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第三部 第六章 帝国の盾

第三部 第六部 帝国の盾


 ルテニア王ジョルトは、ヴァスコニア公の出陣を聞くと、まだ雪と氷の残る中、自ら10000の兵を率いて北上して、ルーシー王国の敗残兵と王族の一部が立て篭もる、旧都ノヴゴロドを急襲、一気にこれを殲滅して周辺地域を制圧、ルーシー王国を地上から消滅させると共に周辺のスラブ人達の村落を完全に支配下に置く為に政戦両用の方策を取る事になる。

 この時バルト海沿岸のヴァイキングの一派と戦闘状態に入りそうになるが、ジョルトは彼らの街ラドガを訪れて酒を振る舞い、友好的に通商関係を結ぶ事に成功している。

 元々ジョルト達マジャール人は遊牧民族の血筋で、軍事行動の遠征も自給自足が基本だった、だがユーグの軍団と同行する事で、コックや鍛治屋、大工等の職人や商人達を引き連れて遠征する方式に慣れてからは、この方が便利で快適だと認識を改めて今回の遠征も非戦闘員達を多数引き連れている。

 この中でも、商人や職人達の長の要望で補給と兵站の為に、現地のスラブ人達がヴォルガ川と呼ぶ大河の支流の平坦地に本営を置く事になる。

 この本営は、小さな村落しか無い地域にいきなり一つの街が出現した様な物で、現代の周囲に何も商業施設が無い地方に、突然大規模な商業施設のモールが出来たと言う状態と同じだった。

 本営から数十キロ以上も離れた集落から、ある者は狩猟で得た商品を売りに、ある者は壊れた農機具の修理に、ある者は、病人を治癒魔法師に見せる為に集まって来る様になった。

 この結果ジョルトはこの本営に自分の父の名から『アールパード』と命名して、ルテニア王として本格的な街づくりを指示する事になった。

 これは紀元前326年頃の古代マケドニア王国の王アレクサンドロス3世が13年間に渡って東征し各地に自分の名を冠した街を建設した古事を改めて実践した形になる。


 ジョルトは街の建設が順調な事を確認すると、王都エステルゴムに引き返して、王妃アデルによって訓練された、新たな紅の親衛隊や弟ユタシュ侯爵の軍を中心とした、ルテニアのほぼ半数の兵力を動員して二方向からブルガリアとの国境地帯へ進軍したのだった。北から攻める軍は弟ユタシュが率いる、本来のハンガリー軍20000、西から攻める軍は王妃アデルと自らの親衛隊の20000、弟の軍勢はまだ旧来の編成だが、ジョルトとアデルの軍は既に軍制改革が終わった呪術騎士の部隊になっている。


 そしてジョルトは皇帝ユーグと国境の街『デブレツェン』で会談することになる。

デブレツェンの街の中央にある魔法大教会を仮の本営としたジョルトは、そこで王妃と幕僚達と

侵攻作戦を検討していた。

「まずは『ヴァラディヌム』を占拠してここを橋頭堡として、東に進むと言う事になるな」

そこに衛兵が駆け込んで来た

「国王陛下、大変です皇帝陛下の馬車が……」

「落ち着け、皇帝陛下の馬車がどうしたと言うのか?」

「は、門衛の兵士によると、街の西の街道に突如皇帝陛下の馬車が出現して、こちらに向かっていると」

「なるほど、アデル、どうやら陛下が遠路お越しの様だ、お迎えに行くぞ」

 ジョルトとアデルは街の大門まで、皇帝の馬車らしき物を出迎えに行く。

「本物の様だな、だが馬も無しにどうやってここまで?」

馬車はには御者も居なければ、車を引く馬も居ない、キャビンの部分だけが勝手に走っているのだった。

「叔父上は最近、新しい魔法を色々と発見された様ですか、また何か不可思議な魔法では」

 そう言う二人の前で馬車は止まりドアが開くと三人の后妃に続いて皇帝ユーグが降りて来た。

「皇帝陛下」

二人が片膝を付こうとするのをユーグは止めた。

「堅苦しい挨拶は無しにしよう、少し話をしたいが良いか?」

「は、ではこちらへ」

 つい先程まで侵攻作戦を検討していた幕舎のテーブルを六人が囲んで立つ。

「ジョルト殿、 早々にルーシー王国の残党を一掃して周辺を制圧したそうだな、相変わらず素早い」

「お褒めに預かり恐縮です、それで今日は?」

「ああ、まずはこれだ、アデル、お前ずっとジョルト殿の剣『キャリバーン』を使っているだろ、それは

元々ジョルト殿に合わせて作った剣だから、お前には少しバランスが悪いし、魔力の流れも微妙なはずだ」

「え、そうですか叔父上?、私は使いこなしていると思ってましたけど」

「ルクレチア、あれを」

「はい、陛下こちらに」

「アデル、これからはこの剣を使うと良い、宝剣『ウェスタ』だ」

「まぁ、なんと綺麗な剣、叔父上ありがとうございます」

とアデルはその剣を手に取り、うっとりと見つめている。

「この剣とジョルト殿のキャリバーンは、夫婦剣になっていてね」

「はて、陛下、夫婦剣とは?」

「エーテルの流れをアデルに合う様に調整している内に、面白い機能を見つけてね、エディルド、ハトヴィヒ、見本を」

「はい陛下」

二人は自分の宝剣を抜いて、前方で重ね合わせた。

「この様に剣を重ねて、同じ魔法を同時に発すると、その威力が大幅に上がるんだ」

「なんと、それは面白いですな、こういう感じですか」

とジョルトは剣を抜いて、アデルの剣と重ねた。

「ほう?」

「あら?」

ジョルトとアデルは二人同時に声を上げた。

「二人共、エーテルの流れを感じられるよね、あ、今魔法を試すのは止めて置くと良いよ、兵士達を巻き込んでこの街が消滅するからね」

「そんな威力なのですか?」

「そんな威力なんだ、さて、それではここからは本題、ブルガリア帝国領に侵攻するつもりだよね」

「はい陛下」

「他の軍と先陣争いになっても問題だからね、ドナウ川から北側はをジョルト殿に任せる」

「それはありがたいですが、それだと私の領地が大きくなり過ぎないですか?」

「そうその通り、だから戦が終わったらバイエルンは返上してもらうつもりだ、でも一番問題なのはそこじゃ無い。いずれ来る東方からの敵に備える必要がある、敵はわかっているよね」

「あ、我らの祖先匈奴を西に追いやった東方の遊牧民族……ですね」

「その通り、おそらくは10年以内に奴らは攻めて来るだろう」

「つまり、ルテニア王国はその最前線になるって事ですね、難儀だな」

「そう言う事だから、とっととブルガリア帝国の北半分を制圧して、国作りに励んでくれ、頼む」

「相変わらず皇帝陛下は無理を仰る」

「我が友ジョルト殿なら、問題は無いだろ?」

「ああ、任せてもらいましょう」

ジョルトは苦笑して了承する以外無かった。

「そうそう、ブルガリア帝国の敗残兵達は東に逃すのでは無く、南に追い込んでくれると後の事が助かる」

「了解しました」


 会談は終了してユーグ一行は馬車に乗り込む、そしてその馬車はジョルトとアデル、それに本営の兵士達の目の前で消えた。

 この馬車……のキャビンだけ……が馬無しに動くのは浮遊魔法と飛行魔法を継続的に発動させている結果で、更に転移魔法を極めたユーグは、ついに馬車に人を乗せた状態で馬車ごとの転移が出来る様になっている。

「皇帝陛下は、もはや人の領域を超えているな」

「そうですね、我が叔父とはいえ、少し恐ろしくもあります」

と、感想を言うジョルト夫妻だった。


  この時点でブルガリア帝国は皇帝を失い精鋭の兵50000は消滅して帝国内は皇位を巡って内乱状態にある、ジョルトの精鋭、呪術騎士部隊の敵は存在しなかった。

ブルガリア帝国の北部エルデーイ(トランシルヴァニア)地方は瞬く間に蹂躙され、ルテニア王国の占領地なる。


 同じ頃、スロバニアの王、ダークナイト・ユーグもまた出陣をしている、今回は妊娠している妻マリカは留守番になる

「子供が生まれる前には戻って来る、子供の為に北の領地を土産にな」

と愛妻マリカに言っての出陣だ。

 ダークナイトの目的地は、領地スロバニアから北方のバルト海沿岸の地方だ、南から順に『リトア』『リヴォ』『エスト』と呼ばれるバルト人が多数を占める地域が続き、最後にフィン人と呼ばれる者達の領地が広がっている。

 この地域はローマ帝国の領域外なので、当然の様に魔法教会も存在しない、また民族的にはバルト人、スラブ人、ヴァイキンングの各部族が混在している地域になる、ただそれでも夏季にはライ麦が収穫可能で、バルト海での漁業、豊富な森林を背景に林業や狩猟による毛皮や肉類も採れて、寒冷地でありながらも暮らしやすい地域だった。

 この時代にはまだ、この地方には纏まった国は無く、貴族や大領主と言う物も存在していない。

バルト海沿岸地域の漁村や内陸部に村が点在する地域だ、従ってダークナイトは、ポーランド平原の各地を制圧したのと同じ手法で、各地の村落を周り、帝国への臣従とそれに対する対価としての安全保障、それに魔法教会の設立と同時に医療の提供と言った方法で、拠点となる街を作り、この地を魔聖ローマ帝国の領地として行った。リトア地域の港町『メーメル』、リヴォ地域の『リガ』、エスト地域の『タリン』

等はその後、この地域の中心的な街として発展していく。

 ダークナイトは今回の遠征には本来の兵10000に加えて、新たに志願してきたポーランド平原の各部族の若者達や魔術師達10000を引き連れての遠征だった、ただ全く戦が無い状況は本人にとっては極めて遺憾で

「ああ、退屈だどこかに大軍を率いる王でも居ないのか」

と愚痴を言っている様だ。

 ただ戦闘が全く無かったかと言うとそうでも無く、バルト海沿岸のヴァイキング系の村では当然の様に

戦いになり、ダークナイトは彼らを武力で捩伏せて北上を続けることになる、その中では唯一先にジョルトが友好関係を築いていたラドガの街だけは、ダークナイト一行を歓迎して、道案内を買ってでた。

 これはこの近辺のヴァイキングがスウェーデン系デーン人だった事に対して、彼らはアイスランドから海を渡ってこの地に漂着して土着した部族だったからだ。


 ダークナイトの軍はスミオ湾(フィンランド湾)を迂回する形で北に進み、ここに本営を設ける事になる。当然ダークナイトの軍も非戦闘員を多数引き連れていて、スミオ湾を望むこの本営は現地の言葉でラドガ湖と呼ばれる大きな湖から流れるネヴァ川の辺に作られて、海運と陸運両方の一大拠点となり、ダークナイトはこの街に『リシャールブール』と名付けた。ジョルトの作った街『アールパード』と並んで、帝国北方領地の中心的な街として発展して行く事になる

 偶然なのか必然なのか、この二つの街は我々の世界の『サンクト・ペテルブルク』と『モスクワ』とほぼ同じ場所に存在する。

 ここから先は、元は中央アジア系の騎馬民族と言われるフィン人が多数住む地域になる。

そしてダーグナイト・ユーグは今回の遠征で初めて本格的な戦闘を経験する事になった。


 二人の王と三人の公爵が其々の戦線を戦っている頃、ブリタニアでも本格的な戦闘が始まろうとしていた。その場所は、『カレドニア』(スコットランド)とブリタニアの国境の街、『グラスゴー』だ

 この街は元々ローマ時代の城塞都市で、やはりローマ時代の城塁『アントニヌスの長城』が付近を通っている。この街に北カレドニアのケルト人、アングロサクソン人、ヴァイキングの混成部隊が攻撃を仕掛けて来たのだ、この部隊を率いているのは、カレドニア東部スクーンを王都とするアルバ王国の王マルカム1世 だ、このアルバ王国とは、ウィリアムがノーザンブリア王エイリークを倒して、エディンバラを占拠して以来北東のフォース川を境に小競り合いが続いていて、フォース川を境に押しかけ援軍のデンマーク侯オーロフとその婿エリク・ビョルンソンのデーン系ヴァイキング兵15000が優勢に戦いを進めていた。

 前線の不利を悟った、マルカム1世は状況を打開する為に、カレドニアに入植しているノルウェー系ヴァイキングを傭兵として雇い、20000の軍で『グラスゴー』に攻めかかって来たのだ。

 グラスゴーを守るのは、ブリタニア王国の正規軍5000、これは殆どがウィリアムが連れてきたノルマンディやブルターニュの歴戦の兵だ。編成は父が率いていた4000のヴァイキング兵と500の魔術師500の騎士だ。

 王都ロンドンにグラスゴーからの早馬が到着して、状況報告を受けたウィリアムは、すぐに兵10000で出陣する。

「行って来る」

「はい、お気をつけて御武運をお祈りいたします、一緒に行けないのが残念です」

「今は、お腹の子供が第一だからね、大丈夫だよ」

 ウィリアムの兵は、まだ軍制改革の途中で、魔法騎士もまだ2000名程だ。元々が父の代からのヴァイキング兵を主力として、自分の領地だったブルターニュの騎士と魔術師を併せた編成だった為だ。

「ウィリアム様はお優しいですな、我らの若い頃では考えられませんな、ウチのカカァ等は臨月間近でも

一緒に戦場に立っていた物ですが」

「はは、僕もそう言ったら、皇后陛下に怒られてね、あの方は怖いですからね」

「違いない、皇后陛下は確かローマの出身でしたね、しかしあの方こそヴァイキングの女の様ですね」

と余裕の態度の古参のヴァイキング兵イヴァルと轡を並べてグラスゴーに急行する。

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