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第三部 第七章 グレートブリタニア

第三部 第七章 グレートブリタニア


 グラスゴーに到着したウィリアムは直ぐに指揮官のヴェルマンドワ伯と会談をする。

「戦況は?」

「こちらの守りは硬いですからね、敵は攻めあぐねている様ですね」

 グラスゴーの街では、味方の魔術師達が交代で強固な魔法防御壁を張っている。

 敵にも魔術師が居るが、その数は100名以下の様だ、その為こちらの魔法防御壁を崩す事が出来ずに、逆に攻撃の度にその兵力を減らしている状況だ。

 

 そしてウィリアムからの伝令を受けた、デンマーク侯オーロフ、エリク・ビョルンソンの兵15000が、マルカム1世の軍の背後から挟撃をする。

「陛下、来た様ですね」

デンマークのヴァイキング達の鬨の声が戦場に響き渡ると、ウィリアムは全軍に命令する。

「門を開け、全軍出陣」

 敵軍は人数こそ20000だが、寄せ集めの軍で、事なる民族の部隊同士の連携が全くできていない。

まぁそれはこちらのグラスゴー防御軍とデンマーク侯のヴァイキング軍も同じ事なのだが、攻撃と防御では、状況が全く違ってくる。

 この時、デンマーク侯の軍の後方には、フォース川を渡河したアルバ王国の正規軍15000が迫っていたのだが、ウィリアムの素早い決断により、敵はこの軍との連携作戦を取る事が出来ないまま、出陣したヴェルマンドワ伯率いるグラスゴー防御軍に左翼を、ウィリアムの率いる軍に右翼を攻撃され後背からはデンマーク侯のヴァイキング軍と三方から攻められて、撤退する事も出来ずにアルバ王国国王マルカム1世 は乱戦の中で、エリク・ビョルンソンに討ち取られる。

「敵将討ち取った!!」

そう叫ぶエリクの声で、国王が討ち死にしたと悟った敵軍は総崩れになり包囲の薄い、グラスゴー軍の左翼から後方に逃走を始める。

 この時、アルバ王国の正規軍を率いていたのは、マルカム1世の長子『ダフ』だった、彼は父に似て勇猛な男だった様で、父王の戦死を知っても撤退を選ばずに、追撃してくるデンマーク侯の軍を迎え打つ。定石通りに横陣を展開して、更に逃走して来た攻撃軍を即座に再編して、遊撃隊を編成した。

「敵将、優秀な男の様だな、決断が早い」

とウィリアムはダフを褒めたが、ダフは数に劣る正規軍が今まで、 デンマーク侯の軍と互角以上に戦えていたのは、戦場がフォース川を挟んだ河岸だった為と言う事を認識していなかった。

 川を渡河して来た兵を待ち構えて攻撃すれば良かった状況と違い、今回は数と攻撃力に勝る歴戦のヴァイキング兵の攻撃をモロに受ける事になり、既に時代遅れとなっていた、防御魔法を掛けた盾を使った防御陣を一瞬で粉砕されて、父王の後を追う事になった。

 ほぼ全軍が敗走する中で、唯一健闘したのは、傭兵のノルウェー系ヴァイキング5000名だ。

この集団を率いているのはウィリアムが倒したエイリークの子ガムリだった。

「ノルウェー王エイリークの子ガムリ、貴様らの旗が本物なら、俺と勝負しろ」

「小僧、大口を叩く、デンマーク侯爵グヌーバー・オーロフ、相手をしてやろう」

「義父上、ここは私が」

とエリク・ビョルンソンが言うと

「婿殿は先程、敵の王を討ち取って居るだろう、この獲物は私に譲ってくれ」

とオーロフは言う事を聞かない。

 双方の兵達が見守る中、二人はヴァイキングの伝統に則って、右手に剣、左手に盾を持って対峙する。

二人は何度か打ち合い、盾が壊れると新しい盾に交換して、また戦う。

「小僧、なかなかやるな」

とオーロフは余裕そうな態度を見せているが、歳の差から来る体力差は大きい、たとえ剣技でオーロフの方が優っていたとしても、 オーロフの方は盾で受ける度に左腕が痺れる感覚があるが、ガムリの方はほノーダメージの様だ。

