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-【事実彼女】- 隣に越してきた1番人気の新入生はただの“後輩”なのに、なぜか俺の『彼女』だと勘違いされている。  作者: ななよ廻る
第9章

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第1話 恋愛相談ではない。ただの相談。

 俺と友樹では彼女かただの後輩か(前提条件が違う)とはいえ、辛辣な返しにむっとする。なんか喜んでるのが腹立たしかった。

 他人の不幸は蜜の味ですかそうですか。


「やっぱりやめる。変態に相談したのが間違いだった」

「おいおい拗ねるなってー。思わぬ発言にビックリしてだけだからさー」

「にしては、声が喜んでるんだが?」

「別れたらいいなーって……うそうそ冗談だから!」


 椅子をぐるっと回して背中を向ける。

 やはり、男に女性関係を相談するのがそもそも間違っていたんだ。男のする話題なんて、下世話な話か妬み嫉みかに決まっている。偏見に塗れているが、俺の友人はそうだから。


「……俺は友達の作り方が下手くそだっ」

「いや、……そんな本気で悲しまれると俺も自分を見直したくなるんだけど……え? オレって友達としてそんなに駄目?」


 なにやらショックを受けてる友人はほおっておく。


 男が揃って肩を落とす見苦しい姿を晒していると、曇った空も吹き飛ばしそうな明るく溌剌はつらつとした声が太陽光のように降り注いできた。


「おはよー! りなみくん、ともくん!」

「……あぁ、名瀬か」


 はよー、と気怠げに片手を上げると、「今日は雨模様だ」と両手をパッと広げる。俺の後ろからは「おはよーりおなちゃん!」と気安く元気な挨拶が飛んでいる。


「まだまだ小さいなー。もっと声を出せるよねぇー?」

「おはよーりおなちゃーんっ!」

「うっさい、なんでコール&レスポンスしてんだよ」


 椅子を正位置に戻して、友樹の頭を小突く。


「げぶしっ」


 ノリよく呻いて、ゾンビが倒されたようにぐったりし出す。こういうところは一緒にいて楽しい奴なんだけどなーと思っていると、名瀬がくすくす笑みを零す。


「楽しい人だね」

「元気なのが取り柄だからな、オレ!」

「いまのは異性としてはちょっと……って意味だぞ」


 またぐったりしちゃった。

 月曜日から本当に元気な奴だと、ゾンビみたいに死んでる友人を眺めていると、「ところで」と名瀬が話を切り替えてくる。


「さっき、男として見られてないんじゃないかーって話が聞こえたんだけど、なんのお話? あ、盗み聞きや聞き耳を立てたわけじゃないんだよ? 偶然、聞こえちゃったんだ」

「偶然って便利だなー」


 急に話しかけてきたと思ったら、いつの間にか餌をまいて釣っていたらしい。

 人の耳がある教室でこんな話を始めた俺が悪いから責めはしないが、これだけ丁寧に否定されると勘ぐってほしいんじゃないかと思ってしまう。


「それで、どうなの? 異性と思われなくって悔しい気持ちがあってでもでも自分がしずくちゃんを好きなのかもわかならくって半端な気持ちがモヤモヤしててどうすればいいのか悩んでる思春期男子高校生なのかな!?」

「一息で問い詰めてくるのやめてくれない?」


 相変わらず好きね、恋バナ。

 雫後輩への好意の有無はともかく、意外と大外れというわけではないのは女の勘というか、『話したらみんな友達!』みたいにいろんな人と接しているからだろうか。

 人付き合いの経験値が違いすぎる。


 ちらりと死んでるゾンビを見る。


「まぁでも、こいつよりは相談相手としてはいいか」

「オレも最高だよ!?」

「うんうん、ゾンビくんみたいにお尻は軽くないから任せて!」

「りおなちゃん!?」


 あっさり見捨てられて、友樹が絶望してる。

 笑えるが、恋バナ(目的)のためにあっさり切り捨てた名瀬がちょっと怖い。全肯定タイプな性格だと思っていたけど、実際はそうじゃないのかもしれない。


 人間の本質なんて、そんな簡単に見えはしないということか。


「でも、口が軽そうなんだよなー」

「大丈夫! お口はチャックしておくから!」


 ん! と淡い桜色の唇を結んで突き出す。


「かわいい」←友樹

 かわいい。


 でも、チャックってことは簡単に開けられるよな? 本質的にお喋りですという自覚があるのではなかろうか。全然、大丈夫じゃなさそうと思っていると、鐘が鳴る。

 待っていたように担任の先生も来て、話は強制的に中断された。


 口惜しそうにぷくーっと頬を膨らませた名瀬だったが、パッと仮面を変えるような手際のよさで明るく笑う。


「じゃあ、昼休みに聞かせて!」


 約束ね、と気軽に小指を絡めてくる。

 不意の触れ合いに膠着している間に、「指切った!」と勝手にげんまんされて笑顔に自分の席へ戻っていく。


 なにも考えられないまま、結んだ小指を見つめる。


「いいなー、オレも指切りげんまんしたいなー」

「してくれば?」


 言うと、「そうだな!」と駆けていき、先生に怒られていた。

 即落ち2コマかよ。

 呆れつつ、「んー?」と首を捻って、俺は絡めた小指を見続けた。



 で、4時間もの授業を乗り越えて、昼休み。


「昼休みだー!」

「恋バナだー!」


 交わした約束の時間が訪れる。


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