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第二部 第一章 ロンドン攻略

少し時間が開いてしまいましたが二部開始です、結構前に書きはじめていたのですが、途中でFF14のアプデがあり、そっちに時間を取られてましたw

 第二部 プロローグ


 我々の世界の歴史にも、『魔聖ローマ帝国』と対を成す国家がある。

現在のドイツやハンガリー、オーストリアを含んだ『神聖ローマ帝国』だ、だがこの国家は、後世の哲学者から、『神聖では無くローマ的でも無く帝国でも無かった』と揶揄される連邦国家だった。

 だがユーグの『魔聖ローマ帝国』とは旧フランク王国を母体としていると言う事以外共通点は全く無い。

 皇帝としてのユーグは、ローマの魔法教会教皇の任命権を持ち、旧フランク王国の版図を殆ど治めている。当然かってのローマ帝国の帝都だったローマもユーグの支配する所となっている。

 ローマ帝国時代『全ての道はローマに通ず』と言われた様に、各地ではローマ街道が整備されていた、それが蛮族であるゲルマン人の侵入から続いた動乱の時代に街道は整備する者が無く失われた所も多い。

 ユーグは公共事業として、帝国内の各都市を繋ぐ街道をローマ時代の物よりアップグレードさせた形で再建させている。

 もちろん、街道の中心地はローマでは無く、新帝都『ユーグウルブス』になる。帝国版図での戦乱が収まった事と、この街道整備の公共事業により、帝国内の景気が拡大して税収が増え、物資や食料の流通が盛んになり、それは各地の領主や領民、商人、農民や職人達にも波及していく事になり、当然税収も増えて、更に公共事業として畑の開墾や水路の整備、橋梁の設置などが行われて、帝国の経済は急速に発展して行く事になる。

 

 この事は1/10税によって運営されていた各地の魔法教会や魔法修道院の充実にも繋がり、かっては裕福な商人や領主、貴族の子弟のみが学んでいた魔法や錬金術も庶民へと広がる事になる。

 ユーグはこれまで常識とされていた魔法学の誤りを正し、帝国内の魔術師の絶対数と能力値を高める事に成功している。

 すなわち、『魔術師の才は生まれつきで一生変化しない』『魔術師は自分のエーテルと相性の良い一種類の属性の魔法しか使えない』と信じられてきた二つの事柄だ。

 ユーグの長年の研究と実践により、それが間違いである事が明確化したからだ。

生誕時に魔術の適正が無いと判断された子供でも適切な指導をすれば、それなりの魔術師として戦場に出られる様になる事もわかってきたし、ユーグの様に全ての属性の魔法を使える者も増えている。

 皇后マロツィアはこの事をユーグから伝えられると、

「あら、では私も魔法が使える様になるのかしら?」

と言い

「子供の頃から訓練をしていたらね、残念だけど大人になったらもう無理だ」

と言われて悔しがったと言われている。

 この事で後に魔聖ローマ帝国では軍制を変更して、主力を『魔法騎士』……剣技と魔法両方を使える騎士……とする事に成功している、これは旧態以前とした軍制の周辺国と比較すると、圧倒的な戦力を備える事になる。



第二部 第一章 ロンドン攻略


 それに遡る事,

数年

「船の準備はどうだ?」

「まだ、半分しか集まっていません父上」

「そうか、では兵を二回に分けて渡るか」

「そうですね、その方が宜しいかと思います」

 ギョームは父の館で、この度の出兵準備をしているが、一番の問題は船の調達だった。

20000以上の兵をカレー海峡を超えて北海に出てロンドン近郊に運ぶのには、熟練の船乗りと大型のロングシップが200隻以上必要なのだ、だがカーンの街でも周辺でもそれだけの船は無く、急いで建造をしているが、それでも100隻を揃えるのがやっとだった。その為に馬や食料を運ぶのは諦めて現地で調達をする事になる。

 今回の遠征の第一目的地のロンドンは、デーンヴァイキングが一時占領していたが、魔法歴886年、当時のウェセックス王アルフレッドに奪還されて以来 ウェセックスの領土となっている。

 イングランド東部の要衝ロンドンを攻略するのが、全イングランド侵攻の最初の一歩となる。


 魔法歴933年、ロドルフとギョームに率いられた船団は、ノルマンディとブルターニュの兵10000を乗せて、カーン近郊の海岸線から海に出た、最初の目的地は大陸側の小都市カレーだ、そして残りの兵10000も陸路でカレーを目指す、船団はカレーとロンドン郊外のデーン人居留地を往復する事になる。

 船団にはノルマンディ公とブルターニュ公の赤地に金のライオンの旗と共にヴァイキングのカラス旗も掲げている。

 デーンロウにはこの頃は統一された王が不在で、バイキングの各部族がそれぞれ独自に各地の街や村を収め、ある者達はイングランド=ウェセックスと協調しある者達は戦っていた。

