宿にて
僕は宿に入る。
外はもう明るくなっていた。
「奥さん、朝食、いただいていいですか?」
「はいよ。しかし、どこに出かけてたんだい?昨日は結局帰って来なかったじゃないか。」
僕は小さく笑みを浮かべる。
「面倒事を拾ったので、その情報でも、と思いまして。」
「ふふふ。あの娘かい?あの娘はすぐに面倒事を持ってくるからねー。ご飯は奥の食堂で食べておくれ。」
この奥さんはフィアのコトを知っているらしい。
「後で、奥さんの知ってるコトを教えてもらってもいいかな?フィアとバーバラ商会のコト。」
「構わないよ。」
奥さんが、奥の食堂を指差す。
そこで話すということなのだろう。
「しかし、バーバラ商会かい。この街の人はあそこじゃ買い物しないよ。すぐに騙そうとするからね。買い物は朝一とかで買った方がいいよ。」
「騙す、ですか?」
「あそこは、水晶をダイヤと言ったり、豚をオーク肉とか言うし、商売は信用だって知らないのかね。」
「しかし、随分と店が大きいですよね。」
奥さんは小さく溜息をつく。
「旅人が騙されるんだよ。特に若いのはね。」
「では、悪い噂ばかりなんですね。」
ハッと、奥さんが何かに気付いたようだ。
「あそこ、裏で奴隷も扱ってるらしいわよ。まぁ、噂だからどうかわかんないけどね。」
「ありがとうございます。しかし、奥さんは綺麗な上に情報にも通じているなんて、さぞかし、お相手は幸せでしょうね。」
ドンとテーブルにスープやパンなどがのったお盆が置かれる。
「しかし、コイツを口説くとは中々面白い奴だな。でも、コイツは俺の女だからやらねぇよ?」
夫が現れた。
「そうですか。愛されているんですね。そうそう、情報のお礼ですが、お手を拝借いたします。」
僕は奥さんの手を握り、魔力を込める。
奥さんの体の中心に固まる魔力を解し、体全体に行き渡らせる。
ふと、僕とも奥さんとも違う魔力を感じた。
「失礼しました。体調があまり優れないご様子でしたので、少し治療させていただきました。それと、おめでとうございます。」
「そうなんだよ。最近どうにも体調がね。しかし、おめでとうってのはどういうコトだい?」
僕はスープを口に含む。
口の中に広がる野菜や肉の旨み、とても美味しい。
「おめでたです。」
そう一言呟いてから、パンを手に取る。
柔らかい。
「ま、まさか…。」
「イヤでも、そんなまさか…。わかんのか?子供できたって。」
僕はスープの中身が無くなった器を見て、夫らしき人物を見る。
「おかわりもらえませんか?魔力の質が奥さんと貴方のモノに似ているので、多分貴方方のお子様だと思いますよ。」
「えっ、あ、あぁ。おかわりな。わかった。」
パンを頬張るが、しかし凄く美味しい。
下手をすれば、姉さんに匹敵するのではないだろうか。
「男かい?女かい?」
「そこまではわかりません。しかし、美味しいですね。お弁当作ってもらえませんか?」
「銅貨2枚で作ってるよ。器を返してくれたら、銅貨1枚返すよ。」
僕は真剣に考える。
「幾つまでなら作れますか?」
「アンタ!いくつまでなら弁当を作れるか聞いてるよ。」
「25までなら出せるぞ!」
25個か。
足りる…と思う。
「じゃあ、25個お願いします。いつ頃できますか?」
「1時間くらい待っててくれ。で、これがスープのおかわりだ。」
僕は受け取ってすぐに食べる。
食べ終え、満足した僕は部屋に行くコトにした。
フィアside
随分と寝ていたようだ。
最近は全く眠れていなかったのだ。
起き上がり、ボーッと壁を見つめる。
ふと、窓の方を見れば、一つだけ置いてある椅子に男が腰をかけていた。
「起きた?朝ご飯、食べに行く?」
「アンタが外に出さなかったんじゃない!」
枕を投げつけるが、男の手前で止まる。
「もう、ドアから出れるよ。でも、宿から出ないようにね。大変な目に遭いたくなければね。」
私はそっと、ドアノブに手をかける。
今度は触れるコトが出来た。
外に出ても、何もない。
おばさんに声をかけて、食堂で飯を食う。
マジで美味い。
食べ終えたら、私は宿のドアノブの握った。
私はシメシメと思いながら、外に出る。
ビリッと音が鳴る。
外に立っていた男性が私のコトをガン見していた。
恐る恐る、私は自分の身体を見る。
服が木っ端微塵に裂け、私は裸を晒していた。
「キャー!!!」
私は身体を隠すように座り込む。
「だから言ったのに。」
後ろからアイツの声が聞こえる。
ソッと布がかけられる。
「部屋に衣服は置いておいたから、着替えといで。」
男が笑っているのはわかるが、恥ずかしいために、急いで階段を駆け上がった。
部屋のベッドには、私が着たこともない程に上質なワンピースが置いてあった。