「エリク殿、これはオーロフ殿が危ない」

とウィリアムはエリクに言うが、ヴァイキングの掟で一対一の戦いに介入する事は出来ない。

 バキっと音がして、オーロフの持つ木製の丸盾が割れた、これが最後の盾だ、これ以降は盾無しでの戦いになってしまう。

 圧倒的に有利に立ったガムリは既に勝ち誇った態度をしている。

「ジジイ、今バルハラに送ってやるぞ」

「小僧、勝ったと思うなよ」

 ガムリの降る剣がオーロフの首と肩の間に振り下ろされると同時に、オーロフの剣は隙だらけのガムリの胸に突き刺さった。

「グオ、ジジイ!!」

 二人はほぼ同時に、膝を付いてお互いの体をぶつける様に横倒しになった。

「ガムリ様」

「義父上」

「二人とも見事な戦いだった、全軍二人の勇者に敬礼」

そこにウィリアムの声が響きわたり、両軍ともヴァイキングの作法に則り、勇者の死に敬意を表す。

ガムリには敵の老戦士が、オーロフにはエリクが付き添い同じ様に仰向けに寝かせると、胸の上に剣を置き、柄を握らせた。

敵味方を問わず、この場に居るヴァイキング全員が、勇者を讃える歌を歌う。

「これ以上の戦いは無用だ、全軍グラスゴーに戻るぞ、勇者オーロフ殿と戦死者の葬儀を行う」

ウィリアムはそう言うと、エリクとその兵二人の四人でオーロフの体を抱え上げた。

「ウィリアム殿見てください義父上のこの満足そうな顔を」

「ああ、私の父もそうだったな、これがヴァイキングの男の死に顔なんだな」

 ガムリが率いていたヴァイキング兵達も同様にガムリを抱えると老戦死はウイリアムに一礼して戦場から離脱する。

 ウィリアムの方も、オーロフと味方の多数の戦死者の遺体を回収して、グラスゴー防衛戦は終了した。


 それから数日の間にグラスゴーの街で葬儀が行われて、ヴァイキング達はヴァルハラに、アングロサクソン人やフランク人達は『エリジウム』に、ブリトン人やケルト人達はそれぞれが信じる天に送られる事になった。

「エリク殿、この後はどうする?、一度デンマーク侯爵の領地に帰還しますか?」

「いや、このまま遠征に参加しますよ、義親父の兵達も全員私に従ってくれるそうです」

「そうですか、正直に言うと兵力、それも勇猛なヴァイキング兵は多い方が私も助かります、帝都の陛下にはデンマーク侯の戦死と、その地位をエリク殿に引き継いで戴ける様に、文を送ってあります、いずれ正式な沙汰があると思いますが、それまではこのまま助力をお願いします」

「了解しました、それでこの後の予定は?」

「補給を済ませたら、アルバ王国、その王都『スクーン』を全軍で攻める予定です『エディンバラ』に船を集めているので、エリク殿は20000のヴァイキング兵を率いて海からスクーンを攻めて頂きたい」

「わかりました直ぐにエディンバラに向かいます」


 そして数日後、エリクの率いるヴァイキング兵20000と、ウィリアムの率いる地上軍10000はアルバ王国の王都スクーンの城壁を取り囲んでいる。

 既に正規軍を失い、傭兵を揃える事が出来ない上に国王と王太子を失ったアルバ王国にもはや継戦能力は無い。

 王都に籠城して、援軍を待つのが有一の戦法だが、アルバ王国は元々カレドニア各地の小国を征服して

建国された国だ、なので援軍が期待できる同盟国も無い。

「一応、降伏勧告は送りました」

「この街はできれば破壊したく無いのだがな」

と副官であるヴェルマンドワ伯と話しているが、降伏勧告に応じる気配は無い様だ

「仕方が無い、いつものアレをやるか」

とウィリアムは、剣を抜を抜き浮遊魔法で宙に浮き、スクーンの城門を破壊した。

味方からは大歓声が上がる。

「私は魔聖ローマ帝国ブリテン王のウィリアム・ノルマンディー、スクーンの全領民に告げる、降伏せよ

降伏した者は我が帝国の臣民として、皇帝陛下の元今までと同じ安寧な生活を保証する。私の力は既に示した通りだ、日没までに回答が無い場合はこの街の全てをあの城門と同じ様に消滅させる、諸君らの賢明な判断を期待する」

と最後通告をした。

 それから1時間もしない間に街の中央にある王宮らしい建物に白旗が翻った。

現在の王宮の主はマルカム1世の次子で僅か5歳のケネスだ、当然この判断をケネスがした訳では無く、生存して居るアルバ王国の貴族達……正確には族長だが……の総意による物だ……降伏に反対した王家に

近しい『ファイフ伯爵』や『アンガス伯爵』達は降伏派の貴族達によって全員殺されている。

 貴族達の代表としてロス伯爵が、白旗を掲げてケネスを連れてウィリアムに正式に降伏をして、生き残った貴族=族長達とケネスは全員がウィリアムと魔聖ローマ帝国皇帝ユーグに臣従を誓う事になり、ケネスは、帝都に移送される事になった。

