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第一章 誕生

 前作の日本の戦国時代初期話から、今度は思い切りマイナーな中世ヨーロッパの話になります、しかも

歴史改変と言う事で、果たして皆様に読んでいただけるのか疑問でもありますが、とりあえず、第一話をあげて見ました。

 需要が無ければお蔵入りかもしれませんw

プロローグ 


 この世界には、マルチバース『多元宇宙』と言う概念がある、これはそんな多元宇宙の別の地球の話だ。

 その地球でも歴史は我々の歴史と同じ様に進んで来た、古代、我々の世界で中東と呼ばれている場所に一つの王国が存在した、その名をイスラエル王国と言う、その王ソロモンは『神』から知恵の指輪を授けられ、魔法書『天使ラジエルの書』を著したと言われている、だが王国はソロモン王の死後、北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂して両国は激しく争った、その結果は両国とも共倒れになり、アッシリア帝国に滅ぼされて、その独自の一神教と共に歴史から姿を消す事になった。

 そして、数百年後ローマ帝国が起こり地中海世界とその周辺地域の殆どを支配する事になる、やがてローマ帝国ではキリスト教が国教となる……その世界ではそうならなかった、イスラエル王国とその民族が滅びた事で、キリスト教やイスラム教の母体となったユダヤ教が存在しなくなったからだ、その代わり北方のゲルマン民族が襲来した際に、ローマに新たな学問が起こる、それ魔法学だ、この魔法学は偶然古代イスラエル王国の遺跡から発掘された『ラジエルの書』を長年に渡って解読して誕生した学問だった。この世界では我々の世界の様にイエス・キリストの誕生を元年(紀元)とする西暦は存在せず、代わりに魔法学が誕生した年を紀元とする魔法歴が暦法として存在する事になる、偶然なのかその紀元は西暦と同じ年だ。

 魔法学は『四元素説』水、土、風、火の四つのエレメントを人の持つエーテルで具現化する事で『魔法』として成立し、魔法を使える者を魔術師と呼ぶ様になる。同時に魔法学を補填する様に錬金学も発展して、錬金術と言う名の科学が発展する様になる。

 水の魔法、土の魔法、風の魔法、火の魔法という攻撃魔法と防御魔法が成立して、魔術師達が北方の蛮族ゲルマン人との戦いで活躍をした。更にそれとは別に回復魔法や生活魔法と言われる魔法も発達する事になる、だが、それでも帝国の衰退は避けられず、やがてローマ帝国は魔法歴395年に東西に分裂して、476年西の帝国がゲルマン人により滅ぼされる。

 これにより帝国の首都だったローマには魔術師達を束ねる魔法庁、魔法学を研究する魔法教会、魔法修道院が設立されて、魔法学の首都となり学術都市となった、やがて魔術師の中でも強大な力を持つ者が大魔術師となり、更に大魔術師の長は『魔法教皇』と称する様になった、そしてガリア地方やブリテン島各地に魔法教会や魔法修道院が次々と建設されて、魔術師を目指す者達が学ぶ様になる。我々の世界のキリスト教のシンボル十字架に変わってこの世界では『四芒星』のシンボルが教会の屋根に輝く事になる。

 魔法教会ではそれぞれの属性に応じた神の像が置かれて、魔術師達は自分の属性の神に祈りを捧げる事になる、水の神ネプトゥヌス、土の神テラ、風の神ヴェンティ、火の神ウルカヌス、医療の神アスクレピオス等だ、この自分の主神に祈りを捧げる習慣はやがて魔術師達から、この頃誕生した騎士階級に広まり、騎士達も軍神マルスの像を建てて祈りを捧げる様になって行く。

 だが、修道院で学んでも実用的な魔術師レベルに達する者は稀で、20年以上学んでも、やっと薪に火を付ける程度の火の魔法しか使えない者や、もう少しましで風魔法で洗濯物を乾かす程度と言う者が普通だった。それでも多くの者が純粋に最先端の学問として魔法学と錬金学を学ぶ様になる。


 魔法歴481年、ゲルマン人の一派フランク人の王クローヴィスが、ガリア地方を中心にクローヴィス1世として『フランク王国』を建国する、クローヴィス1世は積極的にローマの魔法学を取り入れて、戦場に騎士と並んで魔術師を多数投入して、周辺諸部族を撃破従属させ王国の版図を拡大していく、そしてブルグント王国の王女クロティルドと結婚する、このクロティルドは優れた魔術師でもあり、フランク王国では魔術師の地位が騎士と並ぶ程高くなった。

