔法を使っていないのに、キラキラと輝いていた。


一つ置いてある机へと向かう。

そこには、二つのリングがあった。


「これ…。」


そこにもう一つ、鍵が置いてある。

僕は、そっとフィアを下ろした。

そして、真ん中の鍵を手に取る。


「フィア、手を出して。」


フィアが素直に手を差し出す。

僕はフィアの手の上に鍵を置く。


「フィア、ここには君へのプレゼントが置いてある。鍵はそれに辿り着くために必要なもの。探してごらん。君なら見つけられる。君にしか見つけられないから。」


フィアはすぐに走り出す。

両親の寝室のライトの元に。


「これね、パパとママの宝物をなんだって。一回だけ、教えてくれたの。」


ライトには鍵穴があった。

挿してそっと回す。

キリキリと何かがまわった音がする。


チリチリと音がなり始める。


『聞いてる人へ。すまないが、フィアで無いなら、鍵を抜いてくれ。フィア以外はこれを聞いても意味はないと思う。』


そこで、一度声が止まる。


『抜かないということは、フィアなのだろう。これは、一度しか再生できない。一度しか言わないから、キチンと聞くように。フィア、フィアは幸せになれたかい?僕達は君を幸せにしたかった。でも、僕達の寿命は君を幸せにするには足りないようだ。君は気にしていたようだが、僕達は君が金貨1枚で売られていたことは知っていたんだ。でもね、君の人生を買うのに、金貨10枚は安過ぎる。それでは僕達の一人勝ちじゃないか。僕達はね、楽しかったんだ。君を幸せにするために何かをするってのは、僕達のたった一つの楽しみだったんだ。君は僕達を素直だと言ったね。しかし、一番素直なのは君なんだよ、フィア。どうせ、素直な君のコトだ。自分のせいだとか言って、幸せになろうとなんてしていないのだろう。君は今でも自分のコトを責めているんだろう?責めるのは違うよ。僕達に罪悪感なんて抱かなくてもいい。君が幸せになれないのは、僕達のせいなんだ。そんな安価で買ったにも関わらず、君を幸せにできなかったんだから。もう、誰かが気付かせた後かもしれないが、責めてると思って言わせてもうよ。僕達を幸せにしたいなら、君が幸せになってくれ。君がいい人生だと思いながら僕達の元へとくるコトを待っているよ。天国でずっと待っている。君の人生がいかに楽しかったのか、楽しげに話す君をいつまでも待ってる。でも、すぐに来ちゃダメだよ?僕達は君がとてもとても遅く来る方が嬉しいんだから。長生きして。幸せになって。フィア、愛している。幸せにならずにこっちに来たら、ゲンコツをしよう。怒鳴りつけよう。そういえば、君を怒鳴ったり、ゲンコツしたりはしたコトがなかったね。ゲンコツは痛いぞ。僕は怒鳴ると恐いんだ。だから、だから、さ。幸せに、なってくれ。それと、僕達の元へ来てくれてありがとう。愛してる。あれ、もう時間か、足りな…。』


そこまでで、ブチリと音が切れた。

どうやら、終わったらしい。

僕は、そっとフィアを撫でる。

それから、ゴツンとゲンコツをする。


「これは、君のお父さんの代わり。今まで幸せにしなかった分、僕が叱ってあげる。だから、君は幸せにならなきゃいけない。さて、君は何をして欲しい?正直に言って。君が幸せになるために、力を貸そう。」


これで、助けてと言ってくれるだろうか?

僕に助けさせてくれるだろうか。


「助けて。助けて下さい。幸せになりなりたいです。」


「わかった。任せて。」


僕は立ち上がる。

リング二つをフィアに手渡し、僕は部屋から出る。


「さて、こんなに激怒したのは久し振りだ。始めよう。僕を怒らせた以上、タダでは済まさないよ、バーバラ商会。」

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