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スラム街

僕はスラム街へと足を向けた。

そこには、先程見た少年がいた。

少年が僕に手を振ってこちらへかけてくる。


「こんにちは。少し、触ってもいいかな?」


少年が、コクンと頷くのを確認してから、喉元に触れる。

喉元に固まる魔力に、僕の魔力も混ぜて解していく。

柔らかくなったところで、少年の体内を循環させる。


少年が喉が熱くなってきたコトに気付き、僕を見上げる。

僕はニッコリと微笑み、もう片方の手で頭を撫でる。


「さぁ、喋ってごらん。」


そう言うと、少年が声を出そうとする。

長らく出していなかったのだろう。

かすれ声しか出てこないが、少しずつ声に力が入る。


「ぁ…、ぁぁ…。ぉ…。ぁぁあ…。喋…れる?」


「呪文を使うのは、しばらく止した方がいい。喉に負担がかかり過ぎている。だから、体の中にある魔力を意識して、少しずつ体の中を流していくと、体が魔力に馴れて体の負担が軽くなる。」


少年の横をちょこちょこと歩いてきた少女の足元に膝をつく。


「怖がらないで。大丈夫だから。少し痛いけど、すぐに治るからね。」


僕は少女の左足に触れる。

ヒビがはいっているようだ。


そこに強く込められている魔力を解して、体の中心に戻す。

それから、手に魔力を込めて少女の足を撫でる。

痛みで少女の顔が歪んだ。


「後少し。後少しだから、我慢して。」


手から溢れる青い光が少女の足へと溶けていく。


「よし治った。それじゃ、少し動いてみて。なんか、不調があったら言ってね。」


少女は、スタタッと駆け出し、あっちに行ってそっちに行ってとしばらくして、帰ってきた。


「ありがと!」


「なら、良かった。それでね、二人に頼みたいんだけど、ここの代表の人と会えないかな?」


「代表?代表ってわかる?」


少女が少年に聞いていた。


「多分、ハル爺じゃないかな。おじさん達も代表って呼んでたと思うよ。お兄さん、会わせるのはできるけど、なんか用なの?」


「うん。頼みたいコトがあるんだ。」


僕がそう言うと、少年は一つ頷いて僕の手を引く。


「わかった。でも、気難しい人だから、気をつけてね。」


そうやって、三人で手を繋いで歩く。

少年の名前がフォーア・リース、少女の名前がエリス・カミアというらしい。


フォーアは、スラム街の奥にある一軒家の戸を叩く。


「ハル爺!お客さんだよ!ハル爺に話があるんだって!」


「なっ!?フォーアか!?」


ドタドタと音がして戸が勢いよく開いた。

現れたのは、ヒゲの生えたおっさんだった。


「貴方が、ここの代表ですか?」


「お前は何者だ?まずはテメェから名乗りやがれ。」


僕は一つ礼をする。


「失礼しました。僕はエリュクト・プロシオン。旅人です。お力を貸していただきたくて、参りました。」


その礼に一瞬呆気にとられたが、ハル爺とやらは、すぐに真面目な顔になった。


「入んな。中は汚ねぇし、茶も出せねぇが、それでも構わねぇんならな。」


僕は「失礼します」と言って中に入る。


すぐに居間らしき場所に辿り着く。

ハル爺の対面に座ると、少年と少女が僕の左右に僕を挟むように座った。


「俺はハルロス・バース。みんなにはハル爺って呼ばれてる者だ。一応、ここの代表ってことになってる。で、力を借りてぇとは?」


「バーバラ商会の情報の入手、又、バーバラ商会を相手取るのに、力を貸していただきたい。僕もそれ相応の対価は払う…。」



フィアside


二人がいなくなったのを確認してから、私は窓を開けようと手を伸ばした。

暑いからとかそんな理由ではない。

逃げようと思ったからだ。

金は騙し取れなかったが、私が逃げ切れば、アイツらが私の借金を負担してくれるのだ。

ありがたい話だ。


しかし、私のそんな思いは簡単に踏みにじられた。

窓に手を伸ばしても、触れられないのだ。

ドアならばと確認しても、ドアノブに触れることすらできない。

壁を殴りつけたが、壁の寸前で止まる。

アイツらが魔法を使った素振りはなかったはずだ。

それに、魔法を使って結界などを作っているなら、この部屋に媒体がなければならないが、アイツらはこの部屋に何も残していかなかった。


私はドアの前で大声を出す。

さすがに、声は聞こえるはずだ。

私が開けれなくても、他の人なら開けれるはずだ。

現に、アイツらは平然と出て行ったのだ。


少し待つと、ガチャリとドアが開いた。

私は体当たりした。

否、しようとした。

だが、結果は開いてるハズのドアは通れず、そのまま地面へとダイブすることになった。


「フィア。どうしたの?」


「どうもこうもあるか!こんなの監禁だ!犯罪だ!役所に言ってやる!」


私は喚き散らすが、女は少しバツの悪そうな顔をしていた。


「ごめんね。フィア。貴方を守るためだって、エリュクトが言ってたし。だから、きっと大丈夫よ。それに、貴方の言うことは全部ウソだと思った方がいいって言われたから行くね。」


バタンと、ドアが閉じる。

すぐに開いて、また女が現れる。


「そうだ、ここで騒いでも私以外には聞こえないらしいよ。だから、体力は温存した方がいいんじゃない?」


などと、のたまいやがった。


私は暴れるが部屋の物の何一つ、傷付けることはできなかった。


私はベッドに潜り込み、不貞寝することにした。

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