71話 大規模説教会場
歓声はない
10万人を収容できる
ワースクル・アーク会場
2曲目の披露だが
まだ1度も歓声はない
”みんなの答えを待っている”
そのバラドの言葉
どっちが欲しい?
信者のようにアイドルを
崇め奉る幸せか
本物の音と歌声による
心が震えて騒ぐような興奮か
”・・・・・・・・”
オーディエンスの中で
素直な感想を表す者が居ない
だって怖いからだ
人は大多数で居ることで
安心しようとする
そこで
その大多数から
外れた発言をしてしまったら
それだけで
もはや異端者だ
どっちが欲しい?
迫られている
・・・あれ?
私たちって
世の中の理不尽なリアルを
それを忘れたくて
ここに居るんじゃなかったっけ?
まるで説教を聞きに来てるような?
・・・でも
”・・・これが・・本物の音と歌声?”
誰かが そう言葉にした
そうだよ だって
”人気主義”によって
ごまかされ続けていた
音も歌声もダンスも
だまされて
崇め奉るための
”ついで”なのだから
だけど
本物を聴いてしまった
”・・・ねえ?
・・・バカみたいじゃないの?
・・・今までの
音と歌声とダンスが
”・・・これが
・・・本物?”
”・・・たしかに
・・・初めて聴いたかも”
ティア「バラドの想い
伝わってるようですが
まだ戸惑いの方が大きいですね」
リエル「娯楽場を説教場にして
”どっちが欲しい?”なんて
問われてるんだからね~」
ヴェル「本当
媚びる事も
へつらうことも
機嫌を取ることも
ウケを狙う事も
しねぇなぁ」
ティア「それだけで
わかりますよ
世界を変えようとしてることをね
ユミ「いまだに
歓声はなしか
これって本当に
ライヴ会場なの?」
ティア「まあ
良い意味でも
悪い意味でも
このライヴは
もはや伝説になりましたね
ティア「まあ
どっちに転がるかは
わかりませんが」
ツナグ「・・・これだけの
・・・危険を冒してまで」
ティア「ツナグ?」
ツナグ「・・・本当に
・・・バラドさんは
・・・”人気主義”を
・・・ぶっ壊したいんだね
ツナグ「・・・だって
・・・本物の音たちは
・・・”人気主義”の
・・・犠牲になって
・・・来たんだから
ティア「・・・」
ツナグ「・・・バラドさんは
・・・本物たちの
・・・救世主だ
ステージ
シアン「前代未聞なんだけど?
これだけのオーディエンスに
拍手1つも もらえないとか」
ザファイド「・・・もしかして
・・・失敗してる?」
ネア「まあ
失敗しても
世界が終わるわけじゃないし」
これで良いと思うよ?
ネア「カナデ?」
カナデ「だって
このライブで
この国が何を望んでるのか
はっきりするから
ネア「たしかに
そうだけどね~」
カナデ「この国で
本物が評価されないなら
海外に行けば
いいだけだし~
カナデ「この国に
希望を見出せるか
失望がハッキリするか
それだけで
もはや このライヴは成功
ネア「なっるほどね~」
バラド「ただな
嬢ちゃん?」
カナデ「なに?」
バラド「俺わな
この国を
あきらめたくねえんだよ?
バラド「世界が変わらないなら
変えてやればいいだけだ」
それをしてきた人間が
歴史には山ほど居るのだから
バラド「俺たちも
そうなればいいだけだ」
ネア「だからバラドは
リーダーしか
できないんだね~?
ネア「だったらさ?
徹底的に説教会場にする?」
バラド「いや
少しだけ
リアルロスト
させてやろうか
バラド「ムチだけじゃ
人は聞いてくれないからな」
ザファイド「媚びる事は
しないんじゃなかったっけ?」
バラド「人間って
都合の良い生き物なんだよ?」
ネア「じゃあ
はじめようか~
3曲目 いっくよ~
曲は
「リアルロスト」
ネア「・・・
今夜も
ライヴステージ
私は歌を唄う
仲間たちの奏でに乗せて
私の歌声を響かせる
オーディエンスは
信者のように
私を崇め奉る
盛り上がりの
ヒートアップを
さらにオーバーヒートさせて
狂喜に突き堕とすよ?
どう 止め刺してやろうか?
ロックでアゲる?
バラードで涙させる?
感情は
私の想いのまま
さあ
アガってきたわね?
でもね
終わりじゃないよ?
もっと
感情を剥き出しにしなよ?
もっともっと
出しちゃいなよ?
わかったかな?
リアルを忘れたいんでしょ?
クソみたいな世界だもんね
じゃあ
忘れさせてあげるよ?
今宵の私の美声で
さあ
見せてあげるよ?
さあ
魅せてあげるよ?
狂喜と涙
どっちが欲しい?
私にかかれば
感情は想いのまま
面白いよね
こんなにも
人の感情を操れる
さらに
刺激が欲しい?
そんなことしたら
リアルに戻れなくなるよ?
もう
知らないよ?
もう
戻れないよ?
私の美声に堕ちれば
リアルは忘れられるけどさ
もう
戻りたくないでしょ?
もう
現実はイヤでしょ?
あ~ぁ
リアルロストしちゃったね?
じゃあ
もっと堕としてあげる
”・・・・・・・・・・・”
ヴェル「誘惑?魅了?
入り込んだら戻ることが
イヤになるような
あまい没入へと引込んでいく」
リエル「・・・こんな本物の音を聴いたら
・・・もう偽物なんて聴けない」
ユミ「・・・でも
・・・歓声はなし」
バラドは徹底的に
このライブハウスを
説教会場にしたいらしいですね
リエル「ティア?」
ティア「こんなの
客商売ではないですよ?
ただの説教です」
ツナグ「・・・僕も
・・・そう思う
・・・だって歌詞が
今の”人気主義”の演者と
それに魅了されている信者を
表現してるような歌詞だもん
ステージ
ネア「どこが
ムチはやめるって?」
バラド「言っただろ?
人間は都合の良い生き物だと?
俺は
媚びる事も
へつらうことも
機嫌をとることも
ウケを狙う事も
バラド「そういうことは
しねぇからさ?