 ただ、訓練すれば誰でもそれなりの実力に達する騎士と違い、魔術師の才は生まれつきであり、しかもこの頃は親の才能を引き継ぐ事は稀であると考えられていた。その為に王妃との間に生まれた子達に誰も魔術師としての才が無く王は大いに落胆したと言う、その後王国はこの頃のフランク人の伝統『財産均等分割相続』により、庶長子テウデリク、クロドメール、キルデベルト、クロタールの四人に分割相続された。この後フランク王国は王や王朝が変わる度に、統一、分割、統一を繰り返す事になる。


 魔法歴843年魔聖ローマ皇帝を称していたルイ1世の死後、王国はまた西フランク王国と中部フランク王国、東フランク王国に分裂する。

 861年、西フランク王国のシャルル2世国王は台頭するブルトン人とノース人に備える為に有力な諸侯を『ネウストリア辺境侯』に任命する。辺境候と称されるが実際の地位としては伯爵相当であり、『辺境伯』と呼ばれる様になった。

 

 第一章 誕生


 魔法歴898年、初夏 ネウストリア辺境侯ロベール・カペーは先ほどから、パリ市街の館の自室で、落ち着かずにウロウロとしている、彼の二度目の妻ベアトリスが先程産気付いたからだ、ロベールには先妻との間に娘アデル、ベアトリスとの間にも娘エマが居るが、未だ男子に恵まれていなかった。

 ロベールは騎士であるが、土の魔法を使う魔術師でもあった、娘達も魔術の才があり、今回はどうしても後継となる男子の誕生を願い、守護神として崇める軍神マルスに三日三晩の祈祷をした所だった。


「伯爵様、お生まれになりました、玉の様な男の子でございます」

家令のジャンピエールが、ノックを省略して部屋に駆け込んで来た。

「真か、それは出来した」

ロベールが産室に行くと妻は、お産が楽だった様で既に笑みを浮かべてロベールを迎える。

「旦那様、ご覧ください、貴方にそっくりな男の子です」

と赤ん坊を見せる。

「うむ、私に似ているかな、どうも目元は父上の方が似ている様だが」

ロベールの父はロベール豪胆公と言われた先代のネウストリア辺境侯で、国王巡察使としてブリトン・ヴァイキング(ノース人)連合軍の戦いでロベールが幼少の頃に亡くなっている、なので父の面影は肖像画でしか見た事がなかった。西フランク王国の王位に付いていた兄のウードも、今年の一月に亡くなり、現在王位はカロリング家のシャルル3世が継いでいる。


「それに旦那様、これをご覧ください」

と魔術師であるベアトリスが赤ん坊の右手を取り体内エーテルを流すと、赤ん坊の体が激しく光を放つ。

 生まれた赤ん坊に魔術師の素質が有るか調べるのは、魔術師が体内のエーテルを子供に流す事で簡単に判別が出来る、素質の無い子供の場合には何も起こらないが、素質の有る子供の場合は体内のエーテルが反応して体が発光する、そしてその発光の様子で魔術の強さが判断できる、だからこの国では子供が生まれたら直ぐに魔術師が子供に魔術師の素質が有るか調べる習慣ができている。

大体100人に一人は淡く発光する子供が生まれる事はわかっている、だがこの赤ん坊は信じられない程強く発光しているのだ。


「なんと、この子には大魔術師の!!」

「ええ、旦那様との初めての男の子が、魔術師としての才があるなんて、私はなんて幸運なんでしょう

しかも見てくださいこの光、この子は将来立派な大魔術師となる事は間違いありません」

とメアトリスは涙を流して喜んでいる。

 大魔術師の才能は、千人に一人しか現れない、なので自分の家系にその子供が生まれた時には一族総出で祝うのがこの頃の習慣だった。

 ロベールは早速、以前兄が院長を務めていた、トゥールのサン・マルタン魔法修道院に従者を送り、息子の家庭教師の派遣を依頼しようとして、妻に笑われる。

「旦那様まだ早いですよ、それよりこの子の名前を決めてくださいませ」

 そこで我に帰ったロベールは、自分がまだ子供に名前を付けていない事に気が付き、しばらく悩んだ後に、息子にユーグと名付けた。

 