 主な街は、ヨーク、レスター、リンカン、ノッティンガム、スタムフォード、ダービー等でそれぞれに

王を名乗る者や首長が存在した。

 ロドルフはその中の最大勢力……といっても2000人程度……を率い、かっての王グズルムの血統を自称するマグニとコンタクトを取り、今回の遠征の案内人として使う事にしている。

 既に数隻の先遣隊が、マグニの元で、ロドルフの到着を待っている。

それから、数日間かかって、ロドルフの軍勢は全員ロンドン北東の小都市チェルムスフォードに入る。

「ロドルフさんよ、あんたロンドンを攻め取るなんて威勢の良い事を言うが、あの城壁に囲まれた街を

どうやって落とすんだ、昔俺たちの先祖が落とした頃は、あんな城壁はなかったんだぞ」

とマグニは言う

「(なんだこの男、王の血統の割には随分と品が無い)」

とギョームは思う、それにこの男が率いる2000名も兵士と言うよりは明らかに盗賊の様な集団だった。

 デーンロウに住むかってのヴァイキングの戦士の子孫達は、既に戦士では無く農民や職人になっていて

ヴァイキングの誇りを失っている者の方が多い、これらの者達を兵士として鍛えるのもギョームの仕事だった。

「ふん、城壁の方は息子がなんとかする、その前にこの手紙をロンドンの領主に届けてくれ」

「おいおい、あんた知らないのかロンドンには領主なんて居ないぞ、そうだな色んな職業ギルドの長が

集まっている所があるから、そこにでも届けるか? でも何が書いてあるんだ?」

「降伏勧告だよ、降伏すれば領民の命は保障してやるって言う物だ、俺は優しいんだ」

「そうかい、降伏など絶対にしないと思うけどな、まぁ届けてやるよ」

とマグニはロドルフの手紙を懐にしまった。

 幕舎代わりの酒場から外に出ると、接収した家の前に人だかりができている。

家の入り口守る様にギョームの兵が立ち、その前にマグニの兵達が数十人集っている。        

「よう、この中に凄い別嬪さんが入って行くのを見たぞ、俺たちにも拝ませてくれ」

と叫んでいる、ギョームは子供の頃から父や他の元ヴァイキング兵達に教わり、彼らの言葉がわかる。

「なんだお前ら、俺の女房になんか用か?」

と言うと、一人の兵士が、戦斧を持って、ギョームの前に立ちはだかった。

「小僧の女房だと?、ふんこの俺様がもらってやるよ、そんな細い剣を持った優男には勿体無い」

と大声で言うと、周囲の兵達も同調して卑猥な言葉で叫び始める。

「(仕方が無い、こいつを成敗すれば、少しは大人しくなるだろう)」

と思った、ギョームが剣を抜こうとすると、家の中からまだ少女の様な女性が出てきて、自分の剣を抜いて斧を持った男に振り下ろした、男は剣から発せられた氷の槍に貫かれて一瞬で絶命する。

 この女性はギョームの妻リュートガルド、結婚の祝いに皇帝ユーグ1世から拝領した宝剣『バルト』を一閃したのだ、元々は治癒魔法の使い手だったリュートガルドは夫ギョームの指導で今は氷魔法を得意とする様になっている。

『氷の魔女!!』 

氷魔法の効果は絶大で、騒いでいた兵達が腰を抜かすのがわかった。

「貴様ら、俺達の大将を誰だと思っているんだ、氷の魔女を従えた、ヴァイキングの王フロールヴ様だぞ

こちらはその子息ギョーム様とその奥方様だ、命が惜しく無い奴は前に出ろ」

と大声で話すのは父の副官を長年務める元ヴァイキングの老兵イヴァルだった。

「げぇー、まさかそんな」

とマグニの兵士達は平伏する、既にフロールヴの名は伝説となっていたからだ。

「イヴァル、こいつらはこのままでは使い物にならない、ヴァイキングの戦士らしく鍛えてやれ」

とギョームは言うと、リュートガルドを抱える様にして、空に浮かんだ、師匠で皇帝ユーグ直伝の浮遊魔法だ、ギョームは攻撃前にロンドンの街を見学してこようと思ったのだった。

その場の全員が唖然として見守る中、ギョームは悠々と空を飛んでいく。


 テムズ川にかかるロンドン橋に続く街道沿いの茂みに降り立ったギョームは妻に

「どうかな、僕はロンドンに仕事を探しに行く旅行者に見えるかな?」

「うーん、ちょっと無理がありますね、旦那様は服装が立派過ぎますから、どこか異国の領主の子息と言う事にしてはいかがでしょう?」

「そうだね、それで行こう」

 ロンドンにはローマ時代から有る防御壁『ロンドンウォール』がある、だがこの壁は保守されていなかったので、100年程前にヴァイキングは軽々とロンドンを制圧している、その後壁を補修したのは

