表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界謎解き真実探し  作者: サード
第1章 エルフの村編
4/12

第3話 魔導士ラバーと黒い剣

エルフの村の北の外れ。古木が絡み合うように立ち並ぶ、静寂に包まれた森――。

その森の入口にひっそりと佇む木造の小さな家。その室内では、灯火の下で小さな魔導士の少女が魔術書を睨みつけていた。机の上には、巻物やインク壺が無造作に散乱し、まるで彼女の苛立つ心情を映し出しているかのようだった。


彼女の名はラバー。

数日前から囁かれる「森の噂」の調査に没頭している。森で相次ぐ謎の目撃情報、警備を担う冒険者の負傷――それらの真相を突き止めようと試みたものの、魔術的な痕跡すら掴めぬまま、ただ時間だけが過ぎていく。焦燥が胸を締めつけ、ラバーは魔術書の端を苛立たしげに弾いた。


「ああ、もう!分からない!!」

突然、ラバーが声を荒げ、机に拳を叩きつけた。その衝撃で積み重なった魔導書が崩れ落ちる。

「どれだけ調べても手がかりなんてありゃしない!ただの作り話なんじゃないのか!?」


ラバーは頭を抱え、机に突っ伏す。灯火の光が影を伸ばし、静寂が一層重くのしかかる。そんな中、突然扉がノックされた。静かだった部屋に響く音に、ラバーは顔を上げる。


「誰だ?」

苛立ちを抑えきれない声で問いかけると、扉の向こうから低く力強い声が返ってきた。


「私だよ。ティックだ。レニウムの奴に頼まれてね、アンタに見てもらいたいものがあるんだ。」


その声を聞いた瞬間、ラバーは目を細め、深く息を吐いた。


「また面倒ごとか……。どうぞ。」


扉が開き、ティックが中に入ってきた。彼女はいつものように堂々とした態度で歩き、片手には大きな布に包まれた物を持っている。


「これだよ。」

ティックは布の包みをラバーの前に置き、無造作に布を剥ぎ取る。その瞬間、部屋の空気がわずかに変わった。現れたのは、黒い輝きを放つ剣だった。


ラバーは剣を一瞥すると、眉をしかめた。剣からは明らかにただの武器とは異なる気配が漂っていた。それは冷たく、静かでありながら、どこか底知れぬ力を感じさせるものだった。


「……これはただの剣じゃないね。」ラバーが低くつぶやく。「どこで見つけた?」


ティックは腕を組み、少し顎を上げて答えた。

「森で倒れてた青年が持ってたらしい。レニウムが気にしててね、アンタに調べさせろってよ。」


「青年?そいつから直接話を聞いた方が早いんじゃないの?」

ラバーは素っ気なく返すが、ティックの表情が曇る。

「残念なことに、ソイツは記憶を失っていてね。名前すら覚えてないんだよ。」


ラバーは疲れたように首を振り、剣を手に取った。その重みと冷たさが掌に伝わる。ゆっくりと鞘から引き抜かれる剣身には、何か古代の文字が刻まれていた。刃からわずかに漂う魔力の流れに、ラバーの表情が険しくなる。


「これは……ルーンだね。」

彼女は目を細め、剣に顔を近づけながらつぶやく。

「武器にこんな刻印を施すなんて、尋常じゃない。この手のルーンを扱える奴はそう多くない。……これは、錬金の賢者が作ったものだ。」


「……錬金の賢者って、あの七賢者のひとりかい?」ティックが眉を上げた。「まさか……これが聖剣だって言うのかい?」


「いや、違う。」ラバーは即座に否定する。「聖剣を作るなら、あの賢者ならミスリルを使うはずだ。こんな黒い剣を作るわけがない。」彼女は剣をそっと置き、深く考え込む。「だがこの剣、持ち主の魔力と魂の一部を内包している。持ち主と繋がっている武器だ。」


ティックは驚いたように目を見開き、机の上の剣を睨むように見下ろした。

「持ち主の魂だって?そんな危険な剣をあの青年は持ってたのかい……!」


ラバーは腕を組み、重々しく頷く。

「ただの旅人とは思えないよ。この剣がどんな力を秘めているか、私でさえ分からない。それに、その青年が記憶を失っている事も気になる。近頃の噂と関連付けて調べた方が良さそうだ。その青年が被害者である可能性も、加害者である可能性もあるからね。」


ティックは険しい表情で剣を見つめ続けた。その瞳には、剣が持つ謎と危険に対する警戒と、どこか好奇心が入り混じっていた。森の噂の正体が、この剣と青年に関わっているのかもしれない――そう直感させるには十分だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