 半年後、西フランク王国の実力者であるロベール伯爵の嫡男で、大魔術師となる素質の子供が生まれたと言う事で両家の親族一堂が会し、国王シャルル3世も列席してユーグの誕生記念の宴席がパリの館の宴会場で大々的に行われた。


 そしてユーグが5歳になるとロベールの付けた魔術師の家庭教師と、剣の教師によって英才教育を施され、月日を重なる事になる。

 ユーグは父から受け継いだ土魔法と母から受け継いだ風魔法の適正が有る様で、師匠であるギョームを

驚かす程の速度で魔法を覚えていく。

 同じ様に剣の才にも恵まれていた様で、こちらもロベールの父親の頃から家に使える歴戦の勇士老騎士のアンリの元で、剣の腕を磨いている。


 ユーグが10歳を迎える頃には、魔法も剣もそこそこ使える様になっていたが

「ふむ、どうもユーグ様はあまり勉学は好まれぬ様ですな」

と言うのはギョームだ。

相変わらず魔法の覚えが早いし、魔法学の書物も読んでいる様だが目を離すと直ぐに庭に行き剣の稽古をしているからだ。

「まぁ、この位の子供は座学より体を動かす方が好きですからな」

と言う老騎士アンリだった。

 この頃、戦闘はローマ時代からの伝統的な重装歩兵の戦闘から、騎兵の戦闘に移行している。重装歩兵を運用するには、5000人規模の歩兵部隊が数個必要だが、ローマ帝国の全盛期と違い、国王でもその規模の歩兵を揃える事が出来なくなった事やローマから伝わった魔法学を独自に発展させた、アラブ人の帝国、ウマイヤ帝国との戦いで重装歩兵が機動力の有る騎兵に対抗出来無い事がわかり、その為にフランク族の武器として有名だった斧フランキスカや槍アンゴに変わって、剣スパータが主流になり、騎乗して剣を持つ『ロターノ』=『騎士』が戰いの主力となっていく、もちろん戦場では魔術師が大きな戦力となっている事は変わらないが、魔術師の絶対数が少ないので、国王やそれに準ずる領主層しか魔術師を雇う事は出来ない状態も続いていた。

 魔術師以前の戦い方、盾を持ち槍襖を作るローマ式戦術や、同じく盾を持ち剣で戦うノース人のシールドウォール戦術は未だ健在だが、弓矢とは桁外れな魔法の威力で、盾は簡単に粉砕されてしまう。

 その為、西フランク王国では盾は廃れて行き、代わりに魔術師の防御魔法に頼る戦術が普及して行く。

そして剣も盾を使う片手剣から、より攻撃に特化した『ツヴァイヘンダー』と言う大型の両手剣が主流になっていく。

 少年ユーグは魔法学が嫌いなのでは無かった、逆にもっと学びたいと思っているのだが、ギョームの提供する魔法修道院の定型の内容に興味が惹かれないのだ。

 一般に魔術師は自分のエーテルと相性の良い一種類の属性の魔法しか使わない、違う属性の魔法を使おうとすると、体に多大な負担がかかり最悪命を落とすと言われているからだ。

 ユーグもその事は師匠であるギョームから耳にタコが出来る位教わっていた。

だが、ユーグは自分で試してみないと納得ができなかった、なのでこっそりと館の庭で魔法の練習をする内に、ユーグは自分が全属性の魔法どころか回復魔法まで使いこなせる事がわかってしまった。

 幸いにもこの館には父母の魔法学の本が山の様にあり、ユーグはその本を内緒で読んで独自に勉強をしているのだった。

 書庫の魔法の歴史書によると、古代に滅びた中東の王朝に『ソロモン王』と言う王がいて、この王は彼らの『神』からの神託を得て『魔法』が使える様になったと言う事だ、この王の書いた書物『天使ラジエルの書』が歴史上最初の魔法の書だと言う。ユーグはこの本の写しに記されている古代の魔法を再現しようと勉強をしているのだった。

「(この天の火と言うのはどんな魔法なんだろう、海を裂いたと言う魔法は風魔法なのかな?)」

と興味が尽きないのだった、そしてユーグはこの時点で魔法学の常識とされている『一種類の属性の魔法しか使えない』と言う事が間違いで、それは体内のエーテル量によると言う事を体で理解している、エーテル量を増やす修行や食事をすれば二種類、三種類と使える魔法の属性が増えて行く頃を実践して身につけた。

