63話 バラドは救世主
ワン リアル アクションを
嬢ちゃんと小僧が
ずっと一緒に居られるための
踏み台にすればいい
バラドの所有するスタジオ
ツナグ「・・・何を・・言ってる?」
バラド「・・・すまない
もっと早く伝えておけば良かった
嬢ちゃんの
ワン リアル アクションの参加は
嬢ちゃんにも小僧にも
悪いどころか
最高のプラスになる
バラド「二人が
ずっと一緒に居られるための
踏み台になれる」
ツナグ「・・・」
信用していいのか?
ぜんぶ 大人の
都合の良い言葉ではないのか?
そうやってバラドの
叶えたい夢のために
カナデを利用してるのかもしれない
現に今
カナデ「・・・」
カナデは
笑う事を忘れてるのだから
ツナグ「(・・・この男が
この男が
そうさせた
カナデの笑顔を奪った
夢のために?
本物たちの音を救うために?
・・・そんな物のために
ツナグ「・・・そんな物のために」
シアン「ツナグ?」
ツナグ「そんな物のために!!
僕のカナデの
笑顔を奪うのかああ!?
ツナグ「・・・」
ブチ切れていた
ここまで
ブチ切れたことは
人生であっただろうか?
そう だって
この男は
ツナグ「・・・」
僕の最愛な人の
笑顔を奪った
シアン「ツナグ!?」
強く握りしめ
振り上げた拳を
バラドに向ける
バラド「・・・」
ツナグ「お前があああああ!!」
少年!?
ツナグ「・・・」
ネアの悲痛な叫び
ツナグを呼ぶ言葉に
拳を止めたツナグ
ネア「・・・話だけでも
・・・聞いてあげて?」
ツナグ「・・・なぜ?」
ネア「バラドとは
家族ぐるみの仲なの
私が子供のころから
一緒に遊んでくれていた
私の知ってるバラドは
・・・平気で
・・・人の笑顔を
・・・奪える人ではない
ツナグ「・・・」
ネア「・・・おねがい
・・・話を
・・・聞いてあげて?
ツナグ「・・・」
ネアの
その言葉を聞き入れた
ネアとは
二か月の付き合い
そんなに
長い付き合いではないが
彼女の人間性は知っている
人として魅力の溢れる人で
悪を許さない
だから
彼女の言う事は信用できる
ツナグ「・・・話を聞こう?」
バラド「・・・すまなかった」
謝罪したあとに
説明を始めたバラド
バラド「ワン リアル アクションの
ワースクル・アークでのライヴが
成功すれば
小僧と嬢ちゃんは
ずっと一緒に生きる事ができる」
ツナグ「その理由とは?」
バラド「ワン リアル アクションの成功が
小僧たちのバンド
”欠けている”を
一気にプロに押し上げる
バラド「プロどころではない
一か月もしないで
トッププロミュージシャンしか
出演できないような
音楽テレビのオファーも
来るようになるだろう」
その理由を告げる
バラド「ワン リアル アクションには
欠けているの
バンドメンバー
嬢ちゃんとシアン
本物の二人が居るのだからな
バラド「ワン リアル アクションの
カナデとシアン
それでいて
欠けているのカナデとシアン
このネームバリューだけで
プロの階段を一気に駆け上がれる
そうなれば
嬢ちゃんと小僧は
トッププロミュージシャンと言う
仕事と共に
ツナグ「・・・」
バラド「共に生きていくことができるだろ?」
ネア「・・・そういうことね
内容次第では私もブチ切れるところだったけど」
ツナグ「・・・でも
現に今
カナデは笑っていない
バラド「・・・」
ツナグ「未来の事も大切だけど
今の事にも目を向けて欲しい?」
バラド「そこで小僧に提案だ
可能な限り
嬢ちゃんの傍に
居てくれないか?
ツナグ「え?」
バラド「小僧が傍に居てくれるのなら
嬢ちゃんは
笑う事ができるのだろう?
ツナグ「・・・」
バラド「嬢ちゃん?
つらい想いさせて
・・・すまなかった
練習は一時中断して
小僧と話でもしててくれ」
そう促されて
用意された部屋に
ツナグとカナデは行った
ネア「カナデのメンタルケア
これも計算?」
バラド「どこまでネアは
俺を悪党にしたいんだ?」
ネア「わかってるわよ
バラドは
そんな人ではない」
ごっめ~ん
練習に遅れた~
そう言って
スタジオに
ザファイドが入って来る
場の空気を瞬時に悟り
「何かあったの?」と聞く
「バンドでは
よくあることが起きただけ」
ネアの
その言葉に
バンドマンだからか
瞬時に理解したザファイド
ネア「だから気にしないで?」
ザファイド「そうだね
よくあることだ
でも僕は
何があっても
どうなろうとも
バラド・シューターに
ついていくよ?」
ネア「なぜ?」
ザファイド「だってバラドは
この国の”人気主義”に
蹂躙された
本物たちの救世主だからね
ネア「どういうこと?」
ザファイド「”邪魔にならない本物”には
永遠に理解できないだろうけど
僕たち本物が
どれだけ”人気主義”に
苦しまされてきたことか
ザファイド「シアンなら
わかるだろ?」
ネア「シアン?」
シアン「・・・」
ザファイドの
言葉のとおりだった
この国の
”人気主義”は
”本物たちを
殺し続けて来た”
シアンも
シアンの本物の音を
理解されず否定され
他と音が交われず
他のメンバーの音を
本物の音のクオリティで霞ませ
ついには”壊し屋”まで言われた
本当に本当に
苦しんで悲しんでいた
ザファイド「容姿が良い
話が面白い
感じが良い
可愛い
美人
癒される
そんな人間を
崇拝できるのなら
音も歌声も
どうでもいい
そうやって みんな
音も歌声も無視し始めた
ザファイド「本物だけが
”人気主義”に
蹂躙された世界が
数十年も続いている
そろそろ”人気主義”を
終わりにしたいと思わないか?
ネア「・・・」
ザファイド「本物の音は
理解されない
交われない
求められていない
本物たちは
ずっと苦しんできたんだ
ネア「・・・」
その言葉に複雑な想いと
苦しみを感じた
ネアだって
トーク力と天性の魅力で
”レア・シーン”の
売り上げの半分を稼いでいる
ネアは本物だ
それにプラスして
”人気主義”に
あやかれている部分もある
ネア「・・・でも
・・・私も
可能なら歌声だけで
勝負したい
ザファイド「それが本物なんだよ?
バラド・シューターは
本物の音たちの音色を救う
救世主なんだ