 そして数日後には、今度はカレドニア地方のヴァイキングの各士族の代表達が、スクーンの街を訪れた。カレドニアのヴァイキングはほぼ全員がノルウェー系なのだが、実は二派に分かれている。

一派はノルウェー王ホーコン1世に臣従をして居る派閥、もう一派はホーコン1世の父親である美髪王ハーラル1世の時代に王とノルウェーの覇権を争って敗北してカレドニアに逃げてきた者達の子孫だ。

今回スクーンの街を訪れたのは後者の士族達だ。


 彼らは降伏勧告を受けて、この場に来たのにも関わらず、武器を所持したまま、跪く事もしないでウィリアムの前に立つ、ウィリアムの隣のエリク・ビョルンソンが激怒して、剣を抜く

「貴様らどういうつもりだ?」

 すると彼らはエリクの前に、跪くと武器を置いて答えた。

「我らはヴァイキングの戦士、我らが頭を垂れるのは戦士にのみ、例えブリタニア王を名乗る者でも我らが『神官』に臣従する事はありえん」

 ヴァイキングの文化では『戦士』のみに発言権がある、そして戦士の中で一番強く人望がある者が族長や王として他の戦士達に認められる、『神官』と言うのは戦士に成れなかった者が着く職業で『占い師』『予言者』を兼ねて魔法が使える者も居る、だがオーディンの意思を伝える者として、それなりに尊敬はされるが勇者として扱われる事は無い。帝国以外のヴァイキング部族の魔術師は『氷の魔女』『氷の巫女』

と呼ばれる女性ばかりなのもその理由だ。つまり彼らは魔術師であるウィリアムの事を『神官』と判断したのだった。

「なるほど、貴殿達は私が剣を使えないと思っていると言う事だな」

ウィリアムはそう言うと、王宮の謁見の間の椅子から立ち上がった。

「誰でも良いぞ、一番腕に自信がある者はかかって来るが良い」

そう言ってウィリアムは隣のイヴァルに剣を借りると、自分の宝剣を預けた。

「皇帝陛下から賜った宝剣をこんな事に使うのは恐れ多いからね」


「神官風情が剣で戦士の俺に叶うと思うのか?」

と戦斧を持って前に出たのは、先日の戦場でガムリの遺体を抱えた男で

「ローガランの王スルケの息子トール」

と名乗り、戦斧を構えた。

「ローガラン?知らない国の名だ、魔聖ローマ帝国ブリタニア王、ヴァイキングの王フロールヴの子ウィリアム、かかってこい」

 ウィリアムはこの時35歳皇帝ユーグより4歳歳下だ、普段の戦闘では殆ど魔法しか使わないので魔術師と思われているが、当然ながら初代の魔法騎士であり、剣の腕は実はダークナイト・ユーグに匹敵する、そして体格も父の血が濃く出ているせいか190cm程の身長があり、日頃着用しているチェーンメールの上からは想像できない程、鍛え上げられた身体をしている。

 剣を構えた、ウィリアムの姿を見て、エリクや他の腕に自信がある物達は直ぐにその実力を悟ったが

残念ながらトールと名乗った男はそれ程の腕前では無かったのだろう、力任せに斧を振るだけで、ウィリアムは剣を合わせる事すら無く、トールを圧倒して、倒れた所で首に剣を突きつけた。

「降参するか、ここで死ぬかどちらかを選べ」

と言った所で、

「もうその辺で良いでしょう」

とエリクがウィリアムを止める。

 ウィリアムに従うヴァイキング達の中で一番の長老である『トルケル』が

「お主達も愚かよのう、少し考ええれれば何故我らがウィリアム様にお仕えしているかわかるだろうに、ウィリアム様は我らがお仕えしたフローブル王より剣の腕は上、そして魔法はこの広い魔聖ローマ帝国で皇帝陛下に次ぐ腕前、そのお方を侮るとはな、お主達などウィリアム様なら一瞬で消し炭にできると言うのに、今命が有る事を感謝するんだな」

「トルケル、その辺にしておけ、お前達が居るから私は普段は剣を振るう必要が無い、だから侮られたのだろう、さて貴殿達はどうする、私に仕えるか、ここで炭になるかどちらかを選ぶが良い」


 結局彼らは全員がウィリアムに従う事になり、各部族を合わせると、ウィリアムは更に10000近いヴァイキング兵を従える事になる、そしてその全軍でカレドニアにまだ残る敵対勢力であるノルウェー王派のヴァイキングを一掃する事に成功して、カレドニア全地域をその手に納め『ブリテン島』全土を制圧する事になった、これによりウィリアムは『征服王』と言う二つ名で呼ばれる事になり、その国は後に皇帝ユーグの許可を得て、ブリタニア王国からグレートブリタニア王国と名称を改める事になった。

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