 これも優秀な魔術師だった母のおかげで、子供の頃からそんな食事をしていたので、ユーグは同じ年の

魔術師達と比較すると五倍程の体内エーテル量がある。

 エーテル量を更に増やすには、集中力を高めて、周囲のエーテルを体内に取り込むと言う技が必要で、それには無心になれる剣の修行が一番だと思っている、その為に大人達から見ればユーグは魔法を座学で学ぶよりも、子供用の両手剣で体を動かす剣の修行をする方を好んでいると思われていたのだった。


 この頃は、まだ我々の歴史の中世ヨーロッパで主流となった『プレートアーマ』はまだ無い

騎士も魔術師も同じ様な『チェィンメイル』や『スケイルメイル』と呼ばれる防具を着込んでいる。

 当然だが母も魔術師として父と一緒に戦場に出ているのでそんな防具を着込んでいるのだが、母は白銀の『チェィンメイル』に真紅のマントと言う出立だ、そんな母の魔術師の装束を見てユーグが

「母上、お綺麗です」

と言うと母は

「まぁ、この子は」

と照れながらも喜んでくれた。

 母は『風』属性の風魔法の使い手で、敵の弓矢や弩弓を無力化する『ヴェンティ・ウオール』や攻撃魔法の『ヴェンティ・カッター』『ヴェンティ・ランス』を得意としている。

 ユングも表向きは『風属性』の使い手という事にして、母直伝の風魔法を多数使える様になり

母や父を喜ばせた。

 そして、父ロベールと母がノース人との戦いに王国西部に出陣するのに従い初陣を迎える事になった。

父はこの戦いに騎兵10000。歩兵5000、魔術師50人を率いて出陣する事になる。

 ユーグも母と同じ意匠のチェィンメイルとマントを着込んで騎乗で父母が乗る馬車の横を進んでいる。

「ユーグ様、この度の戦は伯爵様のお側でしっかりと戦の仕方を学んでくださいませ」

とユーグに付き従うアンリが言う。

「爺、父上は本営の中から動かないのでは無いのか?、それではつまらないでは無いか、母上の様に魔術師として戦場に立ちたいが」

と文句を言うが

「将とはそう言う物でございます」

と言われてしまう。

魔法の師匠であるギョームや母にも

「そうですよ、あなたは一兵卒として戦場に出るのでは無いのです、将来の辺境伯として父上の側で戦の仕方を学びなさい」

と言われて、今回は大人しく父の側で本営に控えている事になってしまった。


 この頃のノース人は、ブリテン島の各地を制圧して、ネウストリアに上陸して橋頭堡を築きつつあった。本来ノース人とユーグ達フランク人は祖先を同じくするゲルマン人だ、人種的な特徴もほぼ同じで、ユーグの様に長身、金髪、碧眼の者も多い。ただラテン語を公用語とするフランク人とゲルマン語の古ノルド語を話すノース人とは今では別の民族と呼んでも良いかもしれない、更に北欧神話の主神オーディンを信仰するノース人とローマ神話の主神ユピテルを信仰するフランク人とは宗教上でも違いがある。

 またノース人にも独自の体系の魔術師が居て、彼らは水の魔法を発展させた『氷の魔法』を得意としている。特に氷の壁で防御をする『スカジウォール』と氷の槍で攻撃をする『スカジランス』などが有名だ、その上にブリテン島のリンディスファーン魔法修道院を襲った際に、ローマ式の魔法学も手に入れて、魔法や錬金術にも精通して戦力的にはほぼ互角、船を操り海軍力があると言う事では機動性ではノース人の方が優っているかもしれない、その証拠にノース人は845年にはセーヌ川を船で遡りパリを攻撃した事もある。当時の国王シャルル2世とユーグの祖父によってその攻撃はなんとか防がれたが、その後885年にもパリはノース人に包囲され、その時パリを守った英雄として、国王を世襲していたカロリング家に変わって、父ロベールの兄ウードが国王として選ばれたのだった、この頃には西フランク王国では血統による王では無く、実力者を諸侯の選挙で選ぶ時代になっていたのだ。

 それ以降もノース人がネウストリアに上陸する度にロベール率いる辺境伯軍が海に追い落とすのだが、追い落とす、また上陸、また追い落とすと言う様に何度も戦を重ねている内に徐々にネウストリアを侵食されて、今回はセーヌ川の要衝の町ルーアンからパリ付近での戦いになる。

今までは一章を10000字を目安に書いていたのですが、他の方々と比べると長いのかなと思い、半分位にして見ました、どちらが読み易いのでしょうね?

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