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異世界謎解き真実探し  作者: サード
第1章 エルフの村編
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第0話 エルフの小冒険

昔々、この世界には「闇の魔女」と呼ばれる恐ろしい存在がいました。

彼女は世界に多くの災いをもたらし、人々はその恐怖に怯えていました。絶望した人々は、聖大神殿に助けを求めに行きました。


聖王は、魔女の悪行に深く心を痛め、7人の賢者を彼女の討伐に送り出しました。

しかし、闇の魔女の力はあまりにも強大で、賢者たちですら太刀打ちできませんでした。


そこで賢者たちは知恵を絞り、力を合わせて別の世界から5人の勇者を召喚しました。彼らに特別な力を与え、闇の魔女に立ち向かわせたのです。


勇者たちは魔女との戦いに勝利し、賢者たちは彼女を深い深い場所へと封印しました。

こうして、世界に再び平和が訪れました。


めでたし、めでたし――――――



母が語っていた物語。宿で冒険者たちが語り合っていた伝説。世界中に語り継がれる、そんな御伽噺。少女は、その物語に心をときめかせていた。



エルフの村の外れ、静かな森の入り口に立つ少女、ユーラ。

肩まで伸びる明るい緑の髪が風に揺れ、森の深い緑と美しく対照を成していた。尖った耳が彼女がエルフであることを示し、翡翠のような大きな目には冒険への好奇心が満ちていた。日々の生活に飽きていた彼女は、最近の魔法指導を終えたばかりで、何か新しい刺激を求めていた。


村長である父から、森の危険について何度も警告されていた。それでも今日は、森を見張るはずの冒険者がいない。きっと、いつものように飲んだくれているエミリーが担当なのだろう。そしてその横で、真面目すぎて損ばかりしてるノノが、また頭を抱えているに違いない。そんな状況に、ユーラの中では警告よりも湧き上がる好奇心が勝っていた。「少しだけ、探検してみよう……魔物もウルファンぐらいなら倒せるし!」心の中でそう呟くと、彼女は周囲を警戒しながら、そっと森へ足を踏み入れた。


森の入り口近くには、魔法の師匠が住む家がある。ユーラは、師匠が今日は忙しく何かを調べている事を知っていたが、それでも見つかったら大変だと感じていた。特に慎重に動かなければならない。エルフの村人たちには、彼女が森に入っていることを知られたくなかった。


木々の間から差し込む柔らかな光が心地よく、胸が高鳴る。ユーラは深呼吸をし、試すように自分自身へ覚えたての『感知の魔法』をかけた。その瞬間、静かな森の中で微かな音が響く。――人の声だ。


ユーラは驚き、思わず立ち止まった。

心臓がひとつ、大きく跳ねる。風に流されるようにして届いたその声は、どこか頼りなげで、途切れ途切れだった。


『……み…に…かね……』


かすれていて、はっきりとは聞き取れない。けれど、確かに誰かがこの森にいる。


胸の鼓動が少し早まるのを感じながら、彼女は慎重に、その声のする方へと歩を進めた。


やがて、彼女の視界に何かが飛び込んできた。森の奥、草むらに倒れているエルフの青年だった。エルフの村の住人をすべて知っているはずのユーラだったが、その顔には見覚えがない。群青色の髪に青い瞳。貴族を思わせる青い服に、茶色い外套を身にまとっている。村の誰とも異なるその姿は、どこか不思議で、どこか神秘的だった。胸の鼓動が早まるのを感じながら、ユーラは静かに青年に声をかけた。


「……大丈夫?」


青年はゆっくりと顔を上げ、混乱した表情で彼女を見つめた。その青い瞳は迷いに満ち、何かを探し求めるようだった。


「俺は……誰だ……?」彼は自分の声にさえ戸惑っているようだった。


ユーラはその言葉に驚き、胸の奥に違和感を覚えた。「あなた、記憶が……ないの?」


ユーラが青年に尋ねた瞬間、茂みから子ウサギが現れる。何かに怯える様に跳ねる姿はまるで彼の心情を現してるかのようだった。


青年はウサギを目で追いながら困惑した表情で頷いた。「ああ……何も思い出せないんだ。」


彼の困惑した様子に、ユーラの心は揺れ動いた。そして、ふと彼の傍らに転がる黒い剣が目に入った。異様な美しさを持つ剣で、ただの武器ではないことがひと目で分かった。剣から放たれる微かな輝きが、彼の存在をさらに神秘的に感じさせた。


「この剣……あなたのもの?」ユーラは彼に問いかけながら、剣を見つめた。


青年はその剣を見ても、まるで初めて目にするかのような顔をしていた。「分からない……でも、俺のような気もする。」


ユーラはその言葉に悩みながらも、何か名前が必要だと感じた。「そうだ……」しばらく考え込んだ後、彼女は閃いた。「この剣にちなんで……ソード、と呼ぶわ。仮の名前だけどね。」


青年は少し驚いたように目を見開いた。「ソード……それが俺の名前?」


「ううん、まだ仮の名前よ。でも、今はそれでいいんじゃない?」彼女は微笑んで言った。「名前なんて後で変えればいいわ。」


彼はしばらく考えた後、小さく頷いた。「……分かった。ソード、か。」


ユーラは彼の不安そうな様子を察して、優しく言った。「大丈夫、私が一緒にいるから。あなたが誰なのか、これから一緒に探そう。」


こうして、ユーラとソードの運命が交差した。この出会いが、彼の記憶を取り戻し、世界の真実を知る旅の始まりになることをまだ誰も知らない。

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