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欠けている  作者: ausunoto
49/51

49話 壊し屋




          シアン?


          ここなら


          あなたの居場所に


          なるんじゃないの?







シアン「・・・」


シアン「・・・俺は










            ・・・俺は










回想 10年前



     

       ヒマつぶしに

       家に置いてあったベースを

       鳴らしてみた


       それを聴いたオヤジが

       ベースを始めた方が良いと

       興奮気味に騒ぐものだから


       特に

       やりたいことが

       なかった俺は

       ベースを始めた


       

       自分の音に満足した俺は

       刺激が欲しくて


       近くの公園でベースを鳴らした


       そのとき

       最初に足を止めて

       聴いてくれたのがティアだった



       いつしか

       俺のベースを聴いてくれる人は

       20人を超えていた


       初めてだった


       こんなにも誰かに

       認められたことは


       オーディエンスの

       熱い眼差し


       熱気 興奮 狂気


       それらを

       俺が生み出している


       こんなの

       音楽の虜に

       ならないわけがない







ティア「ねえ?

    僕も君と

    音を鳴らしていい?」




        特に

        やりたい楽器は

        無いと言うものだから


        音の主役が欲しかった俺は

        ティアにドラムをするよう

        提案した


        

        ティアは

        飲み込みがはやく


        すぐに

        ドラムの基礎を覚え


        小学校が終わったらティアと

        狂ったようにセッションを

        毎日した



        これがセッション?



        音を重ねることが

        こんなにも楽しいなんて


        ベースとドラムだけで

        こんなに楽しいのなら


        本格的にバンドを組んで

        音を重ねたら

        どれだけ楽しい?



        いつかバンドを



        それを夢見て

        ティアと

        音の精度を上げた




        いつからだろう?




        ティアのドラムでは

        満足できなくなった

        俺が居た


        俺の求める音を

        叩いてくれない


        苛立ちを隠せない








シアン「・・・






           もうやめよう







ティア「え?」


シアン「もっと

    俺を満足させられる

    やつと組むわ」




ティア「・・・」







        そうして私は

        シアンとの

        セッションの日々に

        終わりを告げられた


        満足できる

        メンバーと組む


        その時に

        止めておくべきだったのか?


        私は

        最初から気づいていた







ティア「・・・





          

         あなたを

         満足させられる


         バンドなんて 

         ありませんよ?








シアン「・・・







          俺は

          ティアのドラムの音では

          満足できなくなった


          だから探した

          俺を満足させられる音たちを


          

          探して


          探して


          探して




          呆れるくらい探して




          そして ついに








シアン「・・・」











            見つかりましたか?










シアン「・・・」


ティア「見つからなかった

    みたいですね?


    でしょうね

    最初から言えば良かったですね

    あなたが私とのセッションを

    解散したその日に






         あなたを


         満足させられる


         バンドなんて無いと







シアン「・・・ティア?

    ・・・わかってたのかよ」



ティア「あなたを

    満足させられるのは

    一握りの本物です


    それを複数集めるの

    どれだけの可能性が

    あると思いますか?」




シアン「・・・俺は







            俺は


            あきらめねええ!






シアン「ぜってー!

    その”本物”どもを

    見つけてやる!!」




ティア「・・・








          その本物たちを集めるだけで


          人生の時間は終わりますよ?







ライヴハウス リアルロスト




       

         組んでくれたバンドがあって

         音合わせをしていた


         だが





”もう

やめてくれ!!”



シアン「え?」





”俺たちに

これ以上レベルの差を

見せつけないでくれ!?”



”お前のベースの音で

皆の音が霞むんだよ!?”






シアン「・・・俺は

    ・・・そんなつもりは」





”・・・もう・・お前








          このバンドから


          抜けてくれよ?








シアン「・・・」






帰り道


シアン「・・・どこも

    ・・・どこだってそう

    俺の音に

    ついてこれるバンドはねえ


    ・・・ティア

    あいつ”上の方”だったんだな


    あいつより

    うめえドラムが

    居ねえんだが」







           妥協


           その言葉が


           何度も頭をよぎる







シアン「・・・俺は






          ・・・本気の音を


          ・・・出しちゃ


          ・・・いけないのか







”ねえ?”


シアン「誰だ?」



”あなた

有名だよ?


最高のクオリティの

ベースの音を出すけど

バンドメンバーの音を殺す








             ”壊し屋”だって









シアン「・・・死神

    ・・・みてえだな」



“ウチのバンドに来てみる?

入れる保証はないけど”






           バラド・シューター





”本物の音を叩ける人間が

バンドメンバーを集めてる”



シアン「バラド・シューター

    聞いた事がある

    いや

    聞いた事しかねえ


    この辺りで

    バンドをしている人間は

    バラド・シューターの名前は

    ぜってー聞いてる


    トッププロバンドの

    スカウトを断ったんだろ?」




”自分で創ったバンドで

勝負したいんだって

君みたいな本物なら








          ”レア・シーン”に

  

          来てみる?







シアン「・・・」









          レア・シーン



          そのバンドは


          デビュー前から


          成功することが


          約束されたような



          そんなバンドだった








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