初めて
「ふぅ、森から出るのも、一苦労だね。こんなに大変なら、ママと姉さんにもついて来て貰えば良かったかな…。」
少年は、たった一人で森の中を進んでいた。
腰には50cm程の乳白色に透けている美しい剣がさげられていた。
肩にはとても森を抜ける道具とは思えないほどの小さな荷物が一つ。
時折、腰に下げた剣で自分の道のりを邪魔する枝を払いながら高速で突き進んで行く。
「いやいや、こんな事で弱気になってどうする。こんな体たらくでは、涙ながらに僕を送ってくれた姉さん達に申し訳が立たない。」
そう呟いている少年の歩みは少しも遅くなっていない。
「というか、この森はどこまで続くのだろう…。」
足場が悪い中を半日程歩いているにも関わらず、少しも疲れが見えない辺り、少年の体力は化け物じみているのだろう。
魔獣なども時折姿を見せるが、少年を見るとそそくさと去って行く。
空も暗くなり始めていた。
「今日は野宿…かな。」
仕方が無いとばかりに少しばかり開けた原っぱに体を投げ出す。
体力が化け物並みとはいえ、疲れていたのだろう。少年からはすぐに寝息が聞こえはじめる。
普通、そんな風に寝転がろうものならば、獣が寄ってきて食い散らかしかねないだろう。
しかし、少年の体に傷一つ付くことはなかった。
どころか、近くを彷徨っていた魔獣などが近寄ってきて、少年の体を温めるように添い寝した。
そこには、どこか、愛情のようなものを感じさせる姿だった。