ウェセックスのアルフレッド大王(アゼルスタン王の祖父)の時代になる。

 昔のヴァイキングはロンドン橋に主力を集中させると見せかけて、橋の反対側の穴だらけの城壁を突破して街を落としたそうだが、それは今でも同じだろう、わざわざ敵が待ち構える砦化された橋に川を遡って攻撃するなど、正気の沙汰では無い、街道に続く城門は普段は開けられているが、敵軍ヴァイキングの襲来事には閉められる事になり、そうなると弱い魔術師しかいないデーンロウのヴァイキング達では攻略は困難だろう。


 だが、ギョームとその兵達の魔術師部隊なら、この程度の城壁も城門も破壊するのは容易い事だ。

そう思いながら、橋を渡り、ロンドン市街に入る、城門を守る兵はギョームの方を見る事も無かった。

「なんだ、城門で検問も無いのか、何か聞かれると思ったのに」

「そうですね、パリの門なら身分を示す物の提示が義務付けられていましたね」

 イングランドは島国で、敵は今の所船で北から来るヴァイキングだけで、国内のバイキングは今は統一された勢力になっておらず、警備は弛みきっているのだろう。


 ギョームとリュートガルドは街の中の酒場に入ってみた。

エールを飲みながら議論をしている客が、何組かいる

「ヴァイキングの王フロールヴからの降伏勧告が来たそうだが、どう思う」

「いや、それ本者なのか?、フローブルってもう何十年も名前を聞いてないぞ」

「噂では、大陸でフランク王の貴族になったって話だぞ」

「そんな奴がなんで今更ロンドンに攻めてくるんだ?」

「なんだ、知らんのか、行方不明になっているウェセックスのアゼルスタン王が大陸のフローブルの領地を攻めたって話だ」

「そうなのか、迷惑な話だな勝手にイングランド王を名乗り、今度は俺達を戦争に巻き込むのか」

「でもそれなら、そのヴァイキングの王の目的はウェセックスのウィンチェスターだろ、じゃあロンドンは関係無いじゃないか、門を開けたままにして通って貰えば良いんじゃ無いのか?」

「馬鹿かお前は、ヴァイキングが黙って通るだけなんて本気で思っているのか?」

「今のロンドンには傭兵の門番位しかいないんだぞ、戦うなんて無理だ」

 議論は堂々めぐりで、酒も入っているいる事もあり結論が出る様な事でも無い。


「では今夜はどこかの宿で泊まって明日の朝に、一仕事しようか」

「はい旦那様」

 二人は酒場でエールを飲みながら、硬いパンと肉、チーズの食事を摂ると、酒場の三階にある少し高級な部屋で一晩過ごす事にした。

 兵士の目が無い部屋で二人だけで過ごせたのがリュートガルドは嬉しかったらしく、翌朝もとても機嫌が良かった。


「さて、ではお仕事をしようか」

 ギョームはロンドン橋の街側にある大門の前に立つと、飛行魔法で空に浮く。

「私は、ヴァイキング王フローブルの子ギョーム、既に父からの降伏勧告は伝わっていると思う、抵抗も籠城も無駄だ、その理由を今からお見せしよう、門番の諸君大門から離れたまえ」

と大声で空から怒鳴った。

「人が空に浮いている、いや飛んでいるぞ」

「ヴァイキング王の息子だと?」

とギョームの足元に人が集まって来た、

『ヘブンリーファイヤー』

ギョームの声が響くと、師匠のユーグから伝授された究極魔法が発動して、上空に巨大な燃え盛る彗星が現れて落下、大門を完全に消滅させた。

「(まだまだ陛下の様な威力は無いか)」

とギョームは落胆したが、これでも城壁や大門程度なら跡形も無く消せるので、威嚇効果は十分だろう

「回答の刻限は、正午までだ、降伏をするなら、すべての城門を開けたままにして、白旗を掲げよ」

ギョームはそう告げると、地上に降りて、リュートガルドをまた脇に抱えると、東の空に飛んで行く。


 ギョームが去った後、ロンドンの職業ギルドの代表達は満場一致で、降伏を受け入れて、城門の上に白旗を掲げた。

 これにより人口一万人程のイングランドの商業と貿易の中心地ロンドンは、無血開城をしてロドルフ=

フローブルの手に落ちた。

 ロンドンに入ったロドルフは職業ギルドに対して、30%の税を納める事だけを要求して今まで通りの生活を保証した。

 そしてヴァイキングの悪い癖がまだ残っていて、略奪をしようとしたマグニの配下達はロドルフの兵士達によって粛清された。

「愚かな奴らだ、金の卵を産むガチョウを殺す様な真似をするとは」

と彼らを処刑したギョームは妻に言う、この時ギョームは自身の拠点をこのロンドンにする事を考えていた。

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