62話 都合の良い言葉
カナデが
笑わなくなった
それどころか
ワン リアル アクションの
バンド活動以外は
部屋に引き籠るようになった
学校にも行けない
行けば”本物の音たち”と言う
タイトルの動画
もはや
150万再生されてる
その動画に映っているカナデ
ワン リアル アクションと共に
セッションした動画
その影響で
カナデが学校に行けば
学校中パニックになって
それゆえに
学校に行くことさえも
ゆるされなくなった
学校
教室で歴史の担任教師の
授業の時間
僕は そこに居た
そして
この教室には
違和感しかない
だって
どこに目をやっても
カナデの姿は居ないからだ
ツナグ「・・・」
教室だけじゃない
朝の学校の通学路
神社でのセッション
教室のカナデとの時間
放課後の帰り道
寝る前のカナデとの
窓越しの会話
ツナグ「・・・ぜんぶ
・・・すべての世界に
・・・カナデが・・居ない
ツナグ「・・・
産まれた時から一緒で
同じ時を生きて共に歩んで
気が付けば いつも
となりにカナデが居た
カナデの曲に心惹かれ
カナデのメロディに心奪われ
気が付けばカナデは
僕の歌うとなりで奏でてくれていた
ツナグ「・・・でも
・・・今は
・・・となりに
・・・カナデは居ない
ツナグ「・・・
・・・となりに
・・・カナデは居ない
ツナグ「・・・
考えて
考えて
考えて
至った結論
担任教師「マザルくん!?」
気が付けば
教室を飛び出していた
カナデから
ワン リアル アクションが
どこで
バンド活動をしてるのかを
知っている
だったら
迷う事はないはずだ
ツナグ「・・・」
・・・連れ戻す
ツナグ「・・・カナデを
・・・カナデを
・・・連れ戻す
ヴェル「行くのか?
カナデの元に?」
学校 廊下
ツナグ「ヴェル?」
ヴェル「深刻なことに
なってるみたいだな?」
ツナグ「・・・」
ヴェル「ツナグが
”行ってらっしゃい”と
言わなければ
ツナグ「・・・」
ヴェル「ワン リアル アクションに
参加することもなく
カナデは今も
笑って居られたのだろうな
ツナグ「・・・」
ヴェル「お前の責任だ?」
ツナグ「・・・」
ヴェル「だからさ?
てめえで
なんとかしろよ?
ツナグ「・・・ヴェル」
ヴェル「それができるのは
常にカナデを笑顔にしている
ツナグしか居ねえんだからな?
ツナグ「あぁ!」
学校を飛び出したツナグ
ヴェル「・・・」
取り戻せるかな?
カナデとカナデの笑顔を
リエル「・・・生きるって
・・・大変だね」
ヴェル「それでも
やるしかねえだろ?
大切な者を取り戻すために
ツナグ「・・・はぁ・・はぁ・・はぁ」
息を切らして必死に走った
カナデを取り戻したくて
僕が
”行ってらっしゃい”なんて
言わなければ
ツナグ「・・・カナデは
今も笑って居られたんだ!!
ツナグ「・・・僕がやってしまった
・・・だったら
僕が責任を取る!!
バラドの所有するスタジオ
そこに
ワン リアル アクションは
二か月後の”ワースクル・アーク”の
ライヴのための練習をしていた
カナデ「・・・
無表情で笑う事もなく
ただヴァイオリンの旋律を
奏でているカナデ
カナデと
二か月の付き合いの
ネアも
まだ
カナデと知り合って
間もないシアンも
カナデの異常に気付いていた
ネア「・・・あんなに
・・・笑わないカナデ
・・・初めて見た」
シアン「笑顔しかない
女の子だったのにな」
ネア「・・・やっぱカナデは
少年のとなりで
奏でたかった女の子なんだ
ネア「・・・
・・・ごめん
・・・カナデ
ネア「・・・私が
・・・気づいていれば」
カナデ「・・・
・・・大丈夫
・・・これは助っ人
・・・長くは
・・・続かない
カナデ「・・・ツナグも
・・・そう言ってた
・・・ちょっと我慢すれば
・・・いいだけじゃん
カナデ「・・・ちょっと
・・・我慢すれば」
音のクオリティを上げるぞ?
ネア「・・・バラド?」
バラド「二か月後に
世界を変えてやる
そのための
ワン リアル アクションだ
シアン「・・・ちがうんじゃねえか?
・・・バラド?」
バラド「なに?」
バラドに
啖呵を切る
シアン「バンドメンバーのこと
見てねえのかよ!?
カナデが
明らかに苦しんでるだろうがあ!?」
バラド「シアン?
人の想いを理解できるように
なったか?」
シアン「まるで
カナデの想いを
理解してて放置してるような
言い方だな!?」
バラド「・・・」
ネア「・・・バラド?
・・・これは無いと思う」
バラド「・・・わかってるんだけどな
わかってる
俺の夢のために
嬢ちゃんの
”すべてを繋げるワンオール”
その力は
無かったら実現しない
・・・わかってる
・・・苦しんでるのは
・・・わかってる
・・・だけど
バラド「・・・ここで
・・・止まったら
・・・哀れな教信者共は
・・・救うことができない
バラド「・・・”人気主義”の
・・・犠牲になっている
・・・本物たちの音の音色も」
ネア「でも!?」
スタジオのドアが開かれた!!
カナデ「・・・
・・・ツナグ?
ツナグ「・・・
バラドに歩み寄り
胸ぐらをとった!!
バラド「・・・」
ツナグ「・・・やめてください?」
バラド「・・・」
ツナグ「カナデを!
ワン リアル アクションから
抜けさせます!!
ツナグ「これ以上!
カナデの笑顔を
奪うんじゃあねええ!?
カナデ「・・・
・・・ツナグ
バラド「・・・
小僧は
やっぱり小僧だな?
ツナグ「なに!?」
バラド「ここで
嬢ちゃんが抜けたら
どれだけの違約金が
発生すると思う?
ツナグ「・・・」
バラド「10万枚のチケットは完売
テレビ中継も国中に放送される
違約金は
数百億で済むのか?
それとも
さらに上を行くのか?
ツナグ「・・・」
バラド「小僧の感情で
カナデって嬢ちゃんの
人生を壊してみるか?
ツナグ「・・・く」
バラド「こう考えればいい
この
ワン リアル アクションが
小僧と嬢ちゃんが
ずっと一緒に居られるための
踏み台だと




