エリスとフォーア
僕の両隣には美少女が歩いていた。
一人は20代なのだから、少女というのもおかしいだろうか?
しかし、男達の悔しそうな顔はどうにかならないのだろうか。
僕はまだ、子供だ。
子供に嫉妬なんてするから、女性と歩けないんだと思うよ。
いくつかの露店をまわって、必要なモノを買い求めた。
ちなみに、強請られてフィアにも一着かった。
フォーアが手を振っていたので、僕も手を振る。
エリスはちょこちょこと僕の元へと駆けてくる。
それがまた、可愛らしい。
エルもまた、可愛らしさにやられたのか、色っぽい溜息をついていた。
「エルクト兄ちゃん。今日は買い物?」
この子はエリュクトと言えないのだ。
「うん、そうだよ。そうだ、フォーアも呼んでおいで。これから、昼ご飯を食べるところだから。」
「わかった!」
これまた、ちょこちょことフォーアの元へと駆けていく。
少し話して、フォーアと手を繋いでエリスが歩いてくる。
「僕、お金は今持っていないのですが…。」
「それくらい奢るよ。」
僕はエリスのもう片方の手を取る。
手を繋ぐのは、何だか暖かいので好きだ。
「エリスはどこで食べたい?」
エリスはニコニコと笑いながら、僕を見た。
「エルクト兄ちゃんと一緒ならどこでもいいよ?」
なんて、小悪魔なのだろう。
僕と一緒ならどこでもいいなんて、これ以上僕をどうするつもりなんだエリス!
僕は、もうエリスにメロメロなのに!
「なら、僕が一番気に入ってるところに行こうか。その前に、少し衣服を買って行こう。旅には必要だからね。」
「うん!でも、可愛いのがいいなぁ。エルクト兄ちゃんが見たら可愛いって撫でてくれるようなやつ。」
もうその発言が可愛い。
さっきから可愛いばかり考えてる気がする。
「可愛いのもいいけど、キチンと身体を守らなきゃね。僕はエリスが傷付くと泣いちゃうかもしれないよ?」
エリスの顔がぐにゃっと歪む。
「エルクト兄ちゃん泣いちゃう?どうしたら傷つかないの?」
「防具屋さんに寄って行こうか。そこに可愛いのがあるといいね。でも、エリスは何を着ても可愛いよ。」
しかし、エリスがハッと何かに気付く。
「でも、エリスは怪我なんてしないよ?」
エリスは笑みを浮かべた。
「なんでだい?」
「エルクト兄ちゃんが守ってくれるって言ってたじゃん。エルクト兄ちゃんが守ってくれるなら、大丈夫に決まってるもん。」
何を聞いてるとでも言うようなその姿に僕は感動する。
ともあれ、僕達は防具屋さんに寄っていた。
フォーアには大きめのローブ。
エリスには要所要所を守るようにミスリルで覆われたアーマーを買う。
ミスリルには魔力が流しやすい、エリスは身体強化を自然とやって見せていたので、この方が使いやすいだろう。
軽いし。
「こんな高価なローブを買っていただいて。どのようにお礼をすれば良いか…。」
「エルクト兄ちゃん!エリス可愛い?」
僕は二人を撫でる。
「フォーア、気にしなくてもいいよ。エリスは凄く可愛いよ。」
二人がニコリと笑っていた。
その後、二人の衣服を買い込んで、宿に戻る。
ここのご飯が一番美味いのだ。
「エヴァンさん!いつもの5個!」
「あいよ。てか、エリュクト。いつもここで食ってるが、他では食わねえのか?」
スープとパン、それにサラダを載せたお盆を二つ持って、エヴァンさんが現れる。
「僕はここのご飯が一番好きなんだ。素材の味が活かされてて美味しいの。」
フィアが先に受け取ろうとするが、制してフォーアとエリスに渡す。
こういった時は、年長組が後と決まっているのだ。
次に持ってきたお盆はフィアとエルの前に置かれる。
やっと、僕の元にきたお盆を受け取る。
フォーアは待っていたようで、僕が食べ始めるのを見て、フォーアも食べる。
エリスはハムハムとパンを食べていた。
「んまーい!エルクト兄ちゃん!美味い!」
「美味しいね。」
僕も一言しか言わない。
なぜなら、食べるのに忙しい。
フィアが話しかけてきていたら、無視していたところだ。
僕は全員が食べ終えたのを確認してから、話をするコトにした。
「エル、もう気付いてると思うけど。エリスとフォーアは明日からの旅に連れてくから。フォーアは王都で魔法の勉強をするコトになっている。エリスは僕かフォーアの近くから離れないんだ。少し、トラウマがあってね。だから、とりあえず、王都までエリスも連れてく。」
「構わないけど。ここまでは危険が無かったとはいえ、これからの道は危ないハズよ。ギルドで聞いてきたけど、森から出てくる魔獣が人を襲って帰って来れないコトもあるそうよ。大丈夫なの?」
僕はお茶を啜る。
「大丈夫。ユニもいるしね。それに、襲ってくるようなバカがいるなら、二人の訓練にでも使おう。エルも連携とか練習していないでしょ?それも練習しておこう。」
「わかったわ。エリス、フォーア、明日からよろしくね。」
フォーアは頷いた。
「はい。よろしくお願いします。エルさんも魔術師なんですよね?少しでも技術を盗めればと思っています。」
しかし、エリスは答えない。
「すいません。エリスは心を許した相手としか会話をしようとしないのです。根気良く話しかけていただけたら、心を開くと思いますので。」
エリスはプイッと顔を背けていた。
僕はエリスの頭を優しく撫でながら、お茶を啜